東邦・藤嶋、必死にこらえた悔し涙
「選抜高校野球・2回戦、明石商3-0東邦」(26日、甲子園球場)
東邦・藤嶋健人投手(3年)は、あふれそうになる涙を必死でこらえた。試合後のベンチ裏。口元に無理やり笑みを浮かべながら、敗者のお立ち台に立った。
「泣きそうになったけど、ここで泣いたら次につながらないと思って…」
8安打3失点。自己最速タイの146キロをマークしたが「高めに浮いた直球を打たれてしまった」と悔やんだ。七回には痛烈な左越え二塁打を放ったが、得点にはつながらない。プロ注目のエースで4番、そして主将。3つの重責を担った“バンビ2世”の春は、2回戦で幕を閉じた。
「俺について来い」-。藤嶋がかぶる練習用の帽子の後ろには、力強い文字でそう書かれている。昨秋の新チーム結成時、前主将から受け継いだものだ。
明るくおおらかで、自然に周りを笑顔にする男。クラスでも自ら望んで一番前の席に座り、休み時間にはEXILEの曲を歌って教室を盛り上げる。そんな天性のリーダーは、その帽子をかぶって先頭に立ち、チームを引っ張ってきた。
アルプスで声をからした父・廉英さん(59)は言う。「あの子は、負けても絶対に弱音を吐きません」。涙をこらえ切ったエースは「この負けを、次につながる負けにしたい」と前を向いた。1年時から注目を浴び続け、次が最後の夏。頼もしい背中に仲間を引き連れ、全国制覇の夢を追う。