栗田博師、最後に魅せるゼファー魂 勝春&ヤマニンで安田V“トライアングル”再現
ヤマニンゼファーなどの名馬を育てた栗田博憲調教師(70)も今週がラストウイーク。万感の思いを胸に、最後の勝負に挑む。
39年に及ぶトレーナー人生。JRAで645勝(G1・6勝を含む重賞27勝)を挙げる栗田博師は、ラストウイークに向けて「みんな無事に使って、無事に帰って来られれば。平常心ですよ」と無欲を強調するが、小倉10鞍、中山4鞍の大攻勢だ。
G1・6勝のうち3勝はヤマニンゼファーだった。92、93年の安田記念連覇。93年は天皇賞・秋も制覇。同年の複数G1制覇は、他に牝馬2冠のベガだけだった。まだ「中長距離こそ王道」とされていた時代。今なら年度代表馬は、おおむね「ベガかヤマニンゼファーか」の2択だろうが、菊花賞馬ビワハヤヒデにさらわれた。「今思い返しても…」と表情をこわばらせた。あの年、一番輝いたのはゼファーだった-今も、そう確信している。
若駒の頃はソエや骨瘤(こつりゅう)を抱え、ダートで勝ち上がった。「じっくり待ったのが実った。馬主さんにも我慢してもらった。だから幸せでしたよ。ハーツクライの母アイリッシュダンスもそうだったね。今は回転が速い。待てずに埋もれてしまう名馬もいるんじゃないかな」。去りゆく今、日本の競馬界の行く末を憂う。
土日は2日間とも小倉へ行くが、管理馬の最終出走は日曜中山12Rのヤマニンシャンデル。くしくも“ヤマニン”の土井肇オーナーの馬に田中勝が乗る。92年の安田記念。ゴール手前から右手を挙げたシーンは、オールドファンの語り草だ。「アイツのG1初勝利だったね。狙ったわけじゃないんだけど、巡り合わせ。不思議なものだね」と目を細めた。
田中勝も「最後に乗せてもらえる。馬にオレたちの気持ちが伝わってくれたら」と気合が入る。夕暮れの中山から小倉へ。27年前をほうふつとさせる“ガッツポーズ”を届ける。