桜花賞 |
北の乙女が春を呼んだ | 2002/04/07・阪神競馬場 | ||||||||||||||||||||||||||
あでやかに咲き誇ったのは地味で目立たなかった公営出身の桜だった。北のホッカイドウ競馬から移籍してきて5戦目、13番人気のアローキャリーが中央初勝利を最高に華やかな舞台で勝ち取った。
外枠から好スタートを切ると、道中は3番手にぴったり折り合う。先を行くサクセスビューティ、ヘルスウォールの競り合いを見ながら追走。池添が巧みな手綱で4コーナーで外に出すと、直線半ばで一気に先頭に躍り出た。 「アロー、アロー!」。ゴール目前の最後の坂、池添はこん身のステッキを振るいながら、必死に呼びかける。残された力を振り絞ってスパート。追いすがる関東馬2頭を振り切り、栄光のゴールに飛び込んだ。 桜花を背に、池添の派手なガッツポーズがサク裂した。「3年前のヤマカツスズラン(秋華賞2着)は自分のミスで悔しい思いをした。理想の位置につけられた。直線を向いてからは夢中だった。本当にうれしい」。デビュー5年目でG1初勝利をクラシックレースで手にした若きジョッキーは声を上ずらせ、ほおには涙が光っていた。 サクセスビューティと2頭出しで挑戦した山内師は、2年前のチアズグレイス以来、2度目の桜花賞優勝。「サクセスの方が能力的には上と思っていた。展開のアヤというか、遅らせていって息が入ったのがよかったのだろう。最後もいい脚を使っていた」。毎年、多くの馬を牝馬G1路線に送り出してきた。不断の努力が、再び桜の舞台で結実した。 今後についてはオーナサイドと相談してから決定する。オークスには向かわず、休養をさせる公算が強い。スターの座に上り詰めた公営出身のヒロインは、厳しい環境にある馬産地や地方競馬の期待と夢も背負ってターフを駆けていく。(岩下昌弘)
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