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NHKマイルC・G1

シャンティ

いざ変則2冠

2010/5/09 東京競馬場

▼NHKマイルC・G1
1着 ダノンシャンティ 安藤勝己  
2着 ダイワバーバリアン 蛯名正義 1 1/2
3着 リルダヴァル 福永祐一

 衝撃的、異次元の強さだった。1番人気ダノンシャンティが、1分31秒4の日本レコードで3歳マイル王に輝いた。ハイペースをメンバー最速の上がり33秒5で豪快に貫き、G1初制覇。日本ダービー(30日・東京)で、史上3頭目の変則2冠を狙う。5番人気ダイワバーバリアンが2着に入り、3着はリルダヴァル。2番人気サンライズプリンスは4着に終わった。

ダノンシャンティ

直線で一気に加速したダノンシャンティ(中)がレコードタイムでゴール(右は2着のダイワバーバリアン、左は3着のリルダヴァル)

 

異次元の末脚で

日本レコード

 

 次元が違った。ダノンシャンティは直線に入ると、後方3番手から一気にスパートをかけた。他馬が止まったように見える。あっという間のゴボウ抜きだった。メンバーただ1頭、33秒台の上がりを駆使し、後続に1馬身半差をつける完勝劇。掲示板に浮かんだ、日本レコードを示す1分31秒4の勝ち時計。府中のスタンドのどよめきとともに、ゼンノエルシド(01年京成杯AH)の数字をコンマ1秒更新した。


 先行勢が飛ばし、前半3Fを33秒4で通過するハイペースにも、安藤勝はあわてない。後方でじっくりと待機する。「馬に任せたら、あの位置になった。枠順も外だったし、瞬発力があるから、スムーズに回れれば届くと思った」。内側が有利な馬場状態など関係ないとばかり、大外から豪快に他馬をかわし去った。

 

 テンションが高く、ゲートにも不安がある。中間は精神面の課題をクリアすることに重点を置いた。前走の毎日杯は2週連続の併せ馬で仕上げ、今回はテンションが上がらないようにソフトに。松田国師も満足げに振り返る。「サンデーサイレンス系の馬は、一回仕上げておけば、もう余計なものがつかない。毎日杯後も無事にこられたし、調整は楽だった」。そして描いた通りに、G1タイトルをモノにした。


 ダービーでの2冠獲りへ大きく弾みをつけた。NHKマイルCからダービーへと進む路線を切り開いた第一人者、指揮官は「フジキセキの根性と母系から受け継いだ長い距離を走れる体形。両方のいいところを持っている」と期待に胸を弾ませる。戦前は2400メートルの距離に不安を抱えていた主戦も「きょうの感じなら、こなしてくれると思う。ただ、今年は相手もそろっているし、挑戦する立場で」と慎重ながらも手応えを口にした。

 

 (7)枠(13)番からつかんだ栄光。04年に同じ枠からこのレースを制したキングカメハメハは、ダービーでも頂点に立った。松田国師と安藤勝のコンビが再現に挑む。師は「ボリューム感はカメハメハの方があったけど、胸前が狭く、重心が高いのは似ている」とイメージを重ねた。変則2冠へ、厩舎の先輩が刻んだVロードを力強く歩む。

 

 

 

ダノンシャンティ

レース後も元気いっぱいのダノンシャンティに、関係者もビックリ


【野田オーナー】

 (株)ダノックスは待望のG1初勝利。「頭の中で何かがはじけて、青空がパッと広がった感じ」。歓喜の瞬間を振り返った野田順弘代表(71)は「10年近くやっていて、悔しい思いの連続だった。辛抱して継続していれば、夢はかなうってことだね」と喜びをかみしめる。さらなる夢へ向かって「またひとつ大きなロマンを求めたい」とダービーへ意欲を見せた。


【ダーレーJF初挑戦で快挙】

 

