天皇賞(秋) |
2年6カ月ぶりのG1タイトル 2006/10/29・東京競馬場 |
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4番人気のダイワメジャーが直線で早めに抜け出し、念願の古馬G1を手に入れた。ノド鳴りで一度はどん底を味わった皐月賞馬が、2年6カ月ぶりにG1の栄冠を勝ち取った。2着には内から猛追したスウィフトカレントが入り、3着は3歳馬のアドマイヤムーン。3連単は6万を超える波乱の決着となった。 | ||||||||||||||||||
【ノド鳴り手術で克服…奇跡の復活劇】 なかなか埋まらなかった2つ目のピースが、安藤の手によってようやく埋まった。もがき苦しんだ皐月賞馬ダイワメジャーが、天皇賞・秋で2度目の栄冠を手にした。
予想外のインティライミの逃げだったが、これが幸いした。道中は2番手の絶好のポジションを確保できた。「逃げ馬がいなければ、ハナでも良かったが、行ってくれてよかった」と安藤。前半5F58秒8のペースは速すぎず、遅すぎず。この流れこそ、メジャーが最も望んだものだった。「これはこの馬に合った流れになった」とパートナーは道中で手応えをつかみ、上原師も「位置取りは良かったし、向正面で勝てたと思った」と勝利を確信した。その通り、残り三百メートルで先頭に立つと、内から猛追したスウィフトカレントを見事に抑え込んだ。 皐月賞以来になるG1制覇。それまで要した2年6カ月は、決して平たんな道のりではなかった。皐月賞馬として臨んだダービーは6着に敗れ、オールカマーは9着、3歳時の天皇賞・秋は17着に惨敗した。これはすべてノド鳴りが原因。そこで陣営は手術に踏み切った。そこからは着実な成績を挙げるようになり、再度頂点を極めた。生産者であり、社台ファーム代表の吉田照哉氏は「奇跡だね。普通なら手術をしても治らないが、またG1を勝つなんて」と目を見張る。競走馬のプロから見ても、驚きの勝利。それだけのことをメジャーはやってのけた。 この後はマイルCS(11月19日・京都)で3つ目のG1制覇を目指す。「マイルでも走れる馬だからね」と師。大きくなったメジャーなら、G1連覇も夢ではない。長い期間はかかったが、ようやく手に入れた2つ目のピース。新たな一歩を踏み出したメジャーにとって、完ぺきな絵が完成するのは間近かもしれない。 【大城オーナー「感無量」】 “ダイワ”の冠名で、これまでにも多くの競走馬を走らせてきた大城敬三オーナー。馬主歴では既に40年を超えるが、ダイワメジャーでの皐月賞、ダイワエルシエーロのオークスに続いて3つ目のGI。天皇賞は初めてだけに「感無量、最高です」と声を詰まらせた。「レース中は声が出たけど、ゴールした瞬間は言葉が出なかったですね。記念の天皇賞を取れて良かった。こんなに強いとは…いままでで一番の格別なGIです」。ノド鳴りに苦しんだ愛馬の晴れ姿を前に、思い切り感動に浸っていた。 【スウィフトあと1歩伸びず】 34秒7の末脚で迫ったが、スウィフトカレントは半馬身届かなかった。「いい競馬はできたけど、最後は勝った馬と同じ脚色になった」と横山典。菊花賞に続いて2週連続のG1レース2着。またしても美酒に届かず、唇をかんだ。それでも、森師は成長を評価する。「本格化した?そういうことだね。次はJC(11月26日・東京)へ行きたい。年内はそれで終わって、来年はドバイへ」と海外遠征を示唆。来年3月のドバイ・シーマクラシック(UAE)挑戦プランが浮上した。 【アドマイヤムーン 初戴冠お預け】 2番人気に推された、アドマイヤムーンは追い上げたが3着。無冠に終わった春の雪辱を果たすことはできなかった。「スタートをちゃんと出て絶好の位置。いいところにつけられたし、このメンバーの中で最後もきているけど」と、天皇賞最多タイの10勝目を逃した武豊。古馬の壁は厚かったが、それでも繰り出した上がり34秒2はメンバー最速。「来年が楽しみ」と期待は増した。初戴冠の夢は、登録している香港マイル(12月10日・シャティン)で果たしたいところだ。 【コスモバルク 4着にも収穫】 地方競馬から初の天皇賞挑戦。コスモバルクは4着に終わったが、今後へ大きな収穫があった。好位の5番手。課題の折り合いは完ペキだった。坂下で一瞬、内から寄られて立て直すロスはあったが、坂を上がってから持ち前の勝負根性で必死に前を追った。「仕掛けて行ってあの位置。折り合いに関してはもう確信しました。チャンスだっただけに悔しいけど…」。五十嵐冬は唇をかみしめたが、ジャパンCでのリベンジへ手応えはつかんだようだ。 【牝馬2頭無念…スイープ&ダンス】 注目を集めた牝馬2頭は1番人気のスイープトウショウが5着、5番人気のダンスインザムードが6着に終わった。スイープの池添は「馬場入りも良かったし、ゲートも思ったより出てくれた。道中もスムーズにいい位置が取れたけど、4角を回るときの手応えが前走ほどなかった」と悔しがった。勝ち馬のすぐ後ろで折り合ったダンスの北村宏は「よどみない流れで勝ち馬を見ながらうまく運べた。落ち着きもあったのに、追い出してからがいつもとは違った」と無念の表情。2頭ともエリザベス女王杯に登録した。
【アクシデント続出】 ディープインパクトの回避、バランスオブゲームの故障引退と、戦前から騒然として迎えた天皇賞は、直前でもアクシデント続出。 前日のローゼンクロイツ(小牧→後藤)に続き、当日はアサクサデンエン(藤田→田中勝)で乗り代わりが発生。オースミグラスワンは、レース前に装鞍所近くで放馬し、馬体重の発表が1頭だけ遅れる羽目になった。トリリオンカットは本馬場入場でラチに激突して放馬、競走除外。カンパニーはゲート入り後に暴れて外枠発走と、ドタバタが続いた。トリリオンに騎乗予定だった和田は「ついてないね。出走できていれば、いい感じの展開だったのに」とため息交じりだった。 |
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