2008/4/13 阪神競馬場
▼第68回桜花賞 | |||
1着 | レジネッタ | 小牧 |
1:34.4 |
2着 | エフティマイア | 蛯名 | 1/2 |
3着 | ソーマジック | 後藤 | クビ |
今年は“乱れ桜”だった。12番人気のレジネッタが桜の女王に輝いた。中位を抜群の手応えで追走し、直線で末脚が爆発。小牧太騎手(40)=栗東・フリー=はJRA移籍5年目で涙のG1初制覇となった。2着には15番人気エフティマイア、3着は5番人気のソーマジックと関東馬が健闘。3連単は700万円超えで、クラシック史上最高配当だった。1番人気のトールポピーは8着に終わった。
大外から一気に差しきったレジネッタ、小牧は会心のガッツポーズ=阪神競馬場
【小牧喜び爆発「吐くまで飲む」】
ターフビジョンに配当金が映し出されると、阪神競馬場に大きなどよめきが起こった。クラシック史上最高、3連単700万馬券という大波乱のヒロインは、イタリア語で「若き女王」という意味を持つ12番人気のレジネッタだった。
縦長で平均より速いペースのなか、中団の外々を追走。直線で追い比べになると持ち前の勝負根性に火がついた。一歩、また一歩と力強く差し脚を伸ばし、エフティマイアをきれいに半馬身かわしたところがゴール。桜の女王にエスコートした小牧は右手を高々と上げて、勝利の喜びを爆発させた。人馬ともにうれしいG1初制覇となった。
思わず言葉に詰まった。レース後の記者会見。小牧はあふれ出る涙を抑え切れなかった。「全国のファンの皆さんに…」と言って、タオルで顔を覆った。JRAに移籍して5年目。当初は園田競馬のエースとしてファンや関係者から多くの期待と注目を集めたが、G1は04年朝日杯FSのペールギュント、06年阪神JFのルミナスハーバーによる3着が最高だった。同じ公営競馬出身の安藤勝、岩田の活躍の陰に隠れる日々。「半分、あきらめていた時期もあった。でも、途中から開き直ったよ」。我慢に我慢を重ね、静かにうかがっていたチャンス。通算49回目の挑戦で初めて、1着でゴールを駆け抜けた。
2戦連続のコンビ結成。トライアルのフィリーズレビューでギリギリ3着に入り、桜花賞への優先出走権を獲得した。ゲートに不安があるタイプ。この日も枠内で1度立ち上がったが、それが逆に奏功した。「かえって馬が落ち着いたみたい」。静かにスタートの瞬間を待つことができた。
スムーズに飛び出すと、道中はエネルギーを温存。あとはGOサインを出すタイミングだけだった。「勝ち急がなかったのが、一番の勝因。辛抱するところまで辛抱した。手応え良くスッと抜け出してからは、無我夢中だった」。力を信じて、必死に追った。「伸びたねえ。すっきりと勝たせてくれた。うれしい。きょうは吐くまで飲みたいと思う」と喜びを表現した。
今後は京都府の宇治田原優駿ステーブルで英気を養ってから、オークス(5月25日・東京)へ向かう。「もっと強くなると思う」。脇役から主役へ。小牧とレジネッタが2冠を目指して突き進む。
【浅見師「夢のよう」】
浅見師にとっても、うれしい桜花賞初制覇。「なかなか勝てないレース。夢のようです」と笑顔。04年には2歳女王ヤマニンシュクルで臨み、3着に敗れていただけに喜びもひとしお。取得賞金額は出走メンバーで最低の900万円。トライアルで権利を取らなければ、桜の舞台に立つこともできなかった。「チャンスを生かせたね。(今回は)一部のファンの方は喜んだと思いますが、次のオークスではたくさんのファンの方に喜んでもらいたい」とクラシック連覇を見据えた。
3連単の配当は700万円超え。単勝オッズで10倍を切る支持を集めた人気馬3頭が総崩れで、超大波乱を呼ぶ原因となった。
1番人気の2歳女王トールポピーは8着に敗れた。道中は勝ち馬の直後で運んだが、直線では本来の切れが見られずじまい。「集中していたんだけど、あの馬の脚を使えなかった。マイナス10キロ(の馬体重)も影響しているのか…。残念です」と池添は唇をかみしめた。角居師にとっても馬体減は予想外だった様子だ。「細かった。プラス体重で出られると思っていましたから。失敗ですね。次はオークス。立て直します」と府中の舞台で復権を狙う。
2番人気リトルアマポーラは5着。直線はトールと並ぶ形で、メンバー最速のラスト3F34秒3を記録したが、掲示板に載るのがやっとだった。「ゲートでチャカついて1歩目を出なかった。途中からまくるわけにいかないし、器用さのある馬じゃないから…」と武幸は悔しさをにじませた。
オディールは12着。こちらは見せ場もなく馬群に沈んだ。「いい流れで、いい位置。ただ、4角の反応が悪かった。全然伸びなかった。気合も乗って前走よりも良かったんだけど。分からない」。桜花賞3連覇が夢と散った安藤勝は、首をかしげるしかなかった。
15番人気のエフティマイアが低評価を覆し、あわやというシーンをつくって2着に食い込み波乱を演出した。「暖かくなり馬が良くなっていた。よく頑張ったよ」と蛯名はパートナーをたたえた。
3月に開業したばかりの鹿戸雄師は、「調子は良くなっていたので、ひそかに期待してたんです。負けたけど次につながる内容だったし、ドキドキする競馬ができましたね」と満足げ。また、2月まで管理していた矢野進元調教師も阪神競馬場で観戦。「いいレースをしてくれた。私の手は離れたけど応援してますよ」と笑顔。今後は短期放牧のあと、オークスへ向かう公算が高い。
3着には5番人気ソーマジックが追い込んだ。後藤は「理想的なレースができました。馬がいい方へいってくれてますね」と成長ぶりに目を細めた。次はオークスで金メダルを狙う。
今年の桜花賞は上位3頭が12、15、5番人気による決着で、3連単の払い戻しは700万2920円。これはクラシック史上最高配当だった。G1史上では、昨年のNHKマイルC(1着ピンクカメオ)の3連単973万9870円がトップ。レジネッタもピンクカメオも、ともにフレンチデピュティ産駒だった。なお桜花賞の馬連(19万6630円)と馬単(33万4440円)の配当もG1史上最高となった。
レジネッタ 牝3歳。父フレンチデピュティ、母アスペンリーフ(母の父サンデーサイレンス)。馬主・(有)社台レースホース。生産者・新冠 追分ファーム。戦績・7戦3勝。重賞初勝利。総収得賞金・150、146、000円。浅見秀一調教師、小牧太騎手はともに初勝利。