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直線の混戦から力強く抜け出したアサクサデンエン(中)がうれしい初G1制覇。(左は2着・スイープトウショウ、右は3着・サイレントウィットネス)=東京競馬場 |
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新マイルの王者が誕生だ。藤田騎乗の7番人気アサクサデンエンは、中位から直線で差し脚爆発。香港の英雄サイレントウィットネスの驚異的な粘りをとらえ、スイープトウショウのゴール前強襲を首差抑え、6歳の春にG1初挑戦にして初制覇を飾った。
猛然と3頭がなだれ込むゴール前の叩き合い。それを制したアサクサデンエン。うれしいG1初制覇に、藤田の右手が高々と上がった。
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第55回安田記念 |
1着 |
アサクサデンエン |
藤田 |
1.32.3 |
2着 |
スイープトウショウ |
池添 |
クビ |
3着 |
サイレントウィットネス |
コーツィー |
アタマ |
課題のスタートも決まった。道中は中団より少し前で先行馬を射程に入れる。「香港の馬(サイレントウィットネス)は、距離を意識して抑え気味に行く。それほど速い流れにはならない」。藤田の予想はズバリ的中した。直線で一瞬、進路が狭くなったが「まだ脚が残ってたし、逆にその狭いところへ突っ込んでいけたので、もう一度、闘争心が目覚めた」。
早々と抜けた香港のスーパースター・サイレントが内で粘る。外からスイープトウショウが襲いかかる。その間からグイッとひと伸び。「正直、周りの馬は見てなかった。もう必死だった。2着は分からなかった」。自身にとっても、02年の宝塚記念を勝って以来、3年ぶりのG1。「長かった。きょうは頭の中を空っぽにして乗った」。初心に戻った冷静な騎乗が、最高の結果を呼んだ。
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アサクサデンエンで安田記念を制した藤田は力強くガッツポーズ=東京競馬場 |
「苦労させられた馬でG1を取れたら最高だろうなあ」。常々、河野師はデンエンに対して話してきた。新馬―特別を連勝しながら、体質的な弱さから出世が遅れた。我慢に我慢を重ね、6歳の春にしてついにつかんだビッグタイトル。同時に師にとっても、きゅう舎開業15年目、29回目の平地G1挑戦にして悲願のお立ち台。思わず涙腺が緩んだ。「きょうも返し馬で鳴いてたように、まだまだ幼い。それだけに、どんどん良くなる余地がある」。トレーナーもジョッキーもそう口をそろえた。
これで秋まで充電に入る。大いなる可能性を秘めた、新たなマイルのチャンピオンがいま、力強く誕生した。(村上英明)
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