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ジャパンカップ

最後の輝き!V花道に引退
頂点上ったムーン

2007/11/25 東京競馬場

▼第27回ジャパンカップ
1着 アドマイヤムーン 岩田 2.24.7
2着 ポップロック ペリエ
3着 メイショウサムソン 武 豊

まさにパーフェクト・エンディング―。岩田騎乗の5番人気アドマイヤムーンがゴール前の大接戦を制し、不利に泣いた天皇賞・秋(6着)の雪辱を見事に果たした。オーナーのダーレー・ジャパン・ファーム代表・高橋力氏はレース後、このまま引退し種牡馬入りすることを表明。ラストランを最高の形で締めくくった。頭差2着にポップロック。断然の1番人気に推されたメイショウサムソンは3着に敗れ、武豊の今週重賞4勝の新記録達成はならなかった。

アドマイヤムーン

ポップロック(左)の追撃を頭差抑えて快勝したアドマイヤムーン=東京競馬場

男泣き!園田から世界の岩田へ

【秋盾の無念晴らした】

勝利の瞬間、込み上げてくる涙を抑え切れなかった。「もう1度やらせてほしい」―他馬の斜行のあおりをモロに受けた悪夢の天皇賞・秋から4週間。岩田とアドマイヤムーンの勝利に対する熱い気持ちは、ほかの誰よりも勝っていた。盾で味わった悔しさをすべて府中のターフにぶつけた先には、パーフェクト・エンディングが待っていた。

力と力がぶつかり合った直線の攻防、岩田ムーンは内々から一気にスパート。早めに先頭に躍り出た。外から伸びる1番人気のメイショウサムソンを振り切ると、馬場の真ん中から1完歩ごとに迫ったポップロックの強襲も見事にしのぎ切った。上位3頭は時計差なし、わずか頭、首差。3度目のGTタイトルは、まさに執念でつかみ取った。

直線

外で叩き合う人気馬に対して果敢にインを突いたアドマイヤムーン(右から3頭目)

鞍上のファインプレーも光った。最初のコーナーで前がゴチャつき、下げざるを得ない形に。「そこで馬が怒ってしまった」と振り返ったが、その後は冷静にインでじっと我慢を決め込んだ。前半千メートル通過は60秒1。スローペースに苦しみながらも直線まで辛抱を重ねて、末脚を爆発させた。「みんなは外に出そうとしていたけど、僕は逆を狙って」と迷わずインへ。「レース前から考えていた。いいレースができたと思う」と、この日ばかりは自分自身の騎乗ぶりを褒めた。

【岩田は府中初制覇=z

岩田自身、これまで東京コースの攻略に苦しんだ。「GUもGVも勝てなかったけど、ようやく体に染みついてきた」。東京でのうれしい重賞初制覇が、GTのビッグタイトル。松田博師も手放しで喜んだ。「いつもよりゲートが良かったし、位置取りも良かった。抜け出しが少し早いかなと思ったが、持ってくれて良かった」と人馬を称えた。

これがJRAでの初勝利となったダーレーJFの高橋力代表は、レース後の記者会見で現役引退を表明。種牡馬としての価値を高める意味でも、最高の結果を得た。また、地方・園田競馬からはい上がってきた若武者は“世界の岩田”となった。アドマイヤムーンはこれ以上ない最高の走りで、すべての人を幸せに包み込んだ。そう、あまりにも美し過ぎるラストランだった。


岩田騎手

アドマイヤムーンでジャパンCを制した岩田は誇らしげにガッツポーズ

ダーレーJFやった!

【わずか4カ月でGI制覇】

7月にJRAの馬主登録をしたダーレーJFは、今回が初勝利。わずか4カ月でGTタイトルを手に入れたが、代表の高橋力氏はジャパンCを最後にアドマイヤムーンを引退させることを表明した。「すばらしいパフォーマンス。これで次へ送り出すことが私の務め。責任を果たせてホッとしている」と、しみじみ語った。

近藤利一氏から約40億円で購入。種牡馬としての価値を高めようと臨んだ秋の天皇賞だったが、直線での不利もあり6着と敗れた。「すごくショックだった。このまま引退させるのでは(種牡馬としての)インパクトが違う。トレーナーとも相談し、私の“カン”ピューターも駆使して」あえて距離に不安のあるジャパンCへ参戦した。

