2009/5/3 京都競馬場
▼第69回皐月賞 | |||
1着 | マイネルキッツ | 松岡正海 | 3:14.4 |
2着 | アルナスライン | 蛯名正義 | クビ |
3着 | ドリームジャーニー | 池添謙一 | 1 3/4 |
初重賞Vで、いきなり古馬の頂点を極めた。12番人気マイネルキッツが直線で内から早めに抜け出し、猛追してきたアルナスラインとの競り合いを制した。重賞未勝利馬の勝利は、1980年ニチドウタロー以来となる29年ぶりの快挙。1番人気アサクサキングスは9着、2番人気スクリーンヒーローは14着、3番人気モンテクリスエスは12着に敗れ、人気上位馬は総崩れとなった。
関東馬の勝利は10番人気で逃げ切った04年イングランディーレ以来。西高東低が続くなかで、関東馬による今年最初のG1勝ちにもなった。次の目標はもちろん宝塚記念(6月28日・阪神)。松岡が「善戦マンだったけど勝てたことで、いいリズムで競馬ができる」と意気込めば、指揮官も「気負うことなく、チャレンジャーの気持ちで行きたい」と意欲を燃やす。重賞未勝利から一気にG1タイトルを奪取した勢いをそのままに、宝塚記念でも再び頂点を狙う。
高々と腕を突き上げる松岡とマイネルキッツ
混戦ムードが漂ったフルゲートの争い。長丁場を先頭で駆け抜けたのは、何と12番人気のマイネルキッツだった。アルナスラインとの激しい競り合いを制した鞍上の松岡が、ゴールした瞬間に高々と左手を掲げて勝利をアピール。これまで重賞で3度も2着に泣き、どうしてもタイトルに手が届かなかった。しかしG1初挑戦で、いきなり古馬の頂点に上り詰めた。
1周目は折り合いに専念し、中団で待機。勝負どころの3コーナーで内からスッとポジションを上げ、残り三百メートルで先頭に立った。外からアルナスラインが猛追してきたが、勝利への執念で抜かせなかった。「素直にうれしいです。自分がこのレースを使ってほしいと言っただけに、勝てて本当に良かった」と松岡は会心の笑みを浮かべる。
当初は1月のAJCC4着後に中京記念を使うプランだったが、長距離適性を感じ取った松岡の進言で、日経賞から天皇賞・春のローテーションに変更になった。日経賞2着後には栗東トレセンへ滞在し、調整を進めてきた。早くから管理馬を栗東に滞在させてきた国枝師にとっては、念願の関西圏でのG1勝ち。ダノンベルベールが昨年暮れの阪神ジュベナイルFで2着に入ったことはあったが、「なかなか結果が出なかったけど、ようやく勝てたね」と感慨深げ。これまでの経験が、ようやく実を結んだ。
満面の笑みで口取り撮影に収まるマイネルキッツと関係者ら
【岡田代表もビックリ「実感わかない」】
(株)サラブレッドクラブ・ラフィアンの岡田紘和代表(32)も驚きを隠せない。これまで中央G1を勝った馬は3頭いるが、生産馬の優勝は初めて。「実感がわかない。それも天皇賞ですからね。ここ最近は頭数も増えてきたので結果を残せてうれしい」と笑顔を見せた。セールで購入した繁殖馬のお腹にいた馬がマイネルキッツだった。「JS繁殖セールで700万円ちょっとだったと思う。運がいいとしか言いようがない」。思わぬお宝の大出世に感慨深げだった。
まさかの失速にスタンドから悲鳴が上がった。1番人気のアサクサキングスは、直線入り口ですでにいっぱいいっぱい。王者らしさを見せることができず、馬群にのみ込まれた。9着完敗に四位は「坂の下りを利用してうまく上がって行けたが…。最後は止まってしまった」とがっくり。敗因については「阪神大賞典での泥んこ競馬が効いているのかな。難しいね」と首をひねった。G1馬として、このまま終われない。最後は「次、頑張ります」と気を取り直して競馬場をあとにした。
手応え十分にスパートしたアルナスラインだったが、内をすくった勝ち馬とはコース取りの差が出た。馬体を合わせに行ったが、最後は首差及ばず、G1では07年菊花賞に続き、銀メダルに終わった。蛯名は「流れには乗れていたし、ラストも来ていた。それでいてこの結果。仕方がない」とサバサバとした表情。松元師は「右前を落鉄していた。その分の差かな。出来は最高だったけど、ウチに運がなかった」と肩を落とした。今後については「オーナーと相談して」と明言を避けた。
直線力強く伸びてきたドリームジャーニーだが、最後は前の2頭と同じ脚色になり3着。池添は「悔しいです」と唇をかんだ。当初の予定だった金鯱賞から変更しての挑戦。初の三千二百メートルだったが存在感は示した。「決して得意でない距離で力を見せてくれた。次は宝塚記念になると思うので、得意の距離で頑張りたい」と巻き返しを誓った。
マイネルキッツ… 牡6歳。父チーフベアハート、母タカラカンナ(母の父サッカーボーイ)。馬主・(株)サラブレッドクラブ・ラフィアン。生産者・新冠町 ビッグレッドファーム。戦績・29戦6勝。重賞・初勝利。総獲得賞金・327、772、000円。国枝栄調教師、松岡正海騎手ともに初勝利。