2008/5/18 東京競馬場
▼第3回ヴィクトリアマイル | |||
1着 | エイジアンウインズ | 藤田 | 1:33.7 |
2着 | ウオッカ | 武豊 | 3/4 |
3着 | ブルーメンブラット | 藤岡 | ハナ |
藤田騎乗で5番人気の上がり馬エイジアンウインズが“ダービー馬”の追撃を振り切り、3連勝でG1初制覇を飾った。藤原英師もうれしいG1初V。ダイワスカーレットが不在だったとはいえ、今春の古馬牝馬の頂点に立ったのは事実。今後は中距離も含めた牝馬G1の“完全制覇”を目指していく。ドバイ帰りの1番人気ウオッカは3/4馬身差の2着。3着にはブルーメンブラットが入った。
エイジアンウインズでヴィクトリアマイルを制しガッツポーズを決める藤田(左は2着に敗れたウオッカ)=東京競馬場
風速MAXで、馬群を突き抜けた。エイジアンウインズが府中のゴール板を先頭で駆け抜けた。
ハナに行くだろう。そんな大方の予想を裏切り好位で脚をためた。そして、スペースがあくのを待った。抜け出すと、はじけるように先頭へ。ウオッカの追撃を振り切り、今春の古馬牝馬の頂点を極めた。「ウオッカを負かすまで力をつけたんだ、とビックリした」と初騎乗の藤田は声を弾ませた。藤原英師にとってはG1初制覇。これまで2着2回、3着4回とわずかに及ばなかった夢がかなった。「感慨深く、本当にうれしい」と笑顔を見せた。
04年セレクトセールで、1890万円で取引された“原石”だった。「生まれた時から期待していた。いい馬だったからセリで本当に落とせるか不安だったけどね。良かったところ?インスピレーションだね」。期待馬だからこそ、無理をさせなかった。トライアルを除外された時点で、桜花賞を断念。成長を促した。「ヴィクトリアマイルのために練習してきた」。一目ぼれした牝馬は、ダイヤモンド級の輝きを放った。
「ウオッカがいたし、どうねじ伏せるかを考えていた」。打倒ダービー馬を掲げる熱い思いから、トレーナーは自然と体が動いた。レース前日夕方には馬場へ出て、スタート地点から自らの足で芝の状態を確かめた。「今回は藤田と長めに作戦を練った。馬場が気になったし、入念にやった」と指揮官は勝因を挙げる。
藤田は藤原英厩舎の主戦ジョッキー。厩舎のG1勝ちは自分の手でとの思いが強かった。「この勝利は格別やな」。信頼関係が好騎乗につながった。「絶対ハナには行きたくなかった。普段、先生からは乗り方を指示されたことはない。でも、前日に汗だくになって調整ルームまできたんだ。“伸二、あそこは避けよう”って。だから意地でも動かなかった。枠通りに回ってきた」と振り返った。
今後は牝馬同士のレースから選択する。「年も若いし、マイルもこなした。常に頂点を目指して頑張りたい。これからは距離が延びるし、そういう調整をしたい」と指揮官。マイルだけじゃない。中距離も含めた牝馬G1の“完全制覇”へ―。風がさらに勢いを増す。
ユタカ「勝たなければ…」
直線半ば、満を持して追い出しを図った武豊のゴーサインにウオッカが鋭く反応する。先に抜け出した2頭を外からのみ込む勢いだ。しかし、馬体を併せにかかった瞬間に、勢いが止まった。ゴール前では勝ち馬と脚色が同じに。精いっぱいの銀メダルだった。
「伸びかけて止まる競馬が続いていたので、ギリギリまで追い出しを我慢した。反応は良かったけど…。まだ本当の状態ではないのかな」。首をかしげたユタカは「このメンバーでは勝たなければいけなかった」と唇をかみしめた。
ドバイ遠征から2カ月足らず。この日は過去最低体重の478キロでの出走となった。「栗東に帰って2週間で仕上げなければならなかった。それでも状態は良かったと思う」と角居師は話したが、準備期間不足だったのは間違いない。「またか!の調教師ですね。次走に関しては乗り役さんの都合もあるので未定です」。重賞での人気馬背信の続く厩舎の現状を自虐的に表現したトレーナーは、無念の表情で競馬場を後にした。
ラスト1Fでいったん先頭に立ったブルーメンブラットだったが、ゴール前で2頭にかわされ3着に惜敗した。好位を追走し、4角もロスなく内を突いてきたが、最後に力尽きてしまった。「やったと思ったけどね。坂を上がったところで勢いが止まってしまった」と後藤。2着ウオッカとは鼻差のレースに「この馬にとってはいい競馬ができたと思う」と、結果を前向きに受け止めていた。
エイジアンウインズ 牝4歳。父フジキセキ、母サクラサク2(母の父デインヒル)。馬主・太田美實氏。生産者・北海道千歳市 社台ファーム。戦績・11戦6勝。重賞・08年阪神牝馬Sに続き2勝目。総収得賞金・213、559、000円。藤原英昭調教師、藤田伸二騎手はともに初勝利。