2007/11/11 京都競馬場
▼第32回エリザベス女王杯 | |||
1着 | ダイワスカーレット | 安藤勝 | 2.11.9 |
2着 | フサイチパンドラ | ルメール | 3/4 |
3着 | スイープトウショウ | 池添 | 1 1/4 |
勝利の女神は、安藤勝ダイワスカーレットにほほ笑んだ。好スタートからハナに立つと、レース史上4番目に速い2分11秒9のタイムで堂々の押し切り。GI3勝目を飾り、統一女王の座に就いた。前日1番人気のダービー馬ウオッカは右寛ハ行を発症し、まさかの出走取消。“3歳2強”は明暗がくっきりと分かれた。2着は昨年優勝のフサイチパンドラ。なお3着に入ったスイープトウショウは、このレースで引退することが発表された。
後続に影を踏ませず逃げ切ったダイワスカーレット(左)=京都競馬場
【重圧はねのけ堂々逃げ切り】
万歳三唱する安藤勝騎手(中央)ら関係者
最大かつ宿命のライバルが急きょ出走を取り消したことで、2冠馬は圧倒的な1番人気に支持された。だが、ダイワスカーレットはそのプレッシャーもはねのけて堂々の逃げ切り。最後まで先頭を譲らず、現役牝馬No.1の座に就いた。
未知の二千二百メートル、そして末脚勝負タイプにより有利な京都外回りコース。だが、これらの課題も難なくクリアした。好スタートを切ると、安藤勝は迷わずハナへ。1角で行きたがりそうになったが、向正面では力みも抜けて本来の走りを取り戻した。「無理に下げるよりは、この馬のリズムで行こうと。すごくリズム良く走っていたし、しまいもしっかりしていたね」。残り八百メートル地点から11秒8―11秒1と急加速。自慢のロングスパートで、ラスト2Fも11秒4―11秒6でまとめた。2着フサイチパンドラとの着差は3/4馬身。それでもスカーレット自身の手応えはまだまだ十分…埋まることのない差だった。
ウオッカが決戦当日朝、まさかの出走取消。もちろん、安藤勝にとっても最も気になる存在だった。「最初聞いたときはウソかと思った。いい状態だと聞いていたし、見ていてもそうだった。拍子抜けした。強敵だと感じていたし、正直“運がいいなあ”と思った。やってみないと分からないけど、ウオッカはいい勝負をしていたと思う」。これまで2勝1敗と勝ち越してはいるが、ダービー馬の強さを認めているからこそ、素直な気持ちを表現した。「ファンも対決を楽しみにしていたと思う」と再戦を心待ちにしている。
勝負付けは未決定の次なるステージへと持ち越されたが、今回獲得したタイトルが色あせることはない。大城敬三オーナーも「驚きました。逃げても勝てるとアンカツさんは思っていたみたい。本当に強いレースでした」と喜んだ。自分でレースをつくって歴戦の古馬を封じ込み、3歳牝馬のレベルの高さを証明した。桜花賞、秋華賞に続き変則3冠を達成。統一女王の今後の活躍がますます楽しみになった。
【「喜べない」記念デー 松田国師は会見拒否】
ダイワスカーレットの松田国師は会見を拒否。JRA広報を通じて、コメントを出した。「いつもならお話しができるのですが、ウオッカがああいう状態で、出走取消という形になっている中で、自分が喜んでいる姿は見せられない。きょうについては、安藤勝さんの話でお願いします」。エリザベス女王杯は初制覇でGIも区切りの10勝目。京都2RでJRA通算300勝とメモリアルデーとなったが、ライバルの無念さをおもんぱかった。
◆松田国師300勝
11日の京都2Rをマイハートマイラブが勝ち、松田国英調教師(57)=栗東=はJRA通算300勝を達成した。ダービー2勝(02年タニノギムレット、04年キングカメハメハ)を含めてGIは10勝。「失敗することもあり、負けることの多い競馬に根気強く応援し続けてくださった牧場、馬主、スタッフをはじめ皆さんに対して、感謝の気持ちをこの300勝の節目に改めて表したいと思います」と笑顔で語った。
【“有終”3着】
多くのファンに愛された“気まぐれ”女王が、ターフを去る。上がり3F33秒9の末脚を駆使しながら3着に終わったスイープトウショウ。レース後、鶴留師の口から引退が発表された。「最後までよく頑張ってくれた。あの調教で走ってきたんだから、大したもんだよ」。
頑固な気性が災いし、思い通りの調教など一度もできなかった。そんな中で牡馬相手の宝塚記念を含むGI3勝という実績が、ポテンシャルの高さを物語る。「無事にふるさとに帰せるのは何より。寂しいというよりホッとしている」。親心をのぞかせた師の表情は晴れやかだった。
この日のパドックで師とオーナーから「今日が最後」と聞いた池添は「悔いのないレースができた。これだけの馬に乗せてもらって勉強になりました」と苦楽を共にした愛馬への感謝を言葉にした。引退後は生まれ故郷・静内のトウショウ牧場で繁殖に。女王の血を残す大切な仕事が待っている
【末脚3/4馬身及ばず】
フサイチパンドラは好位追走から直線でもジワジワと末脚を伸ばしたが、ダイワスカーレットに3/4馬身差まで迫るのが精いっぱい。それでも2着確保は、前年覇者の意地と底力だった。「前をとらえに行って、この手応えなら勝てると思った。差は縮まったけど、勝った馬が強かったね」とルメールは肩を落とす。一方、白井師は「面目は保ったけどなあ」と苦笑い。次走のジャパンC(25日・東京)に視線を向けていた。
【ウオッカの無念晴らせず】
ウオッカと同じ角居厩舎のディアデラノビアは4着。後方から直線で外めを追い込んだが、先行有利の流れに泣いた。「あんなにスローだとね。(位置取りが)自由自在の馬じゃないから」と武豊は無念の表情。昨年1月の京都牝馬S5着以来のコンビ結成だったが、悲願の戴冠に導くことはできなかった。「道中の折り合いもついたし、よく走ったんだけどね」。ゲートインを果たせなかったウオッカのうっぷん晴らしとはならなかった。
ダイワスカーレット…牝3歳。父アグネスタキオン、母スカーレットブーケ(母の父ノーザンテースト)。馬主・大城敬三氏。生産者・千歳 社台ファーム。戦績・8戦6勝。重賞・07年桜花賞、ローズS、秋華賞に続き4勝目。総収得賞金411、591、000円。安藤勝己騎手、松田国英調教師ともに初勝利。