【安藤勝自信の早めGOサイン】
▼「この馬の強さ見せられた」
口取りでやんちゃぶりを見せるダイワスカーレット
熱発によるオークス自重が悔やまれる。先行して、なおも鋭く伸びる。ダイワスカーレットの2段階エンジンに、後続馬はお手上げ。またも3F33秒台の上がり時計をマーク。桜の女王が再び頂点に立った。
2番手でレースを進めた。ペースが落ちた5Fから6Fでうまく息を入れ、先頭に並びかけた残り3Fの標識を合図に早めのスパート。まさにドンピシャのタイミングだった。一瞬にして突き放す脚力。そして持続力。後続の追撃を楽々と振り切った。「あらためて力を感じた。この馬の強さを見せられたと思う」。エスコートした安藤勝も会心の騎乗に笑みを浮かべた。
流れが速くなりやすい京都の内回りコース。抑える競馬も考えていた。だが、直前に考えは変わった。「返し馬でフットワークがリズミカルだな、と。これなら気持ちよく行かせた方がいい。レース前に切り替えたんだ」。
今年のGI戦線で独走するアンカツに迷いはなかった。7戦すべての手綱を取ってきたパートナーに、全幅の信頼を寄せている。「長い脚を使う。脚が上がることはない。自信を持っているから早めのGOサインを出したんだ。力でねじ伏せたね」。これで6戦連続で3F33秒台の上がりタイムだ。
歴史的牝馬と言われるライバルに2勝1敗と勝ち越した。ダービー馬を封じた事実は““3歳馬最強≠ニ誇れるもの。鞍上はさらに上のレベルを渇望する。「あの馬(ウオッカ)も強いからね。こっちは1回使ってすごくいい状態だったし、まだ勝負づけが終わったとは思っていない」。そして、ダイワメジャーとの兄妹対決も期待される。「十分、この馬なら古馬に入ってもやれると思っている」と目を輝かせた。
「3歳世代ではナンバーワン」。松田国師は高らかに宣言する。今後の路線は明言しなかったが「マイルにせよ、二千二百メートルにせよ、海外にせよ…。たとえ、大きなスケールになっても、この馬は強くなっているし大丈夫でしょう」と胸を張る。いよいよ、兄の背中が見えてきた3歳最強馬。次は古馬がターゲットになる。
【ウオッカ大外猛追も及ばず3着…】
▼悔しい敗戦にも収穫あり 「次は強いウオッカ見せられる」
先頭でゴールを駆け抜けることはできなかった。ウオッカは3着に敗れた。だが、四位の表情に落胆の色はなかった。「前の2頭はとらえられなかったけど、道中は我慢して走ってくれた。こっちは秋初戦だから。次は強いウオッカを見せられると思う」。胸を張って次を見据えた。
秋初戦は、何よりも折り合いを重視した。単勝1番人気の支持を受けた使命感、そして勝利へのこだわりがあったのはもちろんだ。だが一方で、同じく1番人気に支持された宝塚記念では折り合いを欠き、苦い思いもしている。「折り合いを欠いて、集中力をなくすような競馬だけはね」。四位の思いは、そのまま陣営の思いでもあった。
スタート直後こそファイティングポーズを見せたが、1コーナーを回るころにはしっかりと折り合った。3〜4コーナーは自ら動いて勝ちに行ったが、レースの上がり3Fが33秒9では3着が精いっぱいだった。
出迎えた角居師も冷静に受け止めた。「休み明けの分と内回りの分ですね。でも前残りの展開の中、追い上げたのはウオッカとベッラレイアだけ。悲観する内容ではなかった」とダービー馬の秋初戦に合格点を与えた。次はエリザベス女王杯(11月11日・京都)かジャパンC(11月25日・東京)が有力。秋2走目。次こそ、強いウオッカを見せる番だ。
【ベッラレイア驚異の上がりも…4着】
泣く泣く、最後方から大外をぶん回した。メンバー最速にして自己最速。上がり3F32秒9の脚を駆使しても、ベッラレイアの追い込みは4着止まり。戴冠の夢は果たせなかった。
「返し馬で引っ掛かった。(レースでも)本当に行きそうになったから、とりあえず下げるしかなかった。大一番の舞台だけに残念」と武豊は唇をかむ。激しい闘争心をなだめながら、道中は後方2番手を追走。そこから最後の直線勝負にかけたが、勝ち馬を捕らえることはできなかった。
オークスでは鼻差2着で涙をのみ、今回は折り合いを欠いて敗れた。「能力を持っていることが分かっているだけに歯がゆい」と平田師。普段は引っ掛かることなどない気性。大舞台の雰囲気にのまれたか。「今度はハミを変えたり、工夫してみる。無事なら女王杯へ」とエリザベス女王杯(11月11日・京都)への挑戦を表明。直線の長い外回りコースでの逆襲を誓っていた。
【大健闘銀メダル】
レインダンス 並みいるGI馬を押しのけて、2着に入ったのは7番人気の伏兵レインダンス。道中は中団の位置をキープし、4コーナーにかけて徐々に進出。最後の直線でウオッカの強襲を首差抑えて銀メダルを獲得した。武幸は「秋になれば良くなる馬だと思っていたし、春の実力差を考えれば今日はうまくいったよ」と満足げ。宮師も「4コーナーで行けると思ったが、相手が強かったね」と勝ち馬を称えた。次はエリザベス女王杯を予定している
【直線伸びず10着】
ローブデコルテ 芦毛の馬体が馬群の中に消えていく。オークス馬のローブデコルテは、直線で伸びきれず10着に敗れた。中団の好位置で競馬を進め、道中はスムーズな走りを見せたが、そこからは反応ひと息。府中で見せた豪脚は影を潜めた。福永は「ちょうどいい位置だと思ったが、前がたれてこなかった。体はできていたけど、精神的に久々の分があったかな。気負っていたね」と敗因を語った。
【見せ場なく14着】
ピンクカメオ NHKマイルCの覇者ピンクカメオは14着に惨敗した。内々のロスのないコース取りで道中は折り合いに専念。直線でごちゃつくシーンはあったものの、見せ場をつくれなかった。「ロスなく乗ってくれと言うことだったので、大外を回る気はなかった。あそこから割ってくるのは苦しいし、不向きな展開になった」と後藤。国枝師も「距離ではないが、あの流れではね」と展開を敗因に挙げていた。