戦後一大旋風となった美術展、京都で
1950年代に、日本画、陶芸、生け花、漆芸、染織などの伝統的なジャンルも巻き込んで、美術界に爆発的なブームを巻き起こしたのが「アンフォルメル(未定形なるもの)」。その現象を約100点の作品で振り返り、日本の戦後美術に「アンフォルメル」が果たした役割を考えるのが本展です。
「アンフォルメル(未定形なるもの)」という欧米の最新美術を日本にもたらしたのは、1956(昭和31)年に来日した美術評論家のミシェル・タピエ。その特徴は、作者の行為(アクション)の痕跡が露わで、鮮烈な色彩を持ち、素材の生々しい物質感を強調していることです。日本の美術家たちはアンフォルメルに大きな衝撃を受けました。
展覧会は、タピエが紹介した海外の作家から始まり、アンフォルメルに影響を受けた日本の作家へと移ります。吉原治良、白髪一雄、元永定正など関西ではお馴染みの「具体美術」の作家たち、東京で活躍した岡本太郎、篠原有司男などがいる一方、富本憲吉、熊倉順吉、八木一夫などの陶芸家、井上有一、森田子龍などの書家、堂本尚郎などの日本画家、番浦省吾などの漆芸家がラインアップされており、その多様性に改めて驚かされます。
1956(昭和31)年といえば、敗戦から約10年しか経っていません。日本はまだ貧しかったものの、高度経済成長が始まろうとしていました。また、戦争のため海外の情報が長らく滞り、多くの人が最新の文化に飢えていました。そこに火をつけたのが「アンフォルメル」だったということです。あらゆる分野で高度化と細分化が進んだ今の日本で、このように全ジャンル的なブームが起こる可能性はほとんどないでしょう。みんなで熱く燃え上がることができた時代に、ノスタルジーとうらやましさを覚えました。
文・写真/小吹隆文(美術ライター)
(Lmaga.jp)
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