2008/10/19 京都競馬場
▼第13回秋華賞 | |||
1着 | ブラックエンブレム | 岩田 | 1:58.4 |
2着 | ムードインディゴ | 福永 | 1/2 |
3着 | プロヴィナージュ | 佐藤 | 1/2 |
本番で鮮やかな変わり身を見せた。トライアル・ローズSで15着に大敗した関東馬ブラックエンブレムが、伸びあぐねる人気馬を尻目に内から抜け出して快勝。小島茂之調教師(40)=美浦=は、うれしいG1初制覇。関西馬のG1連勝は12でストップした。2着に追い込んだムードインディゴ、3着に16番人気プロヴィナージュが粘って、3連単はJRA重賞歴代最高配当の大波乱決着。また、新人年間最多勝の新記録を目指した三浦皇成騎手(18)=美浦・河野=は京都で未勝利に終わり、記録更新はまたも持ち越しとなった。
秋華賞を制したブラックエンブレム(右)、2着ムードインディゴ(奥)、3着プロヴィナージュ(左)=京都競馬場
【前走15着】
道悪に泣いたトライアルのローズS15着からミラクル大逆転。完ぺきなレース運びで、3歳牝馬最後の1冠をブラックエンブレムがもぎ取った。
エアパスカルがハナを切り、僚馬プロヴィナージュが続く流れ。内々の6、7番手で折り合いをつける。「内枠だったからね。(重馬場だった)前走とは違って、きょうはパンパンの良馬場だったのでスムーズに行けた」と岩田。ペースが上がった3角過ぎでも動かず末脚を温存。「3角で息が入ったし、4角でグンと伸びてくれた」。直線に入ってポッカリと開いた最内へ。こん身の力で手綱を押すと、必死に粘り込むプロヴィナージュをかわし、外から猛然と追い込んだムードインディゴを半馬身封じて待望のゴールへ真っ先に飛び込んだ。
【年間100勝】
14日に髪の毛を刈り、きれいな丸刈りになった岩田。「心機一転。気持ちを切り替えて」と恥ずかしそうに頭をなでた。天皇賞・春、安田記念に続いて今年3つ目のG1制覇となり、同時に自身3回目となる年間100勝も達成。「オーナーも調教師も初めてのG1。プレゼントできて良かった」と白い歯を見せた。
田原邦男オーナーはトレーナーと同い年の40歳。馬主になって7年目でのG1タイトル。ブラックエンブレムの異父姉ロイヤールハントを初めてのセレクトセールで購買したが、2戦目のレース中に心臓マヒを起こしてこの世を去った。その代わりにと紹介されたのがブラックエンブレムだった。「そのセールで小島茂師と知り合ったんです。夢のようですね。きょうは(7Rで)ヘルバーストも勝ってくれたしビックリしました」と静かな口調で喜びをかみしめた。
「牝馬らしくカッとするところもあるけど、穏やかな面も持っている。これからまた力をつけてくれると思うし、楽しみ」と岩田。その明るい未来に名手が太鼓判を押した。
【小島茂師】
開業6年目G1初勝利 開業6年目でG1トレーナーの仲間入りを果たした小島茂師。今年の平地G1で関東に初の勝利をもたらす殊勲星を挙げた。春の桜花賞に続き、今回は8頭を引き連れてローズSの前から栗東で調整。僚馬プロヴィナージュも3着に粘ったが、その出否には大いに悩んだ。「G1なので変な状態では出せない。だけど、スタッフが頑張ってくれて信じられないほど良くなった。勝ったブラックはもちろんだけど、3着に頑張ってくれた方がうれしい」とホッとした表情を浮かべた。今後はいったん全馬が美浦へ帰厩。「(ブラックエンブレムは)エリザベス女王杯も含めて、様子を見ながら決めたい」と語った。
(上)3連単の払い戻し金が1000万円超えを表示するターフビジョン=京都競馬場(撮影・松井愛子)
(下)JRA重賞史上最高となる1098万2020円の配当を記録した秋華賞の3連勝単式の当たり馬券
配当を伝えるアナウンスに、京都競馬場に詰めかけたファンから、大きなどよめきが起こった。3連単の的中票数は全国でわずか410票。人気馬が崩れ、1098万2020円の超高額配当が飛び出した。4896通り中4275番人気。JRA史上3位の記録で、重賞でも07年NHKマイルCの973万9870円を上回る歴代1位だ。
単勝3・6倍と1番人気のオークス馬トールポピーは10着。道中は中団で運んだが、直線ではじけなかった。池添は「スタートもちゃんと出てくれたし、いい位置で競馬ができた。外から2着馬が来たときに一瞬、反応してくれたけど、そこから伸びなかった」と残念そうに振り返った。
2番人気の桜花賞馬レジネッタは8着。後方でじっくりと脚をためたが、確実に伸びる、いつものような末脚が今回は不発。小牧は「3角で少し接触したけど、レースの流れは絶好で理想の形だった。さあ、行こうというときに、いつもは自分から動くけど、ムチを叩いて直線に入った。それでゴール前は伸びなかったのかな」と首をかしげた。
春に主役を演じたG1馬2頭は、本来の走りを見せることなく終わり、3歳牝馬ラスト1冠は大波乱の幕切れとなった。
2度目のG1騎乗となった三浦。自厩舎のアロマキャンドルで後方待機策に出たが見せ場をつくれず16着。また、この日は8鞍に騎乗するも未勝利で、またも新人年間最多勝記録の更新はならなかった。「(初めての京都コースは)乗りやすかったです。まだまだ勉強しないといけないと思ったし、いい刺激になりました」。次週は土日とも福島で騎乗。「福島にもたくさんのファンがいますから。いい結果を出せるように頑張ります」と気持ちを切り替えていた。
初重賞勝ちを決めた関東オークス以来の武豊とのコンビで注目を集めた白毛のアイドル・ユキチャンだが結果は17着。白毛のG1制覇は夢に終わった。道中は好位で流れに乗っていたが、ユタカのGOサインに反応する力はなく、直線はズルズルと後退。武豊は「リズム良く行けたけどね。レース自体は悪くなかったと思うが…。芝では限界があるのかもしれない」と、サバサバとした表情でレースを振り返っていた。
ブラックエンブレム…牝3歳。父ウォーエンブレム、母ヴァンドノワール(母の父ヘクタープロテクター)。馬主・田原邦男氏。生産者・安平 ノーザンファーム。戦績・9戦4勝。08年フラワーCに続き重賞2勝目。総収得賞金・164、343、000円。小島茂之調教師、岩田康誠騎手ともに初勝利。