ダービー(東京優駿) |
64年ぶり!!女帝ウオツカ 2007/05/27・東京競馬場 |
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04年生まれのサラブレッド8470頭の頂点に立ったのは、唯一の牝馬ウオッカだった。直線で堂々と抜け出す完勝。74回目を数えた歴史の中で、牝馬Vは43年クリフジ以来、64年ぶり3頭目。オークス施行が秋から春に変わった53年以降では初優勝という大偉業だった。皇太子殿下、安倍首相、そして13万人超の観衆を酔わせた女帝はこの秋、凱旋門賞を視野にさらなる飛躍を目指す。 | ||||||||||||||||||
【史上3頭目】 ▼角居師の夢と信念実った 半世紀を超える“沈黙”が5月の太陽の下で破られた。しなやかで、美しく、力強い。17頭の牡馬を従え、紅一点のウオッカが緑のじゅうたんを舞い続ける。ホームストレッチのど真ん中、最高のビクトリーロード。あごを上げるライバルたちを置き去りにして、華やかな牝馬が強烈な走り。1馬身、2馬身、そして3馬身―。2分24秒5の歴史的ドラマが完結した瞬間、電光掲示板にはワンサイドの決着を物語る着差が輝いた。スタンドを埋め尽くした、13万人を超える大観衆。東洋一の規模を誇る東京競馬場のすべてが、強烈な度数を誇るウオッカの差し脚に酔いしれた。 64年ぶり、史上3頭目の偉業。牝馬による祭典制覇をエスコートした四位を待ち受け、角居師が歓喜の表情を見せる。「久々に声が出ました。悩みましたよ。でも、ワクワクする方を選んだんです」。牝馬の日本ダービー挑戦自体が11年ぶりのこと。それでも信念を貫いたのは、頂上決戦への思い。夢のままで終わらせたくはないほど、ウオッカの持つスケールの大きさに引かれていた。 「デビュー前から古馬のオープン馬と調教をしてもついていけましたから。5大クラシックへの出走登録もすべて行ったんです」。通常、牝馬は桜花賞とオークスのみに登録する。それ以外の3つ、牡馬の3冠レースにもすべて登録を行わせるほど、限りない可能性を秘めたウオッカへの期待値は計り知れなかった。 高い潜在能力を引き出したスタッフの力も見逃せない。調教を担当する平間助手が「息を殺して、ただ手綱を引っ張り続けました。右に行かないよう、左へ行かないように」と、日々の調教を振り返ったことがある。生産者、オーナーの情熱と“チーム角居”の信念。卓越した騎手の手腕もきれいに溶け合い、この日の快挙へとつながった。 02年タニノギムレットとの父娘制覇も達成。次はこの感動を、海を越えてつなげる。「オーナーともう1回、相談しないといけませんので…」と指揮官は明言を避けたが、視界には第1回登録を完了済みの仏GI・凱旋門賞(10月7日・ロンシャン)が入っている。「向こうの馬場に合うような馬になってくれれば―」。柔らかく、しかし、歯切れのいい言葉で締めくくった。
【谷水オーナー感激2勝目 】 ▼首相が来ると負けない!?
歓喜の輪の中で、谷水雄三オーナーの笑顔が開いた。「なんて言ったらいいのか…なかなか言葉が出てこない。いやあ、うれしいですね」。ウオッカの父タニノギムレット(02年)に続いて2度目のダービー制覇は、タニノハローモア(68年)、タニノムーティエ(70年)で、やはり2勝の父・信夫氏に並んだ。 「枠順が決まった時に、縁起めいたものを感じました。ギムレットも(3)番だったからね。ギムレットの初年度産駒で、しかも牝馬で勝たせてもらえるなんて…夢のようですよ」。ダービー挑戦は角居師の強い希望があった。「彼の熱い熱意を感じたので、ちゅうちょはなかった。(抜け出すのが)早いかな思ったけど、よく頑張ってくれた」と愛馬をねぎらった。 安倍晋三首相から内閣総理大臣賞を授与されると「ギムレットの時は小泉総理がいらしてくれたし、これって、すごい強運ですよね」とホオをほころばせた。気になる今後だが「終わったばかりだし、今夜ひと晩寝てから、ゆっくり考えることにします」。今はただ、ダービー勝利の余韻に浸るばかりだった。 ▼投票は得意? 安倍首相夫妻で的中 内閣総理大臣賞授与のため、安倍晋三首相が昭恵夫人とともに東京競馬場に来場した。内閣総理大臣の観戦は02年の小泉純一郎前首相以来3度目のことで、安倍首相の祖父である岸信介元首相が最初だった。 安倍首相はウオッカの複勝、昭恵夫人は単勝を購入。夫婦そろって的中した。「東京競馬場の美しさには本当に驚きました。競馬はテレビでしか見たことがないのですが、ライブで見ると、迫力があって気分が高揚しました。馬券は家内に倣って買いました」と感動していた。 【キングス銀!!また大荒れ!!3連単215万馬券】 またユーイチかと場内はどよめいた。軽快に逃げるアサクサキングスの勢いは、直線に入っても止まらない。オークスに続き、福永の2週続けてGI勝利かと思われたが、矢のように伸びてきたウオッカに差されて2着。