馬体の回復を待ち、北海道日高町富浜のダーレー・ジャパン・スタリオン・コンプレックスで種牡馬入り。種付け料は500万円だが、この勝利で人気は急騰しそうだ。

【前オーナー近藤氏も歓喜】

アドマイヤムーンの前オーナー・近藤利一氏も歓喜の輪に加わった。「天皇賞で悔しい思いをしたからな。ここで強いムーンを見せられたことがうれしい。ジョッキーには5番手ぐらいで、と指示したんだ。責任を果たせてすごくよかったよ」と安どの表情。「(オーナーとして制した)宝塚記念の時よりもうれしい。だけど、(松田博)調教師が一番うれしいんじゃないかな」と、今回の勝利でJRA重賞40勝目を飾ったトレーナーの頑張りを称えていた。


サムソン3着

【ユタカ1週4重賞制覇ならず】

単勝1・8倍が重くのしかかった。「ちょっと外を回りすぎたかな。そういう形になったし、大本命だから」と武豊の第一声。メイショウサムソンはじりじり追い上げるも3着に敗れた。

天皇賞・秋の敗戦で評価急落したライバルが思い切って最内を突いたのに対し、勝負どころで外々を徐々に進出。「ごちゃついた内には突っ込めないからね」。このあたりが大本命馬の苦しいところだろう。上がりは1〜3着が同じ33秒9をマークしており、位置取りが着順に直結した。「最後のひと踏ん張りが利かなかった。内は悪いと思ったんだけど伸びたね…」。浦和記念、京阪杯、JCダートに続く史上初の1週4重賞制覇を逃した鞍上は静かに悔しさをかみしめた。

「内の馬はうまくいった。展開のアヤ。こっちは大外を回らざるを得なかったから。ウオッカも外から来ているけど内が有利だったかな」と高橋成師も同様のレース回顧。続けて「(上位は)大体みんな同じ感じの馬。違う競馬で逆転もある」と前を向いた。

「大きい敗戦だけど、巻き返したい」と有馬記念での逆襲を誓った武豊。その言葉には現役最強の称号を取り返すと同時に、自身の悔しさを絶対に晴らすという強い決意が込められていた。


角居厩舎3頭出しも「負けました」

【頭差及ばず…ポップロック2着】

ポップロックは直線で馬群を割って抜け出したが、頭差及ばず。昨年のメルボルンC、有馬記念に続き、国内外合わせて3度目のGT2着。またも栄冠を手にできなかった。「勝ったかと思ったのに。最後まで闘志を見せてくれたんだが」。JC3勝目を逃したペリエは悔しがった。3頭出しの角居厩舎は2、4、5着。すべて掲示板に載ったが、師は「負けました」とぽつり。3頭の有馬記念出走については「オーナーと相談します」とだけ話した。


     

【ウオッカ4着四位「申し訳ない」】

ウオッカはメイショウサムソンと馬体を合わせるように伸びてきたが、最後は力尽きて4着。四位は「2番人気に推されたのは応援してくれるファンの多い馬だから。馬券に絡めなくて申し訳ない」と神妙な面持ち。エリザベス女王杯はレース当日に右寛ハ行で出走を取り消すアクシデントがあった。「そんなことがありながら、今日は一瞬“オッ”という感じだった。やっぱり能力が高いんだね」。ダービーと同じ舞台で底力はきっちりと見せた。


はじけずインティ

ディープ世代のダービー2着馬インティライミは、インで脚をためていたが伸び切れず10着に終わった。佐藤哲は「はじけなかったね」と首をかしげる。道中はメイショウサムソンを見ながらの追走。「予定通りに行ったけど、欲を言えばもうちょっと流れが速くなってほしかったね。最後は離されてしまった」。ここ2戦で築き上げたスタイルが不発に終わり、がっくりとうなだれた。


アドマイヤムーン…牡4歳。父エンドスウィープ、母マイケイティーズ(母の父サンデーサイレンス)。馬主・(有)ダーレー・ジャパン・ファーム。生産者・早来 ノーザンファーム。戦績・17戦10勝(うち海外3戦1勝)。総収得賞金1、187、727、000円(うち海外447、265、000円)。重賞・05年札幌2歳S、06年共同通信杯、弥生賞、札幌記念、07年京都記念、ドバイデューティフリー、宝塚記念に続き8勝目。岩田康誠騎手、松田博資調教師ともに初勝利。

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