朝日杯FS・G1

満開ローズ

2歳キング

2009/12/20 中山競馬場

▼第61回朝日杯FS
1着 ローズキングダム 小牧太 1:34.0
2着 エイシンアポロン 池添謙一 1 1/4
3着 ダイワバーバリアン 蛯名正義

 ついにバラ一族からG1馬が誕生した。1番人気ローズキングダムが、一族の武器である瞬発力を発揮し完勝。無傷3連勝で2歳王者に輝いた。小牧、橋口師、馬主のサンデーレーシングは、1番人気で3着に敗れた04年ペールギュントの雪辱を果たした。2着は2番人気のエイシンアポロンで、3着には5番人気のダイワバーバリアンが入った。

写真・ローズキングダム

朝日杯FSを制したローズキングダムと鞍上でガッツポーズの小牧

 

完勝無傷3連勝

涙はダービーで

 

 役者が違った。ローズキングダムは自慢の切れ味で先に抜け出したエイシンアポロンを捕らえると、一気に後続馬を突き放す。まさに完勝。力でねじ伏せて、無敗で2歳王者に輝いた。
 
 好スタートからスッと中団に下げて、小牧は仕掛けるタイミングを待った。4角から徐々に進出しゴーサインを出すと、あとはゴールを目指すだけ。「自分の馬が一番強いと思って乗った。いつでも先頭に立てる感じだった」。自信に満ちあふれた表情で主戦は振り返る。

 母ローズバド、祖母はロゼカラー。重賞覇者が並ぶ“バラ一族”だが、母の2着3回をはじめ、G1には手が届かなかった。「何としても大きな勲章がほしかった」と橋口師。小柄な体形、馬群にもひるまない根性と瞬発力、母から受け継いだ能力で見事に師の願いをかなえた。
 

 レース前に、師はデイリー杯2歳Sの覇者リディルを見舞った。有力候補に名を連ねながら骨折。無事なら同じ舞台に立つはずだった。「診療所に入院しているので、応援してくれよと言ってきた」と話した。

 

小牧にとっては忘れ物を取り返す、リベンジの舞台だった。中央へ移籍した04年、同じ橋口厩舎のペールギュントで参戦、1番人気で3着に終わった。「脚を余したレースをして悪い面が目立った。あそこから運が下がった」。園田のエースとして君臨した男のプライドは傷つき、騎乗にも迷いが出る日々。ペールギュントの背中を譲っただけでなく、結果を残せずに悪循環へと陥った。それでも、昨年の桜花賞(レジネッタ)でG1初制覇を決めると、今年はこの勝利で自己最高の年間重賞8勝目。「G1を勝ってから気持ちが楽になった。ケガもないし、力まずに乗っている」。輝きを取り戻した42歳のベテランの表情が緩む。

 

 来年、キングダムは皐月賞トライアルからの始動を予定する。「こんなに素晴らしい馬にまたがることができ、すごくうれしい。一戦一戦取りこぼさないで、ダービーに行きたい。涙はダービーまで取っておきます」と小牧。府中の頂上決戦は、橋口師にとっても悲願のタイトルだ。2歳王者から真の王者へ。王道を突き進み、大きなバラを咲かせ続ける。

 

 



写真・小牧

ローズキングダムの馬上で高々と右腕を掲げる小牧


【“キンカメ旋風”に吉田勝己氏ご満悦 】


 生産者のノーザンファーム代表・吉田勝己氏は「見栄えは大したことがないのに、すごい脚を使う。先週(阪神JF=アパパネ)に続いて“キンカメ旋風”だな」と、牡牝の2歳王者を輩出した父キングカメハメハの偉業をたたえた。母ローズバドは現在、ジャングルポケットの子を受胎中。ひとつ下の世代はいないが、当歳にはシンボリクリスエス産駒がいる。


【平尾さん大興奮“悲願G1初V” 】

 

 一口馬主(40分の1)である作曲家の平尾昌晃さん(71)は、自身の“G1初制覇”に興奮気味だった。以前はスーパーミヨチャンなどを個人所有していたが、約3年前に社台サラブレッドクラブの会員に。この日は仲間の作曲家のパーティーがあり競馬場で観戦できなかったが「強かったね。(母の)ローズバドが好きで購入したんだ。ダービーへ向けて頑張ってほしい」と声を弾ませた。

 

 

 

エイシンアポロン 2着も悔し〜


 鞍上が「完ぺき!」と振り返る2着だった。先行馬の直後で流れに乗った2番人気エイシンアポロンだが、最後は勝ち馬の決め手に屈した。「位置取りもイメージ通り。直線もしっかり伸びてくれた。状態が良かっただけに悔しい」とは池添。「強い競馬はした。今後は距離を延ばして、クラシックに向かいたい。まだまだ伸びしろはある」と岡田師は前を向いた。


ダイワバーバリアン 価値ある3着  

 

 価値のある3着だ。好位からしぶとく伸びて、5番人気のダイワバーバリアンが銅メダルを獲得した。蛯名は「上位2頭が強かった。現状では力を出し切ったよ」と納得の表情。先着を許した2頭が重賞覇者だったことを考えれば、上々と言える。「馬がまじめで、ハミをくわえたがるところがある。それが解消されれば」と課題を挙げながらも次に期待していた。

 

ファントム 14着大敗

レース中に右前浅屈腱不全断裂…  


 3番人気のトーセンファントムは14着に大敗。「コーナーで外に逃げ出して、無理をしていないのに直線でも苦しがっていたからおかしいなと思ったら、バランスを崩して。“パンッ”と音がしたけど、止めようとしても止めることはできなかった」と内田博は唇をかむ。診断は右前浅屈腱不全断裂の重傷。正式な発表はされていないが、戦列復帰は厳しい状況だ。



 

ローズキングダム…牡2歳。父キングカメハメハ、母ローズバド(母の父サンデーサイレンス)。馬主・(有)サンデーレーシング。生産者・北海道安平町 ノーザンファーム。戦績・3戦3勝。重賞・09年東スポ杯2歳Sに続き2勝目。総収得賞金・103、834、000円。橋口弘次郎調教師、小牧太騎手ともに初勝利。

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