宝塚記念

会心デピュティ
逃げ切った

2008/6/29 阪神競馬場

▼第49回宝塚記念
1着 エイシンデピュティ 内田 2:15.3
2着 メイショウサムソン 武豊 アタマ
3着 インティライミ 佐藤 クビ

 遅咲きの6歳馬エイシンデピュティが、待望のG1初制覇を成し遂げた。ハナに立ち自分の形に持ち込み、ゴール前ではメイショウサムソン、インティライミの追撃を振り切った。夏は休養。秋は天皇賞(11月2日・東京)、ジャパンC(11月30日・東京)、有馬記念(12月28日・中山)を目指す。野元師は91年エリザベス女王杯のリンデンリリー以来、17年ぶり2勝目のG1。内田博はJRAに移籍後、初めてのビッグタイトルを手にした。

エイシンデピュティ(手前)と2着メイショウサムソン(奥)、3着インティライミ(左)


宝塚記念を制したエイシンデピュティ(手前)と2着メイショウサムソン(奥)、3着インティライミ(左)

雨中の激戦 頭さ制す


【初コンビ&初距離不安吹き飛ばした】

 最後まで先頭は譲らなかった。エイシンデピュティは自分の形に持ち込むと、降りしきる雨、重たい馬場にも苦しむことなく、13頭を引き連れて、気持ちよさそうにマイペースで進む。直線に入ると後続馬が襲いかかる。左ムチを連打されながら、懸命に食いしばった。メイショウサムソンの追撃を頭差封じ込み、ゴール板を駆け抜けた。

 いつかは頂点に立つと信じていた。野元師が「G1を取れる馬だと思った」と手応えをつかんだのは、大阪杯での2着だった。ダイワスカーレットには及ばなかったものの、アサクサキングス、メイショウサムソンなどG1馬に先着。「今までにないしぶとさ。たくましくなった」と、“負けて強し”の内容に目を見張った。今回は期待を胸に秘めての参戦だった。
 不安は2点あったが、無用の心配だった。二千二百メートルの距離、代打騎乗になる内田博とのコンビがともに初めて。「いかにうまくレースができるか」と頭を悩ませた。打つべき手はすべて打つ。関東所属の内田博を呼び寄せ、最終追い切りで感触を確かめてもらった。レース前も入念な打ち合わせ。「これで負けたら仕方がない」と振り返る、理想的なレース運びだった。「よく辛抱してくれた」と目を細めた。

 内田博は見事に大役を果たした。陣営が岩田に匹敵するジョッキーとして依頼。「ケイコで引っ掛かる馬ではないし、二千メートルで実績があるので、距離は大丈夫だと思った。ホッとしているし、すごくうれしい」。ゴールまで無我夢中だった。引き揚げて来るとき、ターフビジョンのスローVTRを目にして、「先に出ていた」と勝利を実感した。

 3月にJRA移籍後、初めてのG1制覇。「焦りはなかった。馬を信じて乗っていれば、チャンスは来ると思っていた。それが、きょうでうれしかった」と表情を崩した。ファンの前でバク宙を見せるパフォーマンス。「G1を勝ったらやろうと思っていた」と喜びを爆発させた。

 関東の名手に導かれ、頂点に立ったエイシンデピュティ。今後は岡山県・栄進牧場で夏休み。秋の始動戦は未定だが、野元師は「天皇賞から狙って行きたい」と古馬の王道路線をにらんでいた。昨年の5歳春にオープン入りした、遅咲きのタイトルホルダー。大舞台での活躍はまだまだ続く。

【生産者今村さん感激】

 エイシンデピュティの生産者、北海道浦河の栄進牧場場長・今村明浩さんは、感慨もひとしおといった様子。「平井豊光オーナーに恩返しができました。厩舎のスタッフの皆さんにも感謝したい」と、会心の笑みを浮かべた。地道に力をつけた、晩成の大器。大仕事をやってのけたエイシンデピュティには「6歳になって、G1を勝ってくれるんですからね。頑張ってくれました」と、最大級の賛辞を送っていた。

メイショウサムソン


2着に敗れたメイショウサムソン

    

不運…サムソン頭差2着

【最後のドサクサでアサクサとぶつかった…】

 不利さえなければ…。メイショウサムソン陣営の口を突いて出るのは、悔しさを表す言葉ばかりだった。最後の直線、突き抜けようかという手応えでVロードが見えた瞬間、不運が襲った。外によれたアサクサキングスと馬体がぶつかり一瞬、ガクンとトモを落とした。そこからまた伸びたものの、逃げていたエイシンデピュティを捕らえきれず2着。差はわずか頭差だった。

 「いやあ、残念。もうちょっとだったんだけど…。見ての通りです。着差が着差だけに悔しいね。ホント、残念」。ユタカは同じ言葉を重ねることで、無念さを表現した。高橋成師も「アサクサにぶつけられたことがすべて」と語気を荒くした。勝って凱旋門賞に向かう予定だったが、松本オーナーは「ゆっくり考えます」と明言を避けた。力負けではないだけに、サムソン陣営にとっては後味の悪いレースとなった。

アサクサキングス   伸びあぐね5着

 初の古馬G1奪取を目指していた昨年の菊花賞馬アサクサキングスは、直線伸びあぐねて5着。雨でぬかるんだ馬場に苦しめられ、あとひと踏ん張りが利かなかった。四位は「前々でいい感じで運べたけど、道悪は良くない。最後は一杯一杯になって、ふらついていた」とタフな馬場状態を悔やんだ。最後の直線ではインティライミに接触し、審議の対象に。「迷惑をかけた。申し訳ないことをした」と肩を落としていた。


インティライミ   不利で惜敗3着

 内々で流れに乗ったインティライミ。理想通りの最内枠を引き当て、直線に向くまでは鞍上の思惑通り。だが、外のアサクサキングスに寄られて、スムーズさを欠く格好に…。盛り返して1、2着馬と接戦を演じただけに、惜しい3着だった「馬は上手に走ってくれた。勝負駆けしたけど、仕方ない」と、振り返る佐藤哲。「去年の宝塚記念でも不利があったから」と佐々木晶師も悔しそうだった。


ロックドゥカンブ   左後繋じん帯断裂

 逃げた勝ち馬をぴたりとマークしていたロックドゥカンブだが、直線で失速して12着に惨敗。レース後、岩田は「馬場を気にして走っていたし、左トモがおかしかった。ひどくなければいいんだけど」と心配していたが、左後繋じん帯断裂と診断された。宝塚記念のあと、予定していたキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(7月26日・アスコット)への出走は事実上、不可能に。夢は無残に散った。

エイシンデピュティ…牡6歳。父フレンチデピュティ、母エイシンマッカレン(母の父ウッドマン)。馬主・平井豊光氏。生産者・浦河 栄進牧場。戦績・27戦10勝。重賞4勝目。総収得賞金・441、045、000円。07年エプソムC、08年京都金杯、08年金鯱賞。野元昭調教師、内田博幸騎手ともに初勝利。

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