菊花賞
 雨の“乱菊”を制した軌跡 2002/10/13・京都競馬場
 
ファストタテヤマ(手前)を鼻差封じたヒシミラクルが栄光のゴール
  10番人気ヒシミラクルが鼻差の大接戦を制して、クラシック3冠ラストで栄冠をつかみとった。単勝2・5倍の1番人気に支持されたノーリーズンはスタート直後につまずき、武豊がジョッキー16年目でG1では初めてとなる落馬。スタートからわずか3完歩目で、ノーリーズンがらみの馬券約110億円は紙切れとなってしまった。3連複34万4630円はG1史上最高配当に。馬単18万2540円、馬連でも9万6070円とクラシック最高配当を記録した。

 8分の3の抽選をくぐり抜けたヒシミラクルと角田のコンビが、奇跡のV劇を演じてみせた。淀の長丁場、長くいい脚を使えるタイプのミラクルには絶好の舞台。テンの行き脚に欠ける序盤はゆっくりと追走。大歓声のスタンド前を過ぎ、向こう正面手前からようやく進出を開始した。

▼ 第63回菊花賞
1着  ヒシミラクル
角田
3.05.9
  2着 ファストタテヤマ
安田

ハナ

  3着 メガスターダム
松永
1/2馬身

 2度目の坂から仕掛け通しだった。気合をつける。手綱をしごく。鞍上のゴーサインにこたえ、じわじわと鞍下は、ロングスパートをかけはじめる。

 4角、メガスターダムが先頭。ぐいぐいと雄大なフットワークのミラクル。前のメガを射程圏にとらえた。とらえて、離した。だが、後方、角田の目に猛然と第2の刺客が襲ってくるのが見えた。祈るような気持ちだった。「信じていた。4コーナーでいっぱいいっぱいだったけど、それでもバテずに伸びてくれた。最後の最後まで分からなかったけど」と角田は振り返る。

 完歩ごとに伸びてくるファストタテヤマの追撃を鼻差、振り切った。昨年はジャングルポケットで敗れた淀のゴールに、超ロングのミラクルシュートをねじ込んだ。「抽選で入ったのが1番目のミラクル。長距離だったらやれると思って、自分の競馬に徹した」。運を味方に迎えた絶好の舞台、相棒への信頼がVを勝ち取った。

 クラシック初制覇となった佐山師は「ゴール前は、心臓が止まりそうなぐらいだった。仕掛けはちょっと早いかなと思ったけど、あれでよかったんだね。本当によく頑張ってくれた」と、激闘を戦い抜いた馬と騎手をたたえた。菊の栄冠は、8分の3の幸運を、18分の1の奇跡に変えた芦毛馬の手に落ちた。(岩下昌弘)

ヒシミラクル…牡3歳。父サッカーボーイ、母シュンサクヨシコ(母の父シェイディハイツ)。馬主・阿部雅一郎氏。生産者・三石 大塚牧場。戦績・17戦4勝。初重賞。総収得賞金・201、047、000円。佐山優調教師、角田晃一騎手ともに初勝利。
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