2007/12/02 阪神競馬場
▼第59回阪神ジュベナイルF | |||
1着 | トールポピー | 池添 | 1.38.8 |
2着 | レーヴタムール | 藤岡 | 首 |
3着 | エイムアットビップ | 福永 | 首 |
ダービー馬の蹄跡をなぞった。運と実力を兼ね備えた2歳女王の誕生だ。抽選をくぐり抜けたトールポピーがゴール前で差し切ってV。外回りの長い直線に待ち構える急坂もお構いなし。息の長い末脚で突き抜け、2歳牝馬の頂点に立った。角居厩舎は昨年のウオッカに続き、2年連続の制覇。2着には同じく抽選を突破したレーヴダムール。1番人気馬のオディールは4着に敗れた。
写真サービスジュベナイルフィリーズを制したトールポピー=阪神競馬場
【伝説の序章】
エスコートした池添は、左こぶしで何度もガッツポーズを繰り返した。素質にほれていたトールポピーを、2歳女王に導いた。「あまり手応えをよく見せる馬じゃないけど、一歩ずつ伸びてくれる。信じて一生懸命追いました。タフなので頑張ってくれた」。出会った瞬間からインスピレーションが走ったパートナー。これ以上ない形で、期待に応えた愛馬をたたえた。
レースは意外な展開になった。ハナを奪ったのはこれまで差す競馬をしてきたエイシンパンサー。スタンドがどよめく。だが、池添は冷静だった。3F通過33秒7の激流にのみ込まれないよう、中団のやや後ろで折り合いをつけた。4角は大外へ。内からぶつけられてもひるまずに、ゴールへと一直線。追えば追うだけ伸びる末脚がうなりを上げる。ゴール寸前で前をとらえると、後続の追撃も振り切りVを決めた。
これだけのパフォーマンスを発揮しながらも、まだ成長段階。ここから始まる伝説の序章にすぎない。「今回は出来の良さと能力でどれだけの競馬ができるかなと思っていた。若いし、トモもしっかりしていない。もっと強くなる」。未完成ながらも手にしたGIタイトル。思い描く来春の姿に鞍上は胸を躍らせた。
阪神JFを制したトールポピーと歓喜の関係者ら
【運も味方】
運も味方した。池添には主戦を務め、除外の心配がない馬がほかにいたが、12分の6の抽選に賭けた。「初めて乗ったときにGIを意識した馬。この馬で…と思ったから除外を覚悟して選んだ。出られることが第一条件でしたから。出られたらやれると思っていた」。自分の直感を信じて貫いた先につかんだ栄冠。それだけに喜びもひとしおだ。
黄菊賞2着から抽選突破し、2歳女王へ。その軌跡は厩舎の先輩と全く同じだ。「昨年のウオッカは力が抜けていると思っていた。今年は““いい競馬をしてくれたら来年が楽しみになるな≠ニ…」。連覇を果たした角居師は想像を上回る結果に笑顔を見せた。
来春には昨年果たせなかった桜花賞制覇が待っている。「ウオッカとは比べられない。でも、まだまだ強くなる気がします。この後はたぶん牧場へ。前哨戦を使って、GIに向かいます」。3歳クラシックの第1回登録(10月26日締め切り)は桜花賞、皐月賞、オークス、ダービー、菊花賞のすべてに登録している。
夢の広がる桜候補は、2歳女王に輝いた今でさえ、まだつぼみ。春にはさらに成長を遂げている。女王の座は誰にも渡さない。
【母の無念晴らせず…】
母の無念を晴らすことはできなかった。オディールは4着に終わった。前走のファンタジーSを快勝、1番人気に支持された。道中は好位を追走、いつものパターンに持ち込んだ。早めに抜け出しを図り、直線半ばで一度は先頭に立ったが、ゴール前で外から伸びてきた3頭にのみ込まれた。安藤勝は「行きっぷりが良くて、反応も良くなっていた。外から来られたので早く動いたけど…。止まってはいないんだけどねえ」と静かに振り返った。
だが、悲観した様子はなかった。勝負付けが済んだわけではない。鞍上は「確実に走るね。この時期の2歳馬は、まだ何が強いか分からないからね」と巻き返しを誓った。母キュンティアは97年の2着。ビッグタイトルをつかむことができないままターフを去ったが、オディールの戦いは始まったばかり。この悔しい気持ちは、来春にぶつける。
メンバー最速の上がり34秒8で猛追。キャリア1戦の8番人気レーヴダムールが2着に健闘した。「ゲートはもともと遅いので、腹をくくって乗りました。トールポピーがいい感じだったので、早めに動いたんです。ワンテンポ我慢していたら、もっと切れていたかもしれません。着差が着差だけに…」と、藤岡佑は悔やむ。自身はマイルCSに続き、この秋2度目のGI2着。人馬ともに、あと一歩で金星を逃した。
収穫はあった。メンコを装着したエイムアットビップは、ニュースタイルで3着。中団で折り合い、控える競馬を敢行。落ち着きが出て、調教で覚えた形を本番できっちりと表現した。「完ぺき。イメージ通りのレースができたよ。あれで負けたら、仕方ない。一戦一戦、成長しているね。(上位との差は)埋められない差じゃないし、来年が楽しみになった」と、福永は今後の活躍を誓った。
道中は後方でじっと我慢し、直線勝負にかけたシャランジュ。最後はメンバー中2番目に速い上がり3F35秒0の末脚を繰り出し、馬群を割って伸びてきたが、掲示板が精一杯だった。村田は「一発を狙っていたけどね」と残念そうな表情。「届かないと思ったので内を突いた。この馬はこういう競馬しかない。それでも力のあるところを見せられたと思う」と語った。
トールポピー…牝2歳。父ジャングルポケット、母アドマイヤサンデー(母の父サンデーサイレンス)。馬主・(有)キャロット。生産・早来 ノーザンファーム。戦績・4戦2勝。重賞初勝利。総収得賞金・73、198、000円。角居勝彦調教師は06年ウオッカに続き2勝目、池添謙一騎手は初勝利。