【競輪】村上義弘、涙のV「魂」魅せた
「日本選手権競輪・G1」(23日、名古屋)
魂の走りが涙の勝利を呼び込んだ。村上義弘(39)=京都・73期・SS=が番手まくりで連覇を果たし、3度目のダービー王の称号と優勝賞金6000万円を手にした。G1は5勝目。G2共同通信社杯(4月26~29日・伊東)まであっせんはあるが、5月1日からは日本競輪選手会による、1年間の自粛休場勧告の制裁を受けており、以降の去就については明言を避けた。2着には武田豊樹、3着には深谷知広が入った。
3度目の栄冠の味は、これまでのどの勝利とも違った。今年最後のG1。村上義は悲壮な決意で挑んだ。
執念と仲間の結束力で勝ち上がり、近畿4車で組んだファイナル。2角で平原の一撃を受けそうになるや、後輩・稲垣の番手からまくりを放つ。そのまま先頭に立ち、後ろを固める弟・博幸の援護を受けながら、後続の急追をしのいだ。
勝利が分かった瞬間、博幸と肩を組み両手を挙げて喜びを爆発させたが、検車場に引き揚げてくると、自然と涙がこぼれ落ちた。「みんなの執念。自分だけじゃない。みんな苦しかったと思う」‐。
競輪界の発展を目指してSS11への移籍を企図したのが混乱を招いた。「関係者、ファンに迷惑をかけた」。できることは競輪のすばらしさ、面白さを自分の走りで伝えることだった。
騒動の影響で練習も満足にできず、不安を抱えての参戦だった。「本当に苦しい6日間だったが、ファンの声援が支えてくれた。日本選手権は日本一を争うのにふさわしいレース。1年間目標にしていたし、結果を出せて良かったです」。思いが実を結んだ。
選手会による5月1日から1年間の自粛休場勧告のため、来年はこの舞台に立つことはできない。「共同通信社杯まではあっせんがあるので、そこまではしっかり走って、その後のことは考えたい。1年間、競輪から離れることに耐えられるかどうか、自信もないので」。今後の去就については明言を避けたが、熱い声援を送った多くのファンは、まだまだ魂の走りを見たいと願っている。