ROLLYが未来につなぐ、音楽のバトン

昨年活動25周年を迎えたミュージシャン・ROLLYが、自ら影響を受けたジャパニーズロックのカバーアルバムを発表。「サディスティック・ミカ・バンド」や「はっぴいえんど」などジャパニーズロック黎明期に登場した1970年代初頭のグループから選曲した前作に続き、今年8月には『燃えろいい女』や『雨あがりの夜空に』など1970年代中期~後期の楽曲から選曲した『ROLLY’S ROCK THEATER』を発売した。10月15日に「Music Club JANUS」(大阪市中央区)で行われるライブを控えたROLLYに話を聞くと、歌い出すわ、寸劇が始まるわ・・・。約2時間にも及ぶ超ロングインタビューをギュッと圧縮してお届けする。

写真/渡邉一生

「デビューから一貫してマスターベーション」(ROLLY)

──昨年カバーアルバム『ROLLY'S ROCK CIRCUS』を出されて、反響はいかがでしたか?

全国の「イオンモール」の会場などをいろいろとまわりました。そうしますとね。買い物にやって来たおじいさん、おばあさん、若夫婦と子どもみたいな家族が、「サディスティック・ミカ・バンド」なんかを演奏しますと足を止めて聴いてくれ、しかも一緒に歌ってくれましてね。で、懐かしんで買ってくれるんですよ。それを買ってくれた方が、アルバムに入ってる「四人囃子」や「はっぴいえんど」を聴くきっかけになってくれたらうれしい。

──1970年代のジャパニーズロックって何が魅力なんでしょう?

各バンドごとのカラーが個性豊かでしたわ。「四人囃子」の世界観ときたら、ものすごい不気味な和風の文学ですよね。昔のアングラ映画を見てるかような歌詞の世界観。そして「外道」の独特のスピード感、パンク以前のパンクロック感、さらに「フラワー・トラヴェリン・バンド」の仏教的世界観・・・。各バンドが非常に個性的でした。

──今回の『ROLLY’S ROCK THEATER』をレコーディングするにあたって選曲の基準は?

(前作に続いて)「外道」「はっぴいえんど」「サディスティック・ミカ・バンド」「四人囃子」はやろうと。そしてビートルズで言うと『赤盤(タイトル:ザ・ビートルズ1962年~1966年)』『青盤(同:1967年~1970年)』みたいに、前回は70年代前半の質感を、今回は70年代後半ぽい感じ。ゆえに、原田真二さん、ツイスト・・・、ギタリストが佐藤ミツルさんに変わった後期の「四人囃子」などを。

──アレンジはどれも比較的原曲に近い感じですね。

わりとね。例えば、河内音頭をトランス風にやってみましたっていうやり方はしてないですね。なんでかって言うと僕が一番好きな音楽を一番好きなスタイルでやるっていうのがテーマで。『それコピーみたいやん』って言われそうですが、違うんですよ。何が違うのか自分でもわからないのですけど。

──確かに、カバーアルバムでの空気感は原曲と同じなんだけど、その良さをさらに引き出してると感じました。聴き比べてもイントロやソロなんか、ギターの入る一発目の音とかがしびれる感じがして。

あぁ、うれしいですね。しびれる感じをちょっと3割増しぐらいにしてあるでしょ、全部。全体のかっこよさを色濃くしている。それはやっぱり私がその楽曲のファンであるがゆえに、ここをよりシビレさしたろうとか、世良公則さんの歌を3倍ぐらい濃厚に歌ったろうとか。それがファン心理で、だからこそ原曲の良さを崩したくない。より一層カッコいいものにしたい。そして、現代のシステムでレコーディングしてるから、多少音質も良くなっていると思う。でもね、ぼくは良いんですよ。マスターベーションって言われても。だってマスターベーションだから(笑)。

──認めますか。

認めますねぇ。いやぁ、もう僕、デビューして一貫してそうですよ。全部。もう自信をもって私は、音楽はもう、死ぬまでそのつもりです。自分が良いと思わないものをやるつもりはないですよ。あんまり良い意味で言わないじゃない? マスターベーションになってるっていうのは。でも、あえてそれを言われても、『そうでございます』と自信をもって言うわ。なんだろう。『オレはマスターベーションなんかじゃねえよ』って言わないね。自信をもって『そうだ』と言い切れる。

「音楽のバトンを次々と渡していく」(ROLLY)

──今回はカバーアルバムですが、1曲オリジナルの新曲『1978』が入ってますね。

「高槻市民会館」でクリスマスコンサートを「BOW WOW」がやると聞いて、1978年に初めてプロのロックコンサートを見たんですよ。そこで見た山本恭司さんの超絶なギタープレイにしびれてしまいました。いまでは山本恭司さんと2人でステージに立ったり、中学のときに燃え上がるように聴いていた「外道」のレコーディングに参加したり・・・。そして、僕が「すかんち」でデビューした頃に客席で聴いていた子どもたちが、今プロのミュージシャンになって活躍している・・・。そんな音楽のバトンを次々と渡していくような気持ちをこの曲に込めました。

そういえば自分自身も忘れていたけど、「ザ・シュレルズ」(※)を知ったのは、「レインボー」が演ったからだったっていうことをさっき気づいたの。カッコいい曲だなぁと思って買ったわ、と思い出した。カバーをやるっていうのはそういう意味だと。良い曲だなぁと知って、そのルーツを広げていく。だから、僕はこのアルバムを聴いて、「四人囃子」や「チューリップ」や「はっぴいえんど」を、また掘り下げていってもらいたいわけです。

(編集注釈:1958年にアメリカで結成された黒人女性コーラスグループ。ビートルズにも影響を与え、レインボーは全米1位となった『Will You Love Me Tomorrow』をライブでカバーしている)

──そういえば、「マキシマム ザ ホルモン」の楽曲で、ローリーさんのフレーズが引き継がれているとか。

もう、笑っちゃったね。『恋のメガラバ』をテレビで見たときに、メタルにしてはえらい明るい曲やなって思ったら、ギターのソロが完全に自分が若い頃に弾いたフレーズ、そのままやってくれてて、うわ~!うれしい~!って思いましたね。当然、怒らないよ。うれしいに決まってるじゃない。自分のプレイを真似てやってくれてるんだから。そして、この曲を聴いた誰かが、またそのフレーズを伝えていく。いつのまにか、もう誰が考えたのか分からんけど、このフレーズカッコいいよね、って。「チャック・ベリー」の『ジョニー・B.グッド』のあのフレーズ、定番となってるクラシックのバッハのフレーズ、リッチー・ブラックモアはね『第九』を演ってるし・・・。それを聴いたキッズは、それがバッハなのか、ベートーヴェンなのか知らなくても、死んでも音楽が伝わっていくってのは、自分がこの地球に生まれて、生きた証でもあるね。

──お話を伺って、ROLLYさんが抱いてらっしゃる70年代の偉大さが垣間見られた気がします。

僕は70年代に、いや、中学生の時にコレを聴いたから、よりそう思ったんだろうね。今の音楽に対する想いとは違う。だから、2016年の音楽を好きな若造が四十過ぎたときにも、その時の若者の音楽に対して、『何が良いん、こんな音楽』って言うだろうし(笑)。僕も思ってるんですけど・・・。いや、コレ最終的には、そこは音楽家として最終的に認めた状態でおらないとイカン!ということを、いま気がついた! しゃべりながら。はい。

(Lmaga.jp)

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