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日本ダービー・G1

フラッシュ

頂点

2010/5/30 東京競馬場

▼日本ダービー・G1
1着 エイシンフラッシュ 内田博幸  
2着 ローズキングダム 後藤浩輝 クビ
3着 ヴィクトワールピサ 岩田康誠 1 3/4

 夢をかなえた。7番人気のエイシンフラッシュがメンバー最速の上がり3F32秒7で抜け出し、07年生まれの7611頭の頂点に輝いた。内田博はJRA移籍3年目で、念願のダービージョッキーの称号を手にした。首差の2着に5番人気の2歳王者ローズキングダム、1番人気のヴィクトワールピサは3着、無敗での戴冠を狙った2番人気のペルーサは出遅れて6着。3連単は15万馬券の波乱となった。

エイシンフラッシュ

直線で抜け出しゴールを目指すエイシンフラッシュ(右)

 

史上最高のダービーに閃光走った

落馬から復活今年重賞初V

 

 あこがれの“ダービージョッキー”の称号だ。エイシンフラッシュを3歳馬の頂点へ導き、内田博は右拳を突き上げた。「本当に勝ったのか?って。勝ったんですけど、実感がないです」。6回目の挑戦で、かなえた夢。ついに先頭で最高峰のゴールを駆け抜けた。


 勝利のチャンスを感じながらも、欲はあえて押し殺した。「勝ちに行くといいレースができないので、リズムを崩さないように」。道中は右斜め前に2歳王者、すぐ前に皐月賞馬。インの絶好位で息を潜めた。「能力のある馬が前にいたので壁になることはないと。すごくいい形になった」。直線では馬場の真ん中から馬の間を割って一気にスパート。「勝つべき道が開いていた」。力強くVロードを突き抜けた。

 

 「JRAリーディングと日本ダービーを獲るために移籍をした」。地方の大井から中央へ移籍して2年目の昨年、武豊を抑えて初のリーディングを獲得。3年目にして、ふたつの大きな夢をかなえた。「勝ってみないと分からない。やみつきになる。2度、3度と勝ちたい」と笑顔を見せる。


 ただ、これが今年の重賞初制覇だった。1月11日の中山での落馬事故で左腕を骨折。有力馬がその手から離れ、重賞を勝っていく姿をただ見つめるしかなかった。「何とも言えない気持ち。悔しい思いもした」。苦難を乗り越えて、つかんだ勝利の味をかみしめる。

 

 「馬の状態はいいのでジョッキーには“勝負してこい”と」。6頭目の挑戦でダービートレーナーとなった藤原英師は、そう言って送り出した。レース前日の夕方には馬場を歩き、自ら芝の感触を確かめた。「予定していなかったけど、急きょ。雨が気になったから」。エイジアンウインズで08年のヴィクトリアマイルを勝ったときもそうだった。だからこそ「ジョッキーには明確な指示が出せた」。チーム一丸でつかんだ栄光だった。

 

 2年前のダービーに出走したタスカータソルテが、前日の金鯱賞で故障し予後不良に。「天国へ行ったので、あと押ししてくれたのかな」。その瞬間は、指揮官もしんみりとした表情を見せた。

 凱旋門賞・仏G1(10月3日・ロンシャン、芝2400メートル)にも登録を済ませている。明言は避けたが「菊花賞(10月24日・京都)へ行くか、そのあたりはオーナーと相談して。(凱旋門賞に)登録しているのは、それだけの馬だと思っているから」と海の向こうも視野に入れる。秋には、さらに輝きを増したダービー馬が見られそうだ。


 

 

 

内田博

ダービーを制し、帽子を振ってファンの声援に応える内田博

 


【妻・文子さん「信じられない気持ち」】

 

 内田博の妻・文子さん(29)右=は2歳の息子・祐誠君と競馬場で観戦。レース後にはそろって表彰式をターフから見守り、温かい拍手を送った。「本人は自信を持っていたみたいなんですけど…。レースを見ているときより、終わってからの方がドキドキしています。信じられない気持ちです」と夫がダービージョッキーに輝いた喜びと興奮を抑え切れない様子だった。

