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フェブラリーステークス

GI舞台で1年3カ月ぶり美酒

2007/02/18・東京競馬場

▼ 第21回フェブラリーステークス
1着 
サンライズバッカス
安藤
1.34.8
2着
ブルーコンコルド
1 1/2
3着
ビッググラス
村田
2 1/2
   
 砂の頂上決戦を制したのは、サンライズバッカスだ。直線で力強く抜け出して、うれしいGI初制覇。05年武蔵野S以来、約1年3カ月ぶりの勝利を大舞台で手にした。今後は帝王賞(6月27日・大井)など地方交流GIを視野に入れて調整される。2着は2番人気ブルーコンコルド、3着は9番人気の伏兵ビッググラス。1番人気のシーキングザダイヤは9着、アジュディミツオーは14着に沈んだ。

ブルーコンコルド(右から2頭目)の追撃を振り切り、フェブラリーSを制したサンライズバッカス(右)=東京競馬場

 

 【スピード&パワーで戴冠音無師感無量】

ようやく思いが実った。約1年3カ月も遠ざかっていた勝利の味。この瞬間を待っていた。直線半ば、サンライズバッカスは一気に抜け出す。人馬の気迫、力強いフットワークは後続の追撃を許さなかった。1分34秒8の勝ち時計は、05年メイショウボーラーのレースレコードにコンマ1秒差。スピードとパワーで、ダート王の座をつかんだ。

音無師は感無量の表情だった。06年高松宮記念をオレハマッテルゼで制して以来、2度目のGI制覇。「ダートのGIも勝ちたかった。でも、ボクだけでなく、オーナー、牧場の皆さんも、この日が来るのを待っていた。本当にうれしい。カネヒキリを負かした馬として、これまで格好をつけられなくて申し訳ないと思っていた」。05年武蔵野S。当時、ダートでの無敵を誇った相手に土をつけた。だが、そこから勝てない日々が続く。昨年のフェブラリーSでは12着に惨敗。悔しさを胸に挑んだ、中央、地方合わせて5度目のGI。ついに夢がかなった。

枠順、不良馬場も勝利をアシストした。スタートに不安を抱え、気性も難しいタイプ。「外めの偶数枠は良かった。馬場も味方してくれた。いいことずくめだった」と振り返る。ややゲートで後手を踏んだが、中団後方と絶好のポジション。「ジョッキーがおっつけて行ってくれたのが良かった。頼りになるね」と安藤の好プレーを称える。

今後は帝王賞などを視野に入れている。「GIIIは(斤量面で)使いにくいので、交流レースになるでしょう。距離も千六百から二千メートルまでは大丈夫だと思う」。デビューから芝で4戦したが掲示板に載ることすらなく、ダート路線へ転向。そして、大輪の花を咲かせるまでに至った。これからは挑戦を受ける立場へ。手に入れた王者の称号。やすやすと手放すつもりはない。

フェブラリーSを制し、サンライズバッカスを笑顔でねぎらう安藤勝=東京競馬場

会心の騎乗だった。アンカツのこん身の右ステッキに、サンライズバッカスは力強いストライドを返す。待望の初GIゴールへ、名手のエスコートで1番に飛び込んだ。

初コンビだった昨秋のジャパンCダートでは5着、前走の平安Sは頭差の2着と惜敗。3度目の手綱で最高のパフォーマンスを見せた。しかもGIの大舞台、まさに千両役者だ。「かわしたときの脚が違っていた。最後まで後ろの足音は聞こえてこなかった」。必死に猛追するブルーコンコルドも、どうすることもできない。完勝だった。控えめなアンカツらしくガッツポーズはなかったが、喜びをグッと胸にしまい余韻に浸った。

スタートで半馬身ほど遅れたが、すぐに二の脚がつくと、中団で流れに乗る。「淡々とした流れだったけど、道中は気持ち良さそうに走っていたよ」。人馬の呼吸はピッタリだ。4角で外へ出し、追撃態勢が整った。「ちょっと早いかと思ったけど、不良馬場だったし、小細工するような馬じゃないからね。そのまま行ってしまった」。残り二百メートル手前でゴーサインを出すと、先行集団をまとめてかわし去った。

土曜に続いて、日曜も2勝。今季28勝は2位岩田に4勝差をつけて、堂々の全国リーディングトップだ。勝率・297、連対率も・489と絶好調。「リーディング?とくに気にしてないよ。リズムがいいんだね」。そう言うと、うまそうにタバコの煙をくゆらせた。

