菊花賞 |
雨の“乱菊”を制した軌跡 | 2002/10/13・京都競馬場 | ||||||||||||||||||||||||||
8分の3の抽選をくぐり抜けたヒシミラクルと角田のコンビが、奇跡のV劇を演じてみせた。淀の長丁場、長くいい脚を使えるタイプのミラクルには絶好の舞台。テンの行き脚に欠ける序盤はゆっくりと追走。大歓声のスタンド前を過ぎ、向こう正面手前からようやく進出を開始した。
2度目の坂から仕掛け通しだった。気合をつける。手綱をしごく。鞍上のゴーサインにこたえ、じわじわと鞍下は、ロングスパートをかけはじめる。 4角、メガスターダムが先頭。ぐいぐいと雄大なフットワークのミラクル。前のメガを射程圏にとらえた。とらえて、離した。だが、後方、角田の目に猛然と第2の刺客が襲ってくるのが見えた。祈るような気持ちだった。「信じていた。4コーナーでいっぱいいっぱいだったけど、それでもバテずに伸びてくれた。最後の最後まで分からなかったけど」と角田は振り返る。 完歩ごとに伸びてくるファストタテヤマの追撃を鼻差、振り切った。昨年はジャングルポケットで敗れた淀のゴールに、超ロングのミラクルシュートをねじ込んだ。「抽選で入ったのが1番目のミラクル。長距離だったらやれると思って、自分の競馬に徹した」。運を味方に迎えた絶好の舞台、相棒への信頼がVを勝ち取った。 クラシック初制覇となった佐山師は「ゴール前は、心臓が止まりそうなぐらいだった。仕掛けはちょっと早いかなと思ったけど、あれでよかったんだね。本当によく頑張ってくれた」と、激闘を戦い抜いた馬と騎手をたたえた。菊の栄冠は、8分の3の幸運を、18分の1の奇跡に変えた芦毛馬の手に落ちた。(岩下昌弘) |
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