モヒカン男を演じた松田龍平「憧れある」
売れないバンドマンが、妊娠した恋人を連れて7年ぶりに瀬戸内海の小島に帰郷。モヒカン頭がトレードマークの主人公・永吉を、俳優・松田龍平が演じた映画『モヒカン故郷に帰る』が4月9日から公開される。監督は『南極料理人』(2009年)、『横道世之介』(2013年)などの沖田修一。来阪した松田龍平に話を訊いた。
取材・文/春岡勇二 写真/木村正史
「ちゃんと『思い』だけで生きてる」(松田龍平)
──沖田修一監督との仕事はどんな感じでしたか?
沖田監督とは初めてだったんですが、楽しかったです。監督の作品はずっと観ていたので、今回一緒にやれるのがとても楽しみでした。撮影を重ねているうちに、だんだんとここは監督がOKって言うな、ここはもう1回って言うなっていうのが分かってくるんです。それを探っていくのが面白かったですね。沖田監督の思っていることとつながっていくというか。なにか、居心地がいいなって思ってました。
──徐々に分かり合っていくって感じですか?
分かり合っていくとも少し違う気がしますね。沖田さんがもう1回って言っても、大きくアクションを変えるとかそういうことじゃないんですよね。眉が動いたとか髪の毛が動いたとか、そんな感覚的な部分で、監督が求めてたことと何かが違うぐらいの加減なんです。それが面白かったですね。しかも監督に、ここはこだわっているんですかって訊いたら「いや、全然そんなことないです」って答えたり(笑)。
──何回もやらされて面倒だな、とかは思われなかったですか?
面白くって何回でもやりたいなって思ってました。
──感性が似ているのかもしれませんね。
そうですね。監督の方はどう思っているのかわかりませんけど(笑)。
──演じられた主人公の青年・永吉は松田さんにとってどういう役でしたか?
こういう青年に憧れているところがあるので、とてもやりたかった役柄でした。
──えっ、そうなんですか。どういうところに憧れるんですか?
うーん、なんですかね。真っ直ぐなところかな。なんかちゃんと「思い」だけで生きてるじゃないですか。頭で考えてないっていうか。
──確かにそうですね。
もうすぐ父親が亡くなってしまう状況のなかで、一緒に居る家族はそれぞれいろんなことを考えると思います。どうしようとか、なにをしてあげたらいいんだろうとか。でも、永吉は「そうか、オヤジ死ぬかもしれないんだ。だったらオヤジの願いを叶えてあげよう」ってすごくシンプルに考えるんですね。それがいいなと。誰かが死ぬかもしれないっていう状況になったとき、こういうやつがそばに居てくれたらいいなって思います。
──なるほど、そう言われるとわかります。ウジウジしてないし、素直に心情が出ていますね。そういうところは松田さん本人とは違う?
僕はいろいろ考えちゃいますね。それで怖くなってしまう。考えると恐れが出てくるんです。また、演じていると、そういう恐れを表現したくなってくるんです。これまで演じてきた役もそういうものが多かったし。ところが永吉はそういうところのない、つまり恐れを感じない、いい意味で振り切れている、これまで演じてきたことのない役だったので、とても面白かったですね。
「柄本さんは裏に愉快な気持ちを秘めている」(松田龍平)
──その父親を演じているのが柄本明さんですが、柄本さんとの共演が初めてというのは意外でした。
そうなんです。ただ、飲みの場では何度かお見かけしたりはしていましたね。
──柄本さんの印象はどうでした?
寡黙な方ですよね。仕事の場でも、飲みの場でも。寡黙で静かなんですけど、それは裏に愉快な気持ちとか、楽しさを秘めているものだというのが伝わってきました。
──実際に共演してみられた感じはいかがでした?
後半のシーンでは、畳の部屋に置かれたベッドに寝たきりで、その脇に仏壇があったりして、これが実生活で僕が祖父と接していたシチュエーションと似ていて、演技にその記憶と雰囲気を重ねて、柄本さんを本当の家族のように感じてました。ただ、柄本さんからは無言のプレッシャーが出ていました。それがさっきも言ったような、内側に愉快なものを含んだ独特のプレッシャーなのかなとも思いました。とても魅力的な方です。
──そして、母親役はもたいまさこさん。初めはちょっと不思議な取り合わせだなと思ったのですが、観たらとてもいい感じの母子に見えました。
僕も最初に台本を読んだときには、もたいさんの母親像がイメージできなかったです。「菊池行けー!」なんてセリフ、どんな風になるのって(母親は広島カープの菊池のファン)。でも、お会いしてみたらもたいさんはすごくパワフルな方だというのがわかって、とてもしっくりきました。
──もたいさん、パワフルですよね。
車の中で「お前はバカか!」って言われながら、もたいさんに髪を引っ張られるシーンがあるんですが、相当力強くて、思わず「離せよ」って言っちゃいました、アドリブで。もちろん永吉としてですが(笑)。でも、使われてませんでしたけど(笑)。
──恋人役の前田敦子さんとも息が合ってましたね。
映画のなかで、もたいさんが前田さんに「ほんまに、あの子で大丈夫?」と訊くと、彼女が「私、そんな頭よくないし、えーちゃんくらいがちょうどいいっていうか」と答えるシーンがありますが、あの台詞の通り、ちょうどいいカップルですよね。前田さんは、余計な垣根を作らないとても素敵な方でした。
──舞台が瀬戸内海の架空の小島で、実際に瀬戸内の島でロケされてますが、なにか島ならではのエピソードとかありましたか?
島ならでは、というわけではないですが、沖田監督は島の人たちのいい顔をなにげなく、でもきちんと撮っていて。沖田監督ならではの面白い撮り方だと思います。
(Lmaga.jp)
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