03年に笠松競馬から中央入りして5年目。これまで武豊の独壇場だったリーディング争いに待ったをかける勢いだ。15日には、実兄の安藤光もJRAの騎手試験に合格した。「向こうも忙しいみたいで、まだ連絡はしていないけど、良かったね」と笑顔をのぞかせる。

今年は牡馬ではフサイチホウオー、牝馬もダイワスカーレットと、クラシックを狙える馬がそろっている。来月には、ダイワメジャーでのドバイ遠征も控える。脂の乗っている46歳。この 勢いは止まりそうにない。

 

音無調教師(右)、松岡オーナーと笑顔で握手を交わす安藤勝(左)

 【松岡オーナー初GIに歓喜 】

松岡隆雄オーナー(55)も大喜びだった。これまでサンライズペガサスなどで重賞を勝っているが、GIは初めて。「亡くなった父の代から50年。勝ちたいと思ったけど、うれしいですね。調教師に感謝。安藤ジョッキーもうまく乗ってくれた。直線は力が入りました」と表情を緩ませた。親子2代、ついに手にした大きな勲章。しみじみと勝利の味をかみしめていた。

 【コンコルド「力負けじゃない」】

眼鏡の奥の瞳は真っ赤。たばこを持つ手も震えている。自信を持って臨んだ大一番で2着に敗れた2番人気ブルーコンコルドの服部師は、悔しさを隠しきれない面持ちで検量室前に立ち尽くしていた。

前半は鞍上の思いどおりの流れだった。しかし3〜4コーナーに差しかかったところで、勝利への道は急に険しくなった。「もともと左へモタれる馬なんですが、今日はとくにキツかった。両手で立て直すのが精いっぱいになってしまいました」。幸は冷静にレースを振り返る。

地方交流GI3勝の実績馬も、中央のGIでは未勝利。念願のタイトル奪取はお預けとなった。「勝ち馬に上手な競馬をされてしまいましたからね。残念ですが、あの手応えで2着まで来るんですから…力負けじゃありません」。悔しさを押し殺し、幸は巻き返しを胸に誓っていた。

 

 【ビッググラス低評価も3着村田「夢見た」】

初GIでも力を存分に見せつけた。前哨戦・根岸Sの覇者ビッググラスは、9番人気の低評価に反発するように3着激走。「夢を見たよ」が村田の第一声だ。道中は中団待機。「抜け出す時は余裕だった。結果論になるけど動きだすのが早かったのかも」と悔しさをのぞかせる。最後は上位2頭の差し脚に屈したが「前回よりもよくて、走りが柔らかくなってた」と充実期を迎えているのは確か。元気いっぱいの6歳馬が今後もダート界を盛り上げていく。

 

 【シーキングザダイヤ自身最低タイ9着…なぜ…】

悲願のGI奪取どころか、ダートでは自身最低タイとなる9着惨敗。1番人気シーキングザダイヤは10戦ぶりに掲示板を外す、自慢の安定感がうそのような結果に終わった。「全然伸びなかったね。サンライズバッカスの内で、ブルーコンコルドの前。いいところを取れた。直線もスムーズに外に出たが…」と武豊。必死の左ムチ連打にも愛馬は反応することがなかった。「なんだろうね。分からない」と不可解な敗戦に最後まで首をかしげていた。

 

 【アジュディミツオーまた逃げられず】

今回も得意戦法には持ち込めなかった。船橋から参戦したアジュディミツオーは過去3回の東京同様、逃げることができず14着に大敗した。「いつもよりは出た」と内田博は語るものの行き脚がつかず、先手を奪えなかった時点で苦戦は想像された。「外の馬の方が全然速かったし、坂の手前で前について行けなくなった。でもこういう速いペースを経験しないとね」と最後は前向きに話したが、芝スタートという課題が再度浮き彫りになった格好だ。

 
サンライズバッカス…牡5歳。父ヘネシー、母リアルサファイヤ(母の父リアルシャダイ)。馬主・松岡隆雄氏。生産者・日高 ヤナガワ牧場。戦績・17戦6勝(うち地方1戦0勝)。重賞・05年武蔵野Sに続き2勝目。総収得賞金・271、004、000円。音無秀孝調教師は初勝利、安藤勝己騎手は04年アドマイヤドンに続き2勝目。

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