2009/4/12 阪神競馬場
▼第69回桜花賞 | |||
1着 | ブエナビスタ | 安藤勝己 | 1:34.0 |
2着 | レッドディザイア | 四位洋文 | 1/2 |
3着 | ジェルミナル | 福永祐一 | 1 1/2 |
もはや敵はいない。ブエナビスタが圧倒的な1番人気に応え、豪快な差し切りVを決めた。昨年の阪神JFに続き、4連勝で2度目のG1タイトルを獲得。安藤勝はクラシックの最年長V記録を69年ぶりに更新した。3冠への最難関と言われた舞台を制し、次はオークス(5月24日・東京)へ。夢は無限に広がる。なお2着は2番人気のレッドディザイア、3着にはジェルミナルが入った。
大外から一気に突き抜けるブエナビスタ
届かない。そんな心配はどこにもなかった。異次元の末脚、強さ。大外に進路を取ったブエナビスタは直線でのゴーサインに瞬時に反応し、一気に加速。“女ディープ”の異名さながらの脚で、前を行く17頭を一気にのみ込んだ。「断然の1番人気になることは分かっていたし、期待に応えたいと思っていた。本当に強い馬です」。単勝1・2倍の主役をVに導く大任を終えて、額の汗をぬぐった安藤勝に浮かんだのは安どの表情だった。
競馬に絶対はないという。だが“競”馬をする気はなかった。スムーズにさえ運べれば、負けることはない。鞍上とパートナーの間には、絶対的な信頼関係が築き上げられていた。迷いは一瞬だけ。「スタートが良かったので中団につけることも考えたが、後ろから外を回った方が安全だな、と。今までの競馬で、どれぐらいの脚が使えるかは分かっているからね。いつもと違う競馬をする方が怖かった」。敵は思わぬアクシデントだけ。その判断は的確だった。
大胆な騎乗だった。向正面では後方17番手を追走。直線入り口ではいったん最後方まで下がる場面もあったが、慌てることも騒ぐこともない。ラスト三百メートルで満を持してスパート。左ステッキが1発入ると、目の前にいるレッドディザイア、ジェルミナルに猛然と襲いかかる。馬体が接すると、さらに左ステッキを2発。「並んだときは、負けることはないと思った」。上がり3Fはメンバー最速の33秒3。半馬身差での栄冠だが、力の違いは明らかだった。
改修前ほどではなくても、若駒が集う仁川のステージは不確定な要素が存在する。主戦も「今回さえ勝ってしまえば、あと(オークス、秋華賞)が楽になる」と最大の難関ととらえていた。その第一関門を見事に突破。おのずと03年スティルインラブ以来となる、牝馬3冠の期待がかかる。
「今の時期の3歳にしては珍しいぐらい、精神的にどっしりしている。千六よりも二千以上あった方がいい馬だと思っているし、次のオークスが楽しみです」。才能あふれる3歳牝馬の存在が、クラシックレースの最年長優勝記録を更新した49歳を奮い立たせる。94秒のドラマの先に広がる壮大な夢。どんな絶景が待っているのだろうか。
安藤勝と笑顔で握手する蒼井優
【松田博師は次走オークスへ自信】
ブエナビスタを管理する松田博師の第一声は、「まあ、実力通りに来たのと違いますか」。トレーナーにとっては93年に春の牝馬2冠を制したベガ以来、16年ぶりの桜花賞制覇。自ら管理したブエナビスタの異父兄アドマイヤジャパン、アドマイヤオーラでは果たせなかったクラシック制覇も見事に成し遂げた。次走はオークスで2冠を見据える。「次は何の心配もないですよ。距離も延びるし」と今回以上に自信あり、の口ぶりだった。
あと一歩、レッドディザイアは先頭でゴールを迎えようとした瞬間、勝ち馬にかわされた。半馬身差の2着に「2着は悔しいけど、中身の濃いレースだった。一瞬やったと思ったが、そう思うのが早かったかな」と四位は残念そうに振り返る。
それでも収穫は十分にあった。2戦2勝で挑んだ桜の舞台。「3回目の競馬を考えると、大したものだよ。馬場入りから落ち着いていたし、精神力が強い。普通の馬なら3回目で、この雰囲気だとイレ込むからね」。キャリアが浅いという事実は能力の高さ、伸びしろを感じさせてくれる。
松永幹師もさらなる飛躍を期待した。「残念だったけど、次が楽しみになった」。今後はオークスへ直行する見込み。打倒ブエナビスタの一番手として、仁川の借りは府中で返す。
3着にも手応え 敗戦のなかにも、次走への手応えはつかんだ。5番人気ジェルミナルは外から力強く追い込んだが、最後は力尽きて3着に敗れた。それでも「ハミを外しながら進めて、最後も伸びていた。距離は延びた方がいい」と福永は納得顔を浮かべる。「ステッキを直線で落としたみたい」と藤原英師は苦笑したが、オークスへメドを立てたこともあり表情は暗くなかった。
末脚不発で8着 東の切り札は末脚が不発に終わった。好位から運んだ3番人気ダノンベルベールは直線で伸びず8着に完敗。「内は伸びない馬場だった。馬も落ち着きがなかった」と後藤は振り返った。(1)番枠でインの荒れた馬場を通らざるを得ず、また8キロ減の馬体が示す通り落ち着きにも欠けた。「内枠馬の中では頑張った。次はオークス」と国枝師は地元での反撃を誓った。
ブエナビスタ…牝3歳。父スペシャルウィーク、母ビワハイジ(母の父カーリアン)。馬主・(有)サンデーレーシング。生産者・安平町 ノーザンファーム。戦績・5戦4勝。重賞・08年阪神JF、09年チューリップ賞に続き3勝目。総収得賞金・224、831、000円。松田博資調教師は93年ベガに続き2勝目、安藤勝己騎手は06年キストゥヘヴン、07年ダイワスカーレットに続き3勝目。