今後の旋風を予感させる勝利だ。生産者のダーレー・ジャパン・ファーム(有)は、創設7年目にしてJRA・G1初挑戦でのタイトル奪取。三嶋健一郎代表(37)は「子どものころから丈夫だったが、順調に育ってくれた。走るごとに強くなっていく」と目を細めた。96年ジャパンC覇者シングスピールを兄に持つ母のシャンソネットは、昨夏に放牧中の事故で他界。母の日に、亡き母へささげるG1勝利となった。本体ダーレーグループのモハメド殿下を筆頭に、3人が昨秋に海外居住者馬主免許を取得。日本でグループの勢いが、さらに加速しそうだ。

 

 

 

 

2着 バーバリアン健闘

 

 過酷なサバイバルレースで1馬身半差。ダイワバーバリアンが銀メダルを獲得した。7番手追走から直線半ばで早めに抜け出したサンライズプリンスをかわしたが、最後は勝ち馬の切れ味に屈した。
 蛯名は「相手が強かった」ともらした。重賞初Vには届かなかったが、強豪がそろった舞台での2着は価値がある。「コーナーがふたつの東京は合っているし、これだけの時計でよく頑張っている」とたたえれば、矢作師も「よく走ってくれたし、褒めてあげたい」と笑顔で振り返った。
 賞金を加算し、ダービーにも出走が可能となったが「無理はさせずに、秋まで休ませるつもり」と指揮官。今後は天皇賞・秋(10月31日・東京)あたりを視野に入れて、調整されることになる。

 

 

3着リルダヴァル もうひと伸び…

 

 中団からレースを進めたリルダヴァルは3着。手綱を取った福永は「一瞬“やった”と思ったんだけどね。最後のひと伸びが利かなかった。勝った馬が強かったよ」とサバサバとした表情。賞金加算もできなかったため、ダービーへの夢もついえた。池江郎師は「ジョッキーはうまく乗ってくれたけど、相手が一枚上だった。力をつけて出直すよ」と前を向いた。

 

 

4着サンライズプリンス 長かった府中の直線…  

 

 長い、長い、長い府中の直線。早めに先頭に立った、サンライズプリンスには試練の道だった。必死に粘り込みを図ろうとするが、後続にのみ込まれて4着。デビュー最速での3歳マイル王の称号は手に入らなかった。
 自身も1分31秒9の好時計で走っている。しかし、相手はさらに速いタイムで駆けた。「ためて切れるタイプじゃないからね。時計勝負になることは分かっていたし(この馬には)持ってこいだと思ってたんだけど」。横山典は淡々とした表情でレースを振り返る。
 中山マイルの大外枠を克服し、力でねじ伏せた前走。ただ、鞍上はテンにダッシュがつかなかった点は不満だった。「状態が良くなかったんだろう。出来さえ戻れば、前で競馬ができる」。スッと前に行けたことこそ、調子が良くなった証明だった。「道中、外から来られたのが痛かった。それも競馬だから仕方がないけど。この馬はよく頑張っているよ。それにしても、勝ち馬は強かったね」と勝者をたたえた。
音無師「やっぱり力ある」 音無師は「このハイペースを、前に行った馬のなかで1頭だけ残ったんだから、やっぱり力はある」と悔しさを表現。その視線は反撃、ダービーへ向けられた。後藤とのコンビでの参戦が決定。「今度は後ろからのレースがいい」と勝利への構想を練る。これが終わりではない。競馬の祭典で真の実力を示す。





ダノンシャンティ…牡3歳。父フジキセキ、母シャンソネット(母の父マークオブエスティーム)。馬主・(株)ダノックス。生産者・北海道日高町 ダーレー・ジャパン・ファーム有限会社。戦績・5戦3勝。重賞・10年毎日杯に続き2勝目。総収得賞金・166、534、000円。松田国英調教師は01年クロフネ、04年キングカメハメハに続き3勝目。安藤勝己騎手は04年キングカメハメハに続き2勝目。

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