2009/12/27 中山競馬場
▼第54回有馬記念 | |||
1着 | ドリームジャーニー | 池添謙一 | 2:30.0 |
2着 | ブエナビスタ | 横山典弘 | 1/2 |
3着 | エアシェイディ | 後藤浩輝 | 4 |
涙で締めた。09年中央競馬のラストを飾る大一番は、池添騎乗の2番人気ドリームジャーニーがV。自慢の末脚を存分に発揮し、06年ディープインパクト以来、史上9頭目となる同一年春秋グランプリ制覇を決めた。来春は国内専念が濃厚で、京都記念から始動し、春の天皇賞、宝塚記念を目標に据える。なお、牝馬2冠馬ブエナビスタが半馬身差の2着、11番人気のエアシェイディが2年連続で3着に入った。
有馬記念を制し、ドリームジャーニー(右から3頭目)の鞍上でガッツポーズする池添
こみ上げる思いを抑えられなかった。池添はドリームジャーニーにもたれかかり、あふれ出る涙をぬぐおうともしない。3歳馬が注目を浴びた一戦は同時に、古馬の王者として負けられない戦いだった。春秋グランプリ制覇は夢ではなく、至上命題。「絶対に獲るという気持ちで、自分にプレッシャーをかけてきた。本当にうれしい」と勝利の味をかみしめた。
極端な縦長の展開にはならなかったが、リーチザクラウンが引っ張るハイペース。道中は焦ることなく、後方2番手でじっと待機した。「ペースが遅ければ動くことも考えたが、結構流れていると感じた」。自分を、パートナーの力を信じて末脚勝負を決め込んだ。
向正面でスリーロールスが故障するアクシデントに見舞われたが、古馬の精神力で乗り越えた。「ぶつかったが、我慢してくれた」。どっしりと構える相棒の姿に、鞍上も余裕を持って4角を迎えた。「フォゲッタとマツリダを前に見て、内にはブエナも見えた。仕掛けどころさえ間違えないように」。あとはゴーサインを出すだけだった。
直線、中山の急坂など無関係にメンバー最速の上がり3Fで突き進む。「勢いが違った。全部かわせると思った」。矢のような末脚で襲いかかると、最後に残ったのは予想通り、牝馬2冠馬ブエナビスタ。「この馬との勝負だろう、と。でも、しまいは絶対に伸びると信じて乗りました」。思いに応えるように、ジャーニーははじけ、先頭でゴールへと飛び込んだ。
池江寿師も感無量だ。父ステイゴールド、母の父メジロマックイーンは調教助手として過ごした池江郎厩舎の管理馬。ともに、有馬記念で頂点に立つ夢はかなえられなかった。「取り返した。競馬は血のドラマ。その気持ちを大切にしている」と喜びをかみしめる。
来春は国内専念の公算が大きい。例年4月に行われる香港の国際レースには登録する予定だが、師は「4戦に絞って。京都記念(2月20日・京都)から大阪杯(4月4日・阪神)へ向かい、春の天皇賞(5月2日・京都)と宝塚記念(6月27日・阪神)の連覇が目標」と青写真を描く。さらなる頂へ。夢の終着点はまだまだ先にある。
馬上で男泣きする池添
【ブエナと壮絶“ワンツー” 吉田代表「これ以上ない結果」】
ドリームジャーニーの馬主・サンデーレーシング代表の吉田俊介氏は満面の笑み。2着のブエナビスタも同クラブの所有馬で「これ以上ない結果です」と喜んだ。最後は2頭が後続を離し、壮絶な叩き合い。「ジャーニーは自分の競馬をして勝ってくれた。向いているコースだと、本当に強いですね」と春秋グランプリ連覇に誇らしげだった。また、生産者の白老ファーム場長・角田修男氏は「母の父がメジロマックイーン。地味な配合でよくここまで頑張ってくれました」とねぎらいの言葉をかけた。当歳の全弟は開腹手術で誕生。「影響もなく、無事に育っていますよ」と将来の活躍を期待している。
【年度代表馬 ウオッカか ドリジャニか】
ヴィクトリアマイル、安田記念、ジャパンCと年間G13勝のウオッカが優勢と見られていた年度代表馬争い(来年1月6日に決定)は、今回のドリームジャーニーのVで2頭の一騎打ちの様相に。年度代表馬が決定されるようになって以降、同一年の宝塚記念と有馬記念を制覇した馬は92年のメジロパーマー(年度代表馬は2冠馬ミホノブルボン)を除き、4頭中3頭が栄誉を手にしている。G1勝利数、そして強烈な印象を残したJCでの勝利からもウオッカが一歩リードしている印象だが、果たして―。
直線一気の競馬で3着に入ったのは、8歳馬エアシェイディ。道中は最後方を追走し、直線勝負で昨年と同じく銅メダルを獲得した。後藤は「この馬の感性を信じて乗った。3コーナーからドリームを目標にしたが、最後はいい伸びを見せてくれた」と満足顔。伊藤正師も「きょうは全力を出してくれた。来年はもっと強い馬にしたい」と現役続行に意欲を見せた。
結果は4着。それでもフォゲッタブルの前途は洋々と言えるだろう。この秋に急激な飛躍を遂げた超良血馬が、不利とされる大外枠から歴戦の古馬と堂々と渡り合った。
後方3番手から勝負どころで徐々に進出。最後までエアシェイディと3着争いを演じた。「スタートのスピードがなくてあの位置になったが、リズム良く走れた。ただ、坂を登って半分のところで馬が疲れてしまった」とルメールは振り返る。
母はエアグルーヴ。注目を浴び、今年1月にデビューした。夏までは1000万クラスをウロウロしていたが、この成長曲線は驚異的だ。「ここまでやってくれたんだから。来年だよ、来年。春を楽しみにしていて」。完成は来春とにらんでいる池江郎師は、敗戦のなかで大きな手応えをつかんだ。
「いい位置が取れたし、ブエナの後ろでレースはしやすかった」(三浦)
「テンションは高かったが、返し馬では落ち着いていた。素質はあるので、体に幅が出てくれば」(浜中)
ドリームジャーニー…牡5歳。父ステイゴールド、母オリエンタルアート(母の父メジロマックイーン)。馬主・(有)サンデーレーシング。生産者・北海道白老町 (有)社台コーポレーション白老ファーム。戦績・24戦9勝。重賞・06年朝日杯FS、07年神戸新聞杯、08年小倉記念、朝日CC、09年大阪杯、宝塚記念に続き7勝目。総収得賞金・769、511、000円。池江泰寿調教師、池添謙一騎手ともに初勝利。