 

 

 

 

キングダム 首差V逸

惜しい…橋口師2年連続4回目の銀メダル


 またしても、タイトルに手が届かなかった。ローズキングダムは直線でいったんは先頭に立ったが、エイシンフラッシュとの激しいたたき合いの末、最後は首差でVを逃した。橋口師は昨年のリーチザクラウンに続き、2年連続4回目(ほかに96年ダンスインザダーク、04年ハーツクライ)の2着。17頭目の挑戦も悲願はかなわなかった。
 トレーナーは悔しさを胸に秘めながらも、内容には満足していた。道中は中団で運び、最後は上がり3F32秒9の脚。完全な勝ちパターンだった。「これで負けたら仕方がない。道中は“しめしめ”とつぶやきながら見ていたけど。相手を褒めるしかない。いい競馬ができた」と自分に言い聞かせるように語る。右前脚の挫石で一時は出走すら危ぶまれるなど、決して順調な過程ではなかった。「いろいろあったからね。まして好結果を残してくれんただから」とキングダムをねぎらう。
 騎乗停止中の小牧のピンチヒッターとして指名された後藤は、悔し涙で引き揚げてきた。「馬を褒めて上げたい。抜け出したときは差されるとは思わなかったが、勝った馬がそれ以上の脚を使った。負けはしたが、小牧さんにはいい報告ができると思う」。無念と同時に、好勝負を演じた充実感も漂わせていた。
 2歳王者がスプリングS3着、皐月賞4着で失いかけていたプライドと輝きを取り戻した。今後は放牧に出る予定。秋は菊花賞を目標に、再び頂点を狙う。

 

 

ヴィクトワール3着無念…2冠ならず

 

 2冠の夢はついえた。上位2頭からコンマ3秒差、1番人気に推されたヴィクトワールピサは3着に終わった。「皐月賞よりもいい位置につけられたし、最後も伸びてくれてるんやけど…」。岩田は淡々と振り返る。
 位置取りは中団の少し前。スムーズな競馬でラストも33秒1の末脚を使ったが、勝ち馬はそれを上回る32秒7。瞬発力勝負に屈する形となった。「ペースが遅くて1、2コーナーで少し掛かったけど、周りの馬も掛かっていたからね。それ以外はほぼ完ぺきに乗れたと思う。負けたのは悔しいけど、これも競馬。また頑張るわ」と前を向く。
 角居師も「流れが遅かったからね。きょうのようなレースだと、もう少し軽い脚が必要だったのかも」と分析した。このあとは宮城県の山元トレセンに放牧に出され、英気を養う。登録済みの凱旋門賞を含めて、今後のローテは白紙だが「これからの馬だから、また頑張ります」と指揮官は秋のリベンジを誓った。

 

 

ゲシュタルト 4着  

 

 「折り合っていたし、いい感じでリラックスできていましたよ。切れる脚がないので早めに行きましたけど、このきついローテでよく頑張ってくれたと思います」

 

 

ルーラーシップ 5着秋に逆転だ  

 

 良血馬ルーラーシップは5着。四位のダービー騎乗機会3連勝はならなかった。「ストライドが大きいから、本当は外枠がほしかったんだ。道中も外に出せるものなら出したかったんだけど。それでも、最後はもうひと伸びしてくれたし、馬は頑張っている」と鞍上はパートナーをたたえた。僚馬ヴィクトワールピサとともに放牧へ出され、飛躍の秋に備える。





エイシンフラッシュ…牡3歳。父キングズベスト、母ムーンレディ(母の父プラティニ)。馬主・平井豊光氏。生産者・北海道千歳市 社台ファーム。戦績・7戦4勝。10年京成杯に続き重賞2勝目。総収得賞金・273、848、000円。藤原英昭調教師、内田博幸騎手ともに初勝利。

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