2008/2/24 東京競馬場
▼第25回フェブラリーS | |||
1着 | ヴァーミリアン | 武豊 | 1.35.3 |
2着 | ブルーコンコルド | 幸 | 1 3/4 |
3着 | ワイルドワンダー | 岩田 | 2 |
出走取消明けも、2年ぶりのマイル戦も、王者は歯牙にもかけなかった。昨年のダート王ヴァーミリアンが完ぺきな強さで、国内を制圧。史上3頭目のフェブラリーS、JCダートVを飾った。これでGT4連勝。昨年は4着に敗れたドバイワールドC(3月29日、UAE・ナドアルシバ競馬場)へ向けて、大きく弾みをつけた。武豊は21年連続で中央GT制覇をマークした。2着には昨年に続いてブルーコンコルドが入り、2番人気のフィールドルージュは競走中止となった。
ヴァーミリアンと共にフェブラリーSを圧勝し、ガッツポーズを見せる武豊=東京競馬場
昨年のリベンジを賭けて挑む、ドバイワールドCへ向けて最高のパフォーマンスを披露した。ヴァーミリアンが、その実力をまざまざと見せつけた。
好スタートを決め、すぐに流れに乗った。好位につけ、終始、外を回りながらも楽な手応えで直線へ。残り二百メートルでムチが入り、力強く抜け出して後続を引き離すと、そこからは脚色が違った。昨年の最優秀ダート馬。GT4連勝を成し遂げ、その名に恥じない、文句なしの完勝だった。
直線は強い向かい風が吹き、砂もパサパサに乾いたタフな状況。武豊はある程度前の位置取りをイメージしていた。「完ぺきでした。今日はいつもより気合が乗っていたし、それぐらいの方がいいと思っていた。状態の良さも感じられた。チャンピオンらしいレースができた。これで日本代表として胸を張って行ける」。思い描いた通り。百点満点の内容に笑顔を浮かべた。
今年の初戦として予定していた川崎記念を、右飛節炎で出走取消。2年前のフェブラリーS(5着)以来となるマイル戦に、流れに乗れるか心配された。しかし、陣営は目標を切り替えた後、着々と準備を整えてきた。最終追い切りでもスタートから気合をつけるなど、“マイル仕様”の調教で仕上げてきた。プラス7キロと若干の太めは残ったが、心配は杞憂(きゆう)に終わった。
国内では敵なし。次走は昨年に続いて、世界の一線級との戦いが待つ。「馬インフルエンザの影響で、かなり調整は難しいが、京都での3週間ではうまく調整する自信がないので、ギリギリまで栗東でやります」と石坂師。輸出検疫期間は5日間。前後に1日を含むため、最短なら3月14日の出発から逆算して、3月8日までに京都競馬場入りして、輸出検疫を受けることになる。
「ここを勝って、強い競馬をして、行こうと思っていた。最高の結果でした。プラス7キロでこういう競馬ができたことで、もっとよくなる余地はある。この距離で勝てたことで日本の最強馬だと実感した」と指揮官は胸を張る。昨年は4着に終わったドバイワールドCだが、当時とは明らかに違う。「馬がすごく自信を持っているのが分かる。楽しみを持って行ける」。差は確実に縮まっている手応えはある。世界のダート王決定戦で、日の丸旋風を巻き起こす。
岡部幸雄氏(左)から花束を贈られ、笑顔の武豊=東京競馬場
【吉田NF代表感慨ドバイ「楽しみ」】
馬主の代理として表彰台に立った吉田勝己・ノーザンファーム代表は、「距離だけが分からなかったが、馬は良く見えてからね。時計も速かったし、強かった」と笑顔。同ファームの秋田博章場長も「以前は精神的に弱いところがあったが、今は強くなったね」と大きく成長したことを強調した。次はドバイワールドCになるが、吉田代表は「そんなに甘くはないだろうが、これで楽しみになった」と期待を寄せていた。
【2番人気も横山典無念】
2番人気に推されたフィールドルージュだったが、向こう正面でよもやの競走中止。「ゲートでつまずいたときに脚元をケガしたようだ。その後もフォームがバラバラで戻らないので馬を止めた。血が出てたしね」と横山典は無念の表情。引き揚げてきたときには脚元が血だらけだったが、レントゲン検査などでは骨や腱に異常は見られなかった。西園師は「つまずいたときに自分のトモ脚で左前の蹄球部分をパックリ切ってしまったようです。人気していただけにファンの方には申し訳ないですけど、ジョッキーが早く気づいて止めてくれたので大事には至らなかった」と最悪の事態を免れたことに安どしていた。今後は厩舎で静養し放牧に出される予定。
意地の銀メダルだ。ブルーコンコルドの服部師は引き揚げてきた愛馬の顔を抱くなり、そこに思わず口づけをした。「勝ったよりうれしいよ」。その目には光るものもあった。昨秋の南部杯V以降は精彩を欠いていたが、調整方法を変えるなどして奮起を促した。直線では内に閉じ込められそうになったが、幸の激しい右ステッキに馬群を割った。「まだ全然、大丈夫。やはりマイルがベスト。でも、勝った相手が強かった」と幸。この後は放牧をはさんで、かしわ記念(5月5日・船橋)に向かう。
外から追い上げてきたワイルドワンダー。ヴァーミリアンを懸命に捕まえにいったが、最後は力尽きて3着に敗れた。道中は少し折り合いを欠くシーンも見られたものの、直線では鋭い伸びを見せた。「残り400メートルまで手綱を持ったままだったけどね。それでも勝ちにいっての3着だし、今日は勝った馬が強かった」と岩田は振り返る。「相手が強かったね」と久保田師も感想を漏らした。次はかしわ記念を目指すことになりそうだ。
クワイエットデイは6着。コンビを組んだ角田は「この距離は忙しかった。二千ぐらいなら上を狙える馬ですよ」と健闘をたたえる。GTが調教師人生の最後となった松元省師は「見どころがあったので満足しています。よく頑張ってくれました」と笑顔を見せた。一時代を築いた名伯楽が静かにターフを去る。なおクワイエットデイは松元省師の引退後、栗東・羽月厩舎へ転厩する予定。
ヴァーミリアン…牡6歳。父エルコンドルパサー、母スカーレットレディ(母の父サンデーサイレンス)。馬主・(有)サンデーレーシング。生産者・北海道勇払郡安平町 ノーザンファーム。戦績・22戦11勝(うち地方6戦6勝、海外1戦0勝)。04年ラジオたんぱ杯2歳S、05年浦和記念、06年ダイオライト記念、名古屋グランプリ、07年川崎記念、JBCクラシック、ジャパンカップダート、東京大賞典に続き重賞9勝目。総収得賞金・7億4909万7500円(うち地方3億6000万円、海外3574万8500円)。石坂正調教師は初勝利、武豊騎手は03年ゴールドアリュール、06年カネヒキリに続き3勝目。