宝塚記念・G1

ドリジャニ

夢チュ〜で勝った

2009/6/28 阪神競馬場

▼第50回宝塚記念
1着 ドリームジャーニー 池添謙一 2:11.3
2着 サクラメガワンダー 福永祐一 1 3/4
3着 ディープスカイ 四位洋文 クビ

 もう1度G1勝利を―。その“チーム”の思いが実を結んだ。圧倒的人気を集めたディープスカイを並ぶ間もなく抜き去り、06年の2歳王者ドリームジャーニーが、鮮やかに決めてG1・2勝目を挙げた。秋は天皇賞(11月1日・東京)から、香港遠征を視野に入れる。2着にはサクラメガワンダー。ディープスカイは直線伸びあぐねて3着に敗れた。

写真・炎熱のグランプリを制したドリームジャーニー

炎熱のグランプリを制したドリームジャーニー、池添は薬指にキスをする。左は3着に終わったディープスカイ

 

スカイ眼チュ〜になし

秋盾から香港へ

 

【豪脚一閃】

 

 検量室前に引き揚げてきた池添が、勝利の雄たけびを高らかに上げた。「シャーッ」。初夏の太陽がドリームジャーニーにほほ笑んだ。上がり3F34秒3はメンバー最速。重賞3勝を挙げている得意の仁川で、伝家の宝刀が一閃(せん)した。


 レースは中団に位置。「スタートは速くないのでいつも通り。掛かることなく折り合えた」と振り返った。天皇賞・春(3着)の道中で我慢させる競馬を覚えさせたことで、千メートル短縮のここは折り合い面の課題が見事に解消した。


 視線の先に有力馬がひしめき合い、3角過ぎで競馬が動いた。「前の馬の手が動くのが見えて、置かれないようにだけ気をつけた」。大外をまくって進出すると直線入り口でディープスカイと馬体が合う。だが「並ぶ間もなかった」とあっさりパス。勢いが違った。メンバー最軽量の424キロの牡馬は、ラスト百メートルで先頭に立ち、栄光のゴールを駆け抜けた。

 

 06年の朝日杯FS以来、2年6カ月ぶりのG1制覇。池江寿師は安どの表情を浮かべた。「朝日杯を勝たせてもらったときから、早熟じゃないと話していた。公約を果たせたのはうれしい」。その思いは池添にも伝わっていた。「もう1度、この馬にG1のタイトルを獲らせたい。その厩舎の思いが伝わっていた。一緒に獲れて良かった」と会心の笑みを浮かべた。最大の敵は雨。陣営は一日に何度も携帯サイトで日曜の天気予報を確認した。その執念が天を味方に勝利を呼び込んだ。


 担当の山下助手は母のオリエンタルアートも現役当時に世話し、全3勝を池添で挙げた深い縁を持つ。「泣きましたね。ここまで長かった。(池添は)最高のパートナー。褒めてあげてください」と涙をにじませた。父のステイゴールドは4度の宝塚記念挑戦で98年の2着が最高。当時、調教助手として挑んだ池江寿師は「リベンジできてうれしい」と喜んだ。


 秋はオールカマー(9月27日・中山)からの始動が有力。天皇賞・秋でG1連覇を目指し、昨年は選出漏れで悔しい思いをした香港遠征(12月13日・シャティン)を視野に入れる。夢の旅路はまだ終わらない。



 

写真・ドリームジャーニー口取り

長女を抱き口取りに並ぶ朝美夫人(左)、池添(左から2人目)


【サンデーレーシング・今年G1・4勝目】

 

 上半期最後のG1も絶好調の(有)サンデーレーシングが制した。桜花賞とオークスのブエナビスタ、皐月賞のアンライバルドに続き今年G1・4勝目(通算10勝)。G1は年間3勝(08年)が最高だったが、早くも記録を更新した。吉田俊介代表は「子馬のころから丈夫でした。2歳時に勝ち、2年以上がたってまたG1を勝つなんて。本当にうれしい」と喜んでいた。


