2008/12/14 阪神競馬場
▼第60回阪神ジュベナイルF | |||
1着 | ブエナビスタ | 安藤 | 1:35.2 |
2着 | ダノンベルベール | 後藤 | 2 1/2 |
3着 | ミクロコスモス | 鮫島 | 1 1/4 |
異次元の強さだ。道中は後方を進んだブエナビスタが、直線楽々と抜け出して圧勝。見事1番人気に応えた。母ビワハイジは95年のこのレースの優勝馬で、JRA史上5組目の母子同一G1制覇を成し遂げた。安藤勝もJRAに移籍した03年から6年連続のG1勝利。2着には3番人気ダノンベルベール、3着には4番人気のミクロコスモスが入り、順当な結果に収まった。
阪神JFを制したブエナビスタ(中央)。左は2着ダノンベルベール
直線一気 役者が一枚も二枚も上だった。ブエナビスタは楽な手応えで直線に向くと一気にはじけた。早々と抜け出すと、最後は軽く流す余裕。終始、外を回りながら、全く危なげない勝利を飾った。時計のかかる馬場でも、軽やかなフットワーク。異次元の走り、規格外の瞬発力に、安藤勝も「過去2回は内枠で外に出すのに苦労したけど、外枠で競馬がしやすかった。余裕で上がっていったし、抜け出すのは少し早かったけど思った通り強い馬。ほかの馬と脚が違ったね」と絶賛した。
勝利の女神はレース前からほほ笑んでいた。抽選は17分の6の狭き門。安藤勝は「ここで入らなくても、そのうちG1を勝つだろう」と能力の高さを確信していたが、無事に抽選を通過した。デビュー戦から感じていた超一級品の素材。「女の子の割におっとりして、ゲートを出て行かないけど、エンジンがかかってからの脚はすごい」。数々の名馬の背中を知る名手が、驚きの表情を見せる。終わってみれば、出走することが最大の関門だった。
松田博師も自信を持って送り出した。「包まれなかったらいいと思っていた。馬なりで上がっていたし、安心して見ていました」。瞬発力ならどの馬にも負けない。兄アドマイヤジャパン、アドマイヤオーラのような“切れ味”を、期待通りに発揮した。
レース後の検量室。ジェルミナルで6着に敗れた福永から「先生、牡馬の3歳路線に行けば」と声を掛けられると、松田博師は「追加登録料を払ってくれたらな」とジョークで返した。実際に済ませている第1回のクラシック登録は牝馬路線のみだが、今年の2歳女王は、それほど周囲に一目置かれる存在になった。
陣営は来年に向けて大きな期待を抱いている。安藤勝は「牝馬としては抜けている。とにかく無事にクラシックへ行ってほしい。切れる脚があるのでマイルでも大丈夫だし、二千四百メートルもマイナスにならないでしょう」と胸を躍らせている。千両賞で手綱を取ったリーチザクラウンと比較しながら、「あの馬も乗ってすごいが、自分の乗った中ではすごいね」と底知れぬ力を感じていた。
クラシック戦線も主役の座は譲る気はない。松田博師はタイトル総なめに意欲を見せた。「今後は馬の状態によって決めるだけ。距離は長いところを使いたい。いくらでも伸びた方がいいし、馬も楽だと思う。獲れるものなら、全部獲りたいね」。圧倒的強さを見せた2歳女王の快進撃はまだまだ続く。
【ノーザンF連覇】
昨年のトールポピーに続いて阪神JF連覇となった生産者のノーザンファーム。これで今年G19勝目となり、05年に同牧場が記録したG1最多記録に並んだ。「ブエナビスタは2歳夏にピッチを上げて、秋以降にデビュー予定だったけど、期待以上のレースでした」と事務局の薦田英樹氏。今年G13勝目の(有)サンデーレーシングの代表・吉田俊介氏も「なかなか出てこないくらいの馬」と絶賛。来春へ期待は膨らむ一方だ。
勝ち馬に脱帽 栗東に滞在して調整した関東馬ダノンベルベールが2着。中団待機から直線抜け出す理想的な競馬だったが、相手が悪かった。「今持っているすべてを出せたと思います。悔しさが芽生えないほど強いですね」と後藤は勝ち馬の強さにあきれ顔。一方、国枝師は対照的に「今後グンと良くなって、来年は逆転まで」とクラシックでの再戦に意欲。来春については「どこか1回使って桜花賞(4月12日・阪神)へ」と話した。
先輩に続けず “チーム角居”の3連覇達成はならなかった。一昨年のウオッカ、昨年のトールポピーに続けと抽選突破からVを目指したミクロコスモスは3着。後方追走から上がり3Fはメンバー2位の35秒2を記録したが、上位2頭には及ばなかった。「勝ち馬を見ながら運んだけど、勝負どころで一瞬にして離されてしまった」と鮫島。だが、完敗の内容にも「休み明けでテンションが高かったからね。落ち着きが出てくればG1でもいい勝負になる」と素質を高く評価していた。
福永がっくり 2番人気のジェルミナルは直線伸びあぐねて6着に敗れた。道中は好位の外めを追走し、4角では先頭をうかがう勢い。だが前半で脚を使った分、最後はスタミナが切れてしまった。引き揚げてきた福永は「こういう(スローな)流れになるとは思っていた。外枠だったので自分から動いて行ったが、その分、最後はきつくなった。馬の雰囲気は良かったけど…」とがっくり。距離については「マイルは短いかな」と話した。
ブエナビスタ…牝2歳。父スペシャルウィーク、母ビワハイジ(母の父カーリアン)。馬主・(有)サンデーレーシング。生産者・北海道早来 ノーザンファーム。戦績・3戦2勝。重賞初勝利。総収得賞金68、088、000円。松田博資調教師、安藤勝己騎手ともに初勝利。