菊花賞

乱菊制した
剛健ブルースリ

2008/10/26 京都競馬場

▼第69回菊花賞
1着 オウケンブルースリ 内田 3:5.7
2着 フローテーション 藤岡 1 1/4
3着 ナムラクレセント 和田 1 1/2

 自慢の豪脚で“乱菊”を制圧した。1番人気オウケンブルースリが、外々を回って他馬をねじ伏せる堂々の内容でG1初制覇。4月のデビューからわずか184日目で大輪の花を咲かせた。内田博も菊花賞初騎乗でうれしいクラシック初V。次戦はジャパンC(11月30日・東京)で国内外の強豪に立ち向かう。2着に15番人気フローテーションが強襲し、3着は9番人気ナムラクレセントで3連単は52万円馬券となった。

オウケンブルースリ


大きなガッツポーズで菊の大輪を咲かせた内田博とオウケンブルースリ=京都競馬場

1馬身1/4差完勝劇

G前突き放す


 ヌンチャクはなくても、息の長い末脚がある。G1馬が不在で“乱菊”と称された3歳牡馬3冠の最終決戦、オウケンブルースリが1番人気に応えて主役を見事に演じ切った。2周目3―4角の勝負どころ、下り坂からロングスパートすると、最後まで脚勢は鈍らない。肉薄するフローテーションを“格が違う”と言わんばかりにゴール前で突き放した。1馬身1/4差の完勝劇はまさしく独り舞台だった。

 ゴールの瞬間、内田博は左手を高々と上げて喜びを爆発させた。JRAのG1は3勝目だが、クラシック制覇は12回目の挑戦で初めて。「いい形で獲れてホッとしています」と笑みを浮かべた。人気の重圧を、逆に発奮材料とした。「この馬の強さを見せられて良かった。1番人気で大きなレースを勝てなければ、ジョッキーとして成長していかない。これをきっかけに活躍したい」と胸を張った。

 前走の神戸新聞杯は位置取りが後ろ過ぎて、直線だけの競馬で3着。本番の今回は直線が平たんなコース設定を踏まえて積極的に運んだ。スタートから手綱を押して中団につけ、馬との呼吸を合わせた。3角過ぎから徐々に進出。先行集団を完全に射程圏に捕らえて直線に向かい、外から豪快に伸び切った。「京都は後方一気が難しい。(坂の)下りでうまく加速してくれたし、持ち味を生かせた」と満足そうに振り返った。

 音無師も感無量だ。4月26日のデビューから184日目での菊花賞制覇は、2歳戦がスタートした46年以降では最短のキャリア。6月の未勝利戦から一気に3連勝。新潟で1000万特別を勝って、菊花賞を強く意識した。「出たら面白いと思った。どうしても出したかったし、最高にうれしい」と声を弾ませた。喜びの理由は、勝利という結果だけではない。「いつもしまいは必ずいい末脚を使うけど、別の持ち味が出た。自在に立ち回っても走れることを確信した」と、ひと皮むけた姿が頼もしい。

 次の目標はJC。「東京コースは合うと思う。(神戸新聞杯で打ち負かされた)ディープスカイと同じ舞台でやりたい」とトレーナーは、同世代の2冠馬に挑戦状をたたきつけた。国内外の強豪が集う舞台は、ジャングルポケットとの父子制覇もかかる。ブルースリが、新たな野望に燃えている。

【空手道場経営オーナーはウチョ〜天】

 馬主になって11年目。福井明オーナー(45)=左から3人目=は歓喜のレース後、「重賞を勝つどころか(G1に)出ることすら初めて」と興奮を抑え切れない表情を見せた。商品デザインを主とするクリエイターで、伝説のアクションスター・ブルースリーの大ファン。空手好きが高じて「桜拳塾」を経営するほどだ。オウケンブルースリの馬名は「セレクトセールで初めて競り落とした馬につけようと思っていた」。まさに会心の命名で、喜びはひとしお。「音無先生にお任せしていた。信じるだけでした」とG1制覇の余韻に浸っていた。
 

アントニオ猪木(右)と内田博(左)


アントニオ猪木(右)と握手する内田博(左)=京都競馬場

    

フローテーション2着   15番人気

 15番人気の評価に反発した。フローテーションがゴール前でオウケンブルースリに一瞬詰め寄る大健闘。馬体が絞れて見事な変わり身を見せた。藤岡佑は「1回叩いて良くなっていたし、きょうは落ち着いていた。距離が延びたのも良かったんでしょう」と冷静に振り返った。それでも「あそこまでいったら勝ちたかった。情けない…」と無念の表情。大魚を逸して笑顔は見られなかった。
    

ナムラクレセント3着   9番人気

 初重賞勝ちを決めた関東オークス以来の武豊とのコンビで注目を集めた白毛のアイドル・ユキチャンだが結果は17着。白毛のG1制覇は夢に終わった。道中は好位で流れに乗っていたが、ユタカのGOサインに反応する力はなく、直線はズルズルと後退。武豊は「リズム良く行けたけどね。レース自体は悪くなかったと思うが…。芝では限界があるのかもしれない」と、サバサバとした表情でレースを振り返っていた。


マイネルチャールズ5着   2番人気

 ラスト1冠奪取の夢はかなわず。2番人気マイネルチャールズは直線で伸びあぐねて勝ち馬から0秒8差の5着。皐月賞3着、ダービー4着の雪辱は果たせなかった。稲葉師は「よく走ってくれているよ」とねぎらったが、松岡は「負けたんじゃ駄目」と悔しさをあらわにした。それでも「菊花賞は距離が長い。中距離なら大きなところでチャンスがあると思う」と今後の巻き返しを誓っていた。

オウケンブルースリ…牡3歳。父ジャングルポケット、母シルバージョイ(母の父シルヴァーデピュティ)。馬主・福井明氏。生産・北海道安平町 ノーザンファーム。戦績・7戦4勝。重賞初勝利。総収得賞金・201、753、000円。音無秀孝調教師、内田博幸騎手ともに初勝利。

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