2009/2/22 東京競馬場
▼第26回フェブラリーS | |||
1着 | サクセスブロッケン | 内田博幸 | 1:34.6 |
2着 | カジノドライブ | 安藤勝己 | クビ |
3着 | カネヒキリ | ルメール | アタマ |
ついに2強の壁をぶち破った。6番人気の4歳馬サクセスブロッケンが、好位追走から直線の叩き合いを制してV。高くそびえ立っていた7歳の2強・カネヒキリ、ヴァーミリアンの牙城を崩し、ダート界の頂点を極めた。勝ち時計の1分34秒6はコースレコード。2着にも4歳馬カジノドライヴが入線し、世代交代をアピールした。1番人気カネヒキリは直線内から猛追したが3着まで。2番人気ヴァーミリアンは直線伸びを欠いて6着に敗れた。
カジノドライヴを首差で破りフェブラリーSを制したサクセスブロッケンと内田博
幾度も跳ね返され続けてきた“7歳2強”の牙城。5回目のチャレンジで、4歳馬サクセスブロッケンがついに分厚い壁を突き破った。「強い馬がそろっているので、正直どれぐらい食らいつけるか、と思っていた。最後は馬の力ですね。感謝しています」。今年最初のG1をゲット。内田博は高らかに右手を挙げ、ファンの声援に応えた。
脚抜きのいい、スピード優先の馬場状態。終わってみれば、4角5番手以内の面々が掲示板を独占した。最後は消耗戦となり、生き残りをかけたサバイバルレースに。手に汗握る攻防が繰り広げられた。
ラスト1F、逃げるエスポワールシチーがついに力尽き、勝者は3頭に絞られた。カジノドライヴとサクセスブロッケンが壮絶なデッドヒートを繰り広げ、さらにインから王者カネヒキリが猛追。最後は精神力の勝負となった。内田博の右ステッキ連打に応え、ブロッケンが根性でもうひと伸び。「1回離されたが、馬がハミをグッと取ってくれた」。カジノを力でねじ伏せると、返す刀でカネヒキリの追撃を完封。勝ち時計1分34秒6のレコード。同斤量での力勝負、文句なしのVをつかんだ。
前走の川崎記念(3着)から中2週。ここで4歳馬の成長力が物を言った。「前回よりもやる気があったし、背中から伝わるトモのバネがすごく良かった」と驚異の成長力で名手をうならせた。これからは追われる身となるが「まだまだ成長する馬。これからが楽しみ」とさらなる“サクセスストーリー”を思い描く。
4歳春でダート界の頂点へ。藤原英師も興奮を抑えきれない。「地方で負け続けて、壁が厚いと思っていた。弱気ではないが、もう少し時間がかかると思っていた」。脚部が外向していて、調整の難しいタイプだが「まさかここまで順調に行くとは。運も持っているが、乗り越えた精神力に感謝している」と、その健闘をたたえた。
ついにカネヒキリ、ヴァーミリアンの壁を突破。逃げずに、真っ向勝負を挑んできた敗戦の日々が、血となり肉となって実を結んだ。前走後はここ1本に照準を絞って来たため、今後は放牧へ。英気を養い、秋の復帰を目指す。「現状ではマイルがベスト。でも成長するごとに千八〜二千もクリアできると思う」。中身の濃い勝利で、長きにわたった“現7歳政権”にピリオド。勢力図を塗り替えたニューヒーローが、今後のダート界をけん引する。
口取り式ではガッツポーズ
【高嶋だけに…?オーナー夫人「イエ〜イ」】
中央G1初制覇に、サクセスブロッケンのオーナー・高嶋哲氏夫人の祐子(さちこ)さんは思わずうれし泣き。ハンカチで涙をぬぐいながら「主人は所用で来られなかったんですが、今から“イエーイ”と電話します」と笑顔がはじけた。“サクセス”の冠名で競走馬を所有し、母サクセスビューティで02年にG2フィリーズレビューをV。「G2は(母親で)勝たせてもらって、今度はG1。まさか勝てると思っていなかったので、本当にうれしいです」と声を弾ませていた。
