菊花賞
 ザッツだ 18年ぶり父子菊制覇 2003/10/26・京都競馬場
 
3角過ぎからロングスパートをかけたザッツザプレンティが菊の大輪
  3冠達成の野望を打ち砕いたのは、勝負師と伏兵、長丁場にかけたトレーナーの強いハートだった。皐月賞、ダービーに続く3冠最後の激闘「第64回菊花賞・G1」を制したのは、安藤騎乗の5番人気ザッツザプレンティ。安藤は高松宮記念に続き、今年2つ目のG1勝ち。初のクラシックジョッキーの栄冠をつかんだ。橋口師は7年ぶり通算3回目のG1制覇を達成。1番人気ネオユニヴァースはリンカーンにもかわされ3着、3冠の夢が破れた。

 小さいがしかし激しく、まるでボクサーのように右こぶしが鋭く揺れた。「G1の価値はみな同じ。菊花賞だからって力が入ったりなんてしないよ」。目の覚めるような勝利を決めてもフッとほおを緩めるだけ。そんなクールな勝負師・安藤が、レース前のセリフをあっさり“裏切って”みせた。この太陽のような笑顔はどうだ。デムーロが、ぺリエが追い抜いていく。横山典が通り過ぎ、武豊もかわしていく。だがそれも、フィニッシュラインをとうに過ぎてからのこと。三千メートルを走り、どの人馬よりも最初に終着点にたどりついたのは、まぎれもなく安藤とザッツザプレンティだった。

▼ 第64回菊花賞
1着  ザッツザプレンティ
安藤
3.04.08
  2着 リンカーン
横山典
3/4馬身
  3着 ネオユニヴァース
デムーロ
クビ
  安藤の脳裏からこびりついて離れなかったのは「おれはこの馬を下手に乗っている」といういら立ちだった。模索し、ザッツのすべてを考えて手綱に詰め込んだのがこの完ぺきな菊ライド。「位置にはこだわらない。リズムを大切にして、早めに動こう」。だから向こう正面、するすると上がり始めたネオユニヴァースを見ても慌てない。そして3コーナー、ここで迷うことなくパートナーにサインを送った。「ガンと馬が行ってくれたから」。そう振り返る坂の下りからは、ただひたすら追いまくるだけ。「これまでで一番、感動した」。らしくないガッツポーズとともに、カッコよすぎるセリフが自然と出た。

 父ダンスインザダーク以来、7年ぶりのG1獲得。橋口師も興奮を隠せない。「ダンスの子で大きいところを取ってやろうと、いつも思っていた。直線はダンスの時を思い出したよ」。逆光を突き破り、風となった父。息子もまた華麗に、秋晴れの美しいターフのヒーローとなった。(藤村和彦)

ザッツザプレンティ…牡3歳。父ダンスインザダーク、母バブルプロスペクター(母の父ミスワキ)。馬主・去ミ台レースホース。生産者・千歳 社台ファーム。戦績・8戦3勝。重賞・02年ラジオたんぱ杯2歳S。総収得賞金・248、140、000円。橋口弘次郎調教師は2勝目、安藤勝己騎手は初勝利。
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