2010/3/28 中京競馬場
▼高松宮記念・G1 | |||
1着 | キンシャサノキセキ | 四位洋文 | |
2着 | ビービーガルダン | 安藤勝己 | ハナ |
3着 | エーシンフォワード | 岩田康誠 | クビ |
この開催を最後に改修工事が行われる中京競馬場。現コースで行われる最後の高松宮記念は、1番人気のキンシャサノキセキが中団から抜け出してG1初制覇を達成した。南半球生まれの日本調教馬がG1を制したのは初めて。管理する堀師も27回目の挑戦で初のビッグタイトルを手に入れた。
高松宮記念でG1初制覇を遂げたキンシャサノキセキ(右)、2着ビービーガルダン(左)
ゴール前の激しいせめぎ合いを制したのは、豪州生まれのキンシャサノキセキ。2着ビービーガルダンを鼻差抑えて、重賞4連勝でG1初制覇を達成した。際どい勝負だった。「ゴールしたときは半信半疑だった。安藤さんの脚色が良かったから」と四位。とにかく前だけを見て必死に追った。その結果が勝利につながった。「中京の短い直線が長く感じたね」。この日を最後に無くなる直線313・8メートルの攻防は、キンシャサの執念が上回った。
道中は中団をキープ。やや行きたがるそぶりを見せながらも、ポジションを徐々に上げ、4コーナーではぽっかりと開いた馬群の間を割って突き抜けた。ここまでは完ぺきだった。「4コーナーでうまくいき過ぎて、早めに抜け出す形になってしまった。それで脚があがってしまった」。最後に落とし穴が待っていた。それで失速しかけたが、外からビービーガルダンが伸びて再び闘争心に火がついた。「最後はよくしのいでくれた」とパートナーも感服する走りを見せた。
08年の高松宮記念、スプリンターズSで2着。大舞台で悔しい思いをしてきたが、これで晴れてG1馬の仲間入りとなった。また日本調教馬の南半球産馬としては初の栄冠。堀師は「目立って成長が遅いとは思わなかったが、同世代の馬より調教後のダメージを感じた」と遅生まれならではの苦労を語った。「古馬になり体力がつき、安定して走れるようになった。気持ちの面でもだいぶ人の言うことを聞くようになった」。心身の成長が、ここまでの躍進につながった。師自身もG1初勝利。「素直にうれしいです」と喜びをかみしめていた。
今後については「これから美浦へ帰って馬の様子を見てから決めたいと思う」。7歳でトップに立った遅咲きのスピードスター。連勝街道をどこまで突っ走るのか注目だ。
堀師(左)と笑顔で握手をする四位
【オーナー代理も大興奮「もっと強くなると思う」】
馬主の代理として表彰式に立った、サンデーレーシング代表取締役の吉田俊介氏は興奮を隠さなかった。「2年前のことを頭がよぎりました。抜け出したところを、ファイングレインに差されて…。きょうはよく頑張ってくれました」。リベンジを果たしての勝利。「南半球産ですが、2歳の12月にデビューして、最初からすごく能力を見せてくれた。引っ掛かる面が解消すれば、もっと強くなると思う」と、さらなる活躍を期待していた。
また鼻差に泣いた。ビービーガルダンは写真判定の末、2着に敗れた。直線は勝ち馬と馬体を合せて追い比べを演じたが、わずかに及ばなかった。「4角の反応が良くなかった。外へ逃げ気味だったし、コーナーワークが右回りよりもぎこちない。短距離ではトップクラスなんだけど」と安藤勝は悔しがる。スプリンターズS同様、首の上げ下げの2着。領家師も「G1は2着しかこないのかな。力は出し切った」と肩を落とした。
3番人気のエーシンフォワードは鼻、首差の3着に敗れた。直線は手応えよく伸びたが、勝ち馬に届かず。さらにはビービーガルダンの強襲に甘んじた。「コンディションは良かったんだけど…。最後は切れ負けだね」と岩田はガックリ。管理する西園師は「ピンク帽が響いた。もう2、3完歩あれば…。安田記念に向かいます」と巻き返しに意欲を見せていた。
引退レースのアルティマトゥーレは5着。スタートで後手を踏み、道中は後方になったが、最後は馬群を割って追い上げた。横山典は「つまずいたけど、よく伸びてくれた。無事が一番。いい馬だね」とねぎらった。今後は宮城県・山元トレセンを経由して、北海道・社台ファームで繁殖入りの予定。奥平師は「素晴らしい馬。1週間様子を見て送り出したい」と感謝した。
キンシャサノキセキ…牡7歳。父フジキセキ、母ケルトシャーン(母の父プレザントコロニー)。馬主・吉田和美氏。生産地・豪州。戦績・26戦10勝。重賞・08年函館スプリントS、09年スワンS、阪神C、10年オーシャンSに続き5勝目。総収得賞金・560、448、000円。堀宣行調教師は初勝利。四位洋文騎手は98年シンコウフォレストに続き2勝目。