14番人気の伏兵は、3連単200万馬券を演出した。 「直線で抜け出した時に凄い勢いで外からウオッカが伸びてきた。2着を死守しなれけばならないと懸命に追ったよ」と福永。3馬身差の2着だが、立派な銀メダルだ。大久保龍師も「力が入ったね。一瞬やったと思ったが、やはり甘くなかったね」と悔しそうに語った。 皐月賞7着、NHKマイルC11着とGIでひと息の成績が続いていたが、未知の二千四百メートルで鮮やかな競馬を見せた。「この後は馬の様子を見ながらになるが、宝塚記念(6月24日・阪神)へ向かおうかと思っている」とトレーナーは次なる目標を掲げた。次は古馬を相手に痛快な逃走劇を見せる。 【ホウオー完敗7着】 ▼折り合い欠いて末脚不発 スタンドを揺るがす大歓声もむなしく聞こえるだけだった。残り三百メートル、安藤勝の右ムチが打ち込まれ、フサイチホウオーは内側のローレルゲレイロに馬体を合わせながら追い上げを図る。しかし、前を行く馬との差は詰まらない。上がり3Fは34秒1。ただ、待っていたのは7着止まりのゴールだった。 大舞台、逆襲をかけた一戦だからこそ、抑え切れなかった闘争心。「イレ込みが激しかった。引っ掛かった」。主戦は渋い表情を残した。ゲートがあいて中団につけたが、発走前から荒々しかったホウオーが折り合えたのは、ようやく向正面を過ぎてから。「もう少し伸びてもいいんだけど。4コーナー手前で反応しなかった」。余分にあふれた闘志が、最後に足かせになったのは動かぬ事実だ。 02年タニノギムレット、04年キングカメハメハ。現役最多タイのダービー2勝を誇る松田国師にも悔しさがにじむ。単勝1・6倍の圧倒的1番人気。3度目のVを逃し、その目はかすかに潤んでいた。「アンカツさんはコースロスなく乗ってくれた。““仕上げる≠ニいうのは““掛かる≠アとと紙一重。プロセスは順調だったが、乗り越えられなかった」と肩を落とした。 勝ち馬と同タイムで3着に敗れた皐月賞に続き、2冠目もVには届かなかった。今秋の凱旋門賞への挑戦プランについて「今どうこう言うべきじゃない。まずは、きちっと管理下に置いて馬の状態を見たい」と、トレーナーは明言を避けた。「ファンに申し訳ない」と頭を下げる姿が、勝者と敗者の明暗を映し出していた。 【ヴィクトリー痛恨出遅れ9着】 ▼一瞬で消えた2冠の夢 13万人の観衆が見守るスタンド前のスタート地点。皐月賞馬のヴィクトリーは、一瞬ひるんだような格好で痛恨の出遅れ。1コーナーを回った時は誰もが予想しなかった最後方からの競馬になってしまった。 「ゲートをうまく出れなかった」と田中勝は振り返る。そこから折り合いを欠きながら一気に4番手まで進出。直線では鞍上のムチに応えることなく9着に沈んだ。「前半で走っちゃったからね。ケツで折り合いをつけようとしたが、うまくいかなかった」と日本、海外のGIを制したジョッキーは悔しそうに語った。 皐月賞もスタートは良くなかったが、先頭に立ってから折り合い、スムーズなレースができた。しかし、今回は道中で燃えてしまった。「最悪のパターンになってしまったね。出遅れてからかかって前へ行ってしまった。せめて道中で折り合ってくれれば」と音無師。本来の力を出し切れずに終わってしまった。 幼いハートがここ一番の舞台で悪い方向へ出てしまった。この後のローテーションは今のところ未定だが、いったん放牧へ出して秋に備える。この一戦で失いかけた輝きを取り戻すために。 【アドマイヤオーラ 完敗3着】 ちょうどフサイチホウオーの一歩前で流れに乗ったアドマイヤオーラ。ラストも末脚を駆使したが3着までが精一杯だった。「ホウオーをマークしたわけではなく、自然とあの位置に。(勝ち馬と)併せ馬の形になればもう少しやれたんだろうけど。でも距離に関しては対応できたと思う」と岩田。武豊からの乗り代わりでプレッシャーもあっただろうが、淡々とレースを振り返っていた。 【サンツェッペリン 力尽き4着】 皐月賞と同じ2番手から直線で勢いよくアサクサキングスに襲いかかったサンツェッペリンだが、結局は力尽きて4着止まり。それでも関東馬として最先着を果たし、前走がフロックではなかったことを証明した。「一瞬いけるかなって思ったんだけどね。(プラス10キロは)太くはなかったけど、イレ込んでいたのがこたえたんじゃないかな。でも力は出し切れた」と松岡も納得の表情だった。 【ドリームジャーニー 意地見せた5着】 ウオッカに次ぐメンバー中2番目に速い上がり3F33秒1の脚を使ったドリームジャーニー。5着とはいえ2歳王者の力は示した。「あまり中途半端に動くと良くない馬。流れが向かなかったね。最後は素晴らしい脚を使ってくれたんだけど」。蛯名は懸命に走ったパートナーをねぎらう。「折り合いが付くようになってきている。あとは体が成長してくれれば」と今後に期待していた。
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