まさにアトラクション、ペニノの舞台
「演劇界の芥川賞」と言われる『第60回岸田國士戯曲賞』を今年受賞した「庭劇団ペニノ」主宰・タニノクロウ。彼が大阪に長期滞在し、関西の俳優&スタッフたちと作る受賞後初の舞台『ダークマスター』が、天王寺の「オーバルシアター」(大阪市阿倍野区)で5月5日から上演される。体感型アトラクションともいえる斬新な本公演を前に、タニノに話を聞いた。
『ダークマスター』は同名の短編漫画を原作にした、同劇団の代表作のひとつ。洋食屋のマスターに店の経営を任された素人の男が、マスターの指示をイヤホンで聞きながら料理をすることで店を繁盛させるが、次第に彼とマスターが肉体的にもシンクロしていくという、不思議なテイストの物語だ。
本作では、役者が実際に調理をするため、劇場には料理の匂いと煙が充満。さらに、主人公の耳に入ってくるマスターの指令は、観客もイヤホンをつけてリアルタイムで聞くことができ、「これほど近い距離で物語を同時体験できるのは、70席程度の小劇場だからこそ」と話す。最大5品も同時に作るという料理の匂いや耳に直接響く声、果ては大掛かりなセットの仕掛けなど、さまざまな演出が詰め込まれた舞台はほかに類はなく、まさにアトラクション的。演劇ファンでなくても大きな衝撃を受けるはずだ。
今回上演される劇場は、近年「あべのハルカス」などで賑わいを見せる、大阪の下町・阿倍野。「時代とともに滅びようとしているものを汲み取ることや、新しいものを受け入れるかどうかの選択が根底にある物語。すごい早さで街の様子が変化している今の阿倍野でやってみたい」と思ったといい、「セリフを関西弁に直すと同時に、男がどんどん何者かに支配されていくという感覚を、この再演ではより強く見せていきたい」と意気込みを語った。最後に観劇のアドバイスとして、「一つ確実に言えるのは、観たら絶対にお腹が空くので、何か食べてから来てください」とタニノは笑って話した。本公演は5月5日~15日まで、料金は前売3500円、学生3000円。
取材・文/吉永美和子
(Lmaga.jp)
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