直線半ばで馬なりのまま先頭に立った。だが抜群の手応えとは裏腹に、カジノドライヴは思いのほか、そこから伸びを欠いた。内から迫ったカネヒキリは抑え込んだが、同世代のサクセスブロッケンの強襲はしのげず2着。「これまでにもう少し強い相手とやっていれば、あそこからひと伸びができたんだろう」。安藤勝はサバサバとした表情で経験不足を敗因に挙げた。
当初は賞金不足で出走が難しいと思われた一戦で、予定のローテには入っていなかった。この日は東京競馬場に不在だった藤沢和師は「いい仕上がりには持ってこられた。ただ、言い訳じゃないけど、ここを目標にしていた馬との差が最後に出てしまった」とコメント。前走で22キロ減った体を10キロ戻すなど、帰厩後2週間で最善の策は尽くした。「東京のマイルであそこまで、馬なりで上がってくる馬はいないぞ」と、能力の高さも再確認したようだ。
この後はドバイワールドC(3月28日・ナドアルシバ)が待っている。「まだまだキャリアが浅いし、ドバイも通過点ですよ」と山本英俊オーナー。無限の可能性を感じさせる4歳馬が、再び“世界”に飛び出して行く。
【角居師「若い力にやられた」】
若い力にのみ込まれてしまった。近年のダート界を席巻した7歳世代の両雄、カネヒキリとヴァーミリアンは1、2番人気に支持されたが、それぞれ3、6着に敗退。4歳勢のスピードに屈して、ともにこのレース2勝目はならなかった。
カネヒキリは4番手をロスなく追走したが、史上初のG1・8勝目はならず。直線で狭いインから時計差なしの接戦に持ち込んだのは底力のなせる業だったが、もうワンパンチを欠いた。「ペースが速く、ここ3走より最後は伸びなかった。前の2頭がスペシャルだった」とルメール。また角居師も「カネヒキリの全部を出し切った。若い力にやられた」と潔く敗戦を認め、納得の表情を浮かべた。
一方、直前に追い日を変更するアクシデントがあったヴァーミリアンは、中位から運んだが末脚が不発。武豊は「ここ3戦とはレースの質が違った。久々のマイルでレコード決着になってはね」と距離、ペースの違いを敗因に挙げていた。
3着に敗れて引き揚げるカネヒキリ
見せ場は十分だった。エスポワールシチーはハナを奪い、直線では一瞬後続を引き離す場面も。2度目の重賞挑戦、もちろんG1は初参戦で0秒2差4着なら前途は洋々だろう。同じ舞台で争われた3R・3歳未勝利戦の前半3F通過が36秒3。「だから、34秒台で行ければとイメージ(実際は35秒1)していた。最後は力のある馬と戦っていない分の差が出た感じ」と佐藤哲。「さらに強くなってくれるはず」と前向きに語った。
ダートG1初挑戦で、フェラーリピサは5着に健闘した。重賞V3はならなかったが、好位で運ぶ正攻法での結果。顔面神経痛という奇病から立ち直り、今後へ明るい見通しを立てた。「うまく流れには乗れていたけど、前半ハミをかんでしまった分、思ったほどしまいは切れなかった」と岩田。それでもレコード決着の0秒4差に「十分に評価できる」と振り返った。激闘を経験したことを糧に、まだまだ強くなりそうだ。
サクセスブロッケン…牡4歳。父シンボリクリスエス、母サクセスビューティ(母の父サンデーサイレンス)。馬主・高嶋哲氏。生産者・北海道浦河町 谷川牧場。戦績・11戦6勝(うち地方4戦1勝)。重賞・08年ジャパンダートダービー(大井)に続き2勝目。総収得賞金266、480、000円(うち地方113、000、000円)。藤原英昭調教師、内田博幸騎手ともに初勝利。