スプリンターズステークス |
圧逃中舘13年ぶりGI奪取 2007/09/30・中山競馬場 |
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強い3歳牝馬が、古馬スプリント界も席巻した。秋のGI開幕戦は3番人気のアストンマーチャンが好スタートから逃げ切って優勝。鞍上の中舘英二騎手(42)=美浦・フリー=はヒシアマゾンで勝った94年エリザベス女王杯以来、13年ぶりにGIタイトルを獲得した。今後は海外挑戦も視野に、自慢のスピードに磨きをかけていく。2着はサマースプリントシリーズ王者のサンアディユで、GI昇格後、初の牝馬によるワンツー。3着には関東馬アイルラヴァゲインが入った。 | ||||||||||||||||||
【 海外挑戦も視野】 陣営の信念にも後押しされて、短距離界に新女王が誕生した。ダービー馬も輩出した強力世代の3歳牝馬・アストンマーチャンが古馬の追撃を完封した。今春の桜花賞を2番人気で7着に敗れた後、陣営はNHKマイルCには目もくれず、休養で英気を養い秋の実りをジッと待った。すでに、生粋のスプリンターだと確信していたからだ。約半年の時を経て、それは最高の形で現実のものとなった。 不良馬場での決戦。二の脚を鋭く利かせて一気に迷うことなくハナを奪うと、引き離し気味に逃げた。 「石坂先生からは“この馬場だから内も外も関係ない。駄目でもいいから内を回ってこい”と。そのひと言で楽になった。最初の10〜20メートルで、どれだけハミが抜けるかが勝負だった」と中舘。人馬の呼吸はピッタリだった。2F目から10秒3―10秒8―11秒1と徐々にラップを落とす絶妙な逃げ。「大舞台で勝つということを忘れていたので、うれしい。まだまだこういう大きい舞台で勝ちたい」。13年ぶりとなるGI優勝のゴールへ、夢中になって追った42歳のベテランは満面の笑みを浮かべた。 レースの1カ月前、騎乗依頼が突然舞い込んだ。中舘は自ら栗東を訪れ、1週前追い切りで感触を確かめた。「こんなにおとなしい馬なんだ」。うるさいイメージとは全く違ったことで、自信を持ってレースに臨めたことが大きかった。 石坂師は「失敗することばかりだが、今日はマーチャンが力を出してくれた」と、してやったり。4角を楽な手応えでクリアした時点で、直線の急坂も大丈夫だと思ったという。「内心は、高速馬場で決着をつけたいと思っていたけど。4コーナーを回るときは(00年優勝の)ダイタクヤマトがオーバーラップした」と、7年ぶり2度目の美酒に酔った。 今後は追われる立場となる。「私としては、頂点を極めてくれたことで十分。元気なうちは使っていくけど、とりあえず(今後)は白紙」という。だが「千二百メートルで一番強かった。考えないことはない」と、海外への挑戦も視野に入れている。さらなる高みへ、マーチャンは猛烈なスピードにより一層磨きをかけていく。
【オーナー興奮】 アストンマーチャンの馬名の由来は、007シリーズでジェームズ・ボンドが愛用している英国製の乗用車ブランド“アストンマーチン”に、馬主の戸佐眞弓氏の学生時代の愛称“マーチャン”をかけて付けられたもの。「あの車のように速い馬になってほしいと思い名付けました」。個人馬主になって初めて持った馬のGI制覇に、興奮冷めやらぬ表情だった。
【上田助手感涙】 先頭でゴールしたマーチャンを出迎えた担当の上田助手は、目にいっぱい涙をためながら「泣いてへんデ」と言って笑顔を作った。00年に石坂厩舎に初GIタイトルをもたらしたダイタクヤマトを担当していた腕利き助手も、マーチャンでは阪神JFや桜花賞で悔しい思いをしてきた苦い思いがあっただけに、今回の勝利の味は格別。栗東から呼んだ家族と一緒に写真に納まっていた。 【夏王者・サンアディユ猛追及ばす悔し2着】 悔しい2着だった。サマースプリントシリーズを制した勢いでGIに初挑戦したサンアディユ。堂々の1番人気に支持されたが、勝ち馬に3/4馬身差まで迫るのがやっと。快速3歳娘の前に、シンデレラガールの夢は銀メダルで終わった。
【3着「馬場が…」】 アイルラヴァゲイン 最内枠からスッと2番手集団につけたアイルラヴァゲイン。直線手前から果敢に勝ち馬を負かしに行ったが、最後は力尽き3着に終わった。「勝ちたかった!」と悔しさをあらわにした松岡。「思った通りの競馬はできた。勝つためには(前を)捕まえにいかないといけないからね。馬の雰囲気もよかった。ただやっぱり良馬場の方が…」。決して得意ではない不良馬場も影響し、初のGI制覇はならなかった。 【大外キツイ4着】 キングストレイル 初のスプリント戦に臨んだキングストレイル。道中は中団やや後方で待機、直線ではしぶとく脚を伸ばしたが4着止まりだった。「大外はキツイよ。馬場はこなせたし、最後はよく来ている。千二にもそれなりに対応していたけどね。やっぱり大外がなあ」と田中勝。終始、外を回されるロスが最後の最後で響いた格好だ。それでもスピードを改めて見せつけたのも事実。短距離路線で今後の活躍に期待がかかる。 【見せ場なく9着】 スズカフェニックス 高松宮記念の覇者スズカフェニックスは後方から見せ場を作れず9着。本来の末脚が不発に終わり「道中全然反応がなくて、ただ回ってきただけ。馬場に関係なく1度もグッと来るところはなかった」と武豊は淡々と振り返った。「ためて走れないから少し距離も短い。でも一番は状態だね」。インフルエンザ騒動により調整遅れが生じた今回。最後まで本調子に戻らなかったことが大きな敗因になったようだ。 |
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