 

写真・朝美婦人と池添

朝美婦人と池添


【愛娘にチュ〜 朝美夫人も涙】


 池添の晴れ姿に、朝美夫人(右)は思わず感涙。この日は5月に誕生した長女を連れて阪神で観戦した。「初めて競馬場にこの子を連れて来ました。主人も気合が違ったんでしょう。最高です」。池添は今週、自宅で週末の天気予報を何度もチェックしていたという。「この子が好天を呼んだのかもしれませんね」と“勝利の女神”を抱きしめていた。

 

 

 

スカイ凱旋門賞断念 秋は国内専念


 世界最高峰レースへの挑戦は夢と消えた。単勝1・6倍と圧倒的1番人気に支持されたディープスカイは伸び切れず3着。道中は中団の後方につけたが、3角過ぎから手応えが怪しくなり、直線では外からドリームジャーニーにかわされ、早めにスパートをかけたサクラメガワンダーも捕まえることができなかった。
 不完全燃焼の内容に、四位も首をかしげるしかなかった。「どうしたのかな。持ったままでも上がって来られる馬だし、この上がりも出せる。パドックでも良かったし、圧倒的な1番人気に応えなければいけなかった。ファンの皆さまに申し訳ない。展開のせいにしたくはないが…」と静かに振り返った。
 勝てば仏G1・凱旋門賞(10月4日・ロンシャン)に参戦の可能性もあった。だが、昆師は「この負け方では行っても仕方がないし、(行きましょうと)オーナーに言っても仕方がない。ここはあっさりと勝たなければならなかった」と苦渋の表情で遠征を断念。今後は状態を見ながら放牧に出すかどうかを決める。「仕切り直して、馬をつくり直します」。この悔しさは秋の国内戦でぶつける。


メガワンダー 悔しいんダ〜3着

 

 届きかけたように見えたG1タイトルを、手にすることはできなかった。サクラメガワンダーはドリームジャーニーから1馬身3/4差の2着。早めスパートから、直線半ばで先頭に立ったその瞬間、勝ち馬に並ぶ間もなくかわされた。福永は「早めに行こうと決めていたし、向正面で気持ち力んでいたが、大体イメージ通りの競馬ができた。もうちょっとなんだけど…」と肩を落とした。普段から乗れるときには調教をつけ、悲願のG1初制覇へ向けて、着々と準備を整えてきた。「出来はすごく良かった」と万全の仕上がり。ディープスカイの猛追はしのぎ切ったが、勝利の女神はほほ笑まなかった。


カンパニー 健闘4着 


 好位を進んだカンパニーが見せ場たっぷりの4着。宝塚記念は3回目の挑戦だったが、06年の5着を上回る健闘を見せた。岩田は「(大外枠で)外に張られたくなかったので、ある程度の位置を取りに行った。自分のレースをして、最後まであきらめずに走ってくれた」と8歳馬の力走をたたえた。悲願のG1制覇はかなわなかったが、古豪が存在感を示した。


ヒーロー 粘った5着  

 

 スクリーンヒーローが復活の兆しを見せた。ハナに立とうかという勢いから1角で2番手に控えて、その後は3番手に。集中力を乱されかねない状況下ながら、5着に粘った。「よく頑張っている」と横山典。鹿戸雄師も「きつい競馬だったと思うけど、秋に向けていい内容だった」。昨年は夏から快進撃が始まりJCを制覇。今年も後半戦での活躍が期待される。





牡5歳。父ステイゴールド、母オリエンタルアート(母の父メジロマックイーン)。馬主・(有)サンデーレーシング。生産者・北海道白老町 (有)社台コーポレーション白老ファーム。戦績・21戦8勝。重賞・06年朝日杯FS、07年神戸新聞杯、08年小倉記念、朝日チャレンジC、09年大阪杯に続き6勝目。総収得賞金・559、759、000円。池江泰寿調教師は初勝利、池添謙一騎手は05年スイープトウショウに続き2勝目。

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