映画『帝一の國』で菅田将暉「生まれて初めてセリフが・・・」

全国屈指の頭脳をもつ800人のエリート学生が通い、そこで生徒会長をつとめた者は、将来の内閣入りが確約されているという日本一の超名門・海帝高校。そこへ「総理大臣になって、自分の国を作る」という野望をもつ1年生・赤場帝一が入学する。漫画家・古屋兎丸の波乱爆笑の学園コメディの実写化映画『帝一の國』がついに公開された。出演は、菅田将暉ほか、野村周平、竹内涼真、間宮祥太朗、志尊淳、千葉雄大ら、主役級の若手俳優がずらり勢揃い。その作品について、主演の菅田将暉と永井聡監督に話を訊いた。

取材・文/ミルクマン斉藤 写真/バンリ

「これはやっぱり自分が演りたいなぁと」(菅田将暉)

──古屋兎丸さんの原作漫画は、映画出演のオファーが来る前に読まれていたということですが。

菅田「もともと古屋先生の漫画好きなんで。はじめから僕のためにあるような役だと思いました。・・・って、まあ、『帝一の國』をやるからには、それぐらい野心のあるコメントしとかなな、っていうのもありますけど(笑)、ほかの誰かに演られると後悔しそうな予感がしたんですよね。これはやっぱり自分が演りたいなぁと」

──主人公の赤場帝一は、極端にカリカチュア(戯曲化)されたキャラクターではあるけれども、菅田さん的には『溺れるナイフ』や『ピンクとグレー』に繋がるカリスマティックでデモーニッシュ(鬼神に取りつかれたような様)な感じと、『ディストラクション・ベイビーズ』(真利子哲也監督)のネズミ男みたいな姑息さが同居する役ですよね。

菅田「そうですね」

──しかも、古屋さんの漫画はどこか昭和のアングラの匂いがします。原作には寺山修司のあからさまなパロディも出てきますが、菅田さんは寺山原作の映画『あゝ、荒野』(2017年10月公開)にも出演されましたよね。そういった過去の演劇や文化への興味とかありますか?

菅田「蜷川幸雄さんの舞台(2014年『ロミオとジュリエット』)に出たときには、そんな話をよくしてましたね。唐十郎さんの息子さん(大鶴佐助)とそのとき一緒だったんで、(唐さんが)稽古場を見に来られて。何を言っているのか判らなかったですけど、ワーッて叫んで帰って行かれました(笑)。ただなんか怒られたみたいな」

──え、怒られたんですか(笑)。

菅田「たぶん怒られました。何を怒られたのか聞き取れなかったんですけど(笑)。アンダーグラウンドというものが何なのかよく判らないんですけれども、でも大衆性があって人に伝える必要があるものと、自分が面白いと思うもの・自分が好きだと思うものとの差っていうのは大事なところですよね」

──その点、菅田さんってそのあたりのバランスが、作品のチョイスといった面でも上手く配合できているように感じます。

菅田「ああ、うれしいです。そこは僕もそうしたいと。ただ、いろんなことをやりたいと言うだけなんですけれどね。それぞれの作品にそれぞれの面白さがあるのに、両立している人がいなかったので、じゃあ、僕がやってやろうということなんです」

──今回は特に、菅田さんの「お笑い好き」の側面が大爆発しているような気がします。いや、本当に爆笑でしたよ、私は。

菅田「ホントですか? よかった~!」

「呼吸の量が調節できなくなって・・・」(菅田将暉)

──とりわけ、帝一の最大のライバルと目される大鷹弾(竹内涼真)の外部入試テストの結果に勝手に挑んで、点数勝負で勝った負けたするじゃないですか。通産省官僚の父・譲介(吉田鋼太郎)と答え合わせをするシーン。

菅田「そうですね、あんなシーン無いですからね。原作はひとりで答え合わせしてるだけですから」

──でも、あの方がずっと映画的じゃないですか。全体的に原作からのアレンジがとても巧みですよね。ちょっとした末節の膨らませかたとか、逆にエピソードをばっさり切っても面白い部分は別の形で活かしてたり。

菅田「それはもう、オシャレ監督の技ですから(笑)」

──オシャレかどうかは判んないですけど(笑)、でもあのシーンは、吉田鋼太郎さんとのタイマン勝負として相当見応えがありましたね。徹底的にナンセンスなのに、丁々発止の演技合戦(予告編の0:44あたり)。ほとんど『ごっつええ感じ』の最狂コントを見ているような。

永井「撮影したのは夜遅いときで、僕もスタッフもダウンとか着こんでもまだ震えるくらいだったんですよ。マイナス2度で。そのくらい寒いのに、この人たちはワイシャツ一枚であんなこと叫んでいて(笑)。で、熱くなってきちゃって上着いらないってくらい集中して演ってたので。こちらは凍えるくらいなのに、本当の汗かいてましたし」

──けっこうな長回しでしたよね。あれ、ワンカメだったんですか?

永井「最初はもっとカットを割るつもりだったんですけれども、この人たちが演ってることを素直にポンとカメラを置いて撮ってるだけでいいな、と。役者のパワーというか、間近に見ていて面白かったし、『夜中に何やってんだ、この2人は』みたいになってスタッフも笑いこらえるのに必死で、こういう瞬間ってあるんだなと思いました。あのときの緊張感は2度とない感じがしましたね。やろうと思ってもできない。ああいうときは、カメラとか何も凝らない方が面白いんだな、というのがよく判りました」

菅田「僕、生まれて初めてセリフが言えなくなりましたもん。テンション上がりすぎて、呼吸の量が調節できなくなって。舞台でもあんなことなかったですね」

「本当にどうしようもない映画(笑)」(永井聡監督)

──この映画は、誰が見ても学園ドラマの衣を被った政治ドラマなわけですが、原作よりも格段に帝一と東郷菊馬(野村周平)、その父親の間にある敵対関係・・・吉田鋼太郎さんと山路和弘さんの政争劇がギラギラと描かれてます。

菅田「吉田さんと山路さんの2人が映るシーンだけ、ものすごい重厚感がありますよね(笑)。ありがたいですよね」

永井「あそこだけは映画撮ってる気分になった(爆)」

菅田「じゃあ、ほかは?(爆)」

永井「菅田くんらも、もちろん芝居上手いんだけど、年齢重ねた人たちの芝居ってやっぱ見ちゃう。重厚感が違いすぎるんですよね」

菅田「あれはすごかったですね。『シン・ゴジラ』かと思った(笑)」

永井「あんな緊迫したシーンの後に吉田鋼太郎さんがいきなりブリーフになったりするんですよ。で、菅田くんが半分乳首出して、本当にどうしようもない映画だなと(笑)」

──でも、ああした重厚なシーンがたまに挟まれるから、これが正しき政治劇なんだということが改めて観客にインプットされるという(笑)。今回、ほぼ同世代の、それぞれ実績を積まれてきた俳優である野村周平さん、竹内涼真さん、間宮祥太朗さん、志尊淳さん、千葉雄大さんらと大挙組まれてみてどうでしたか?

菅田「今でこそ、みんなイケメン軍団になってますけど、僕らは高校生の頃から会ってて。周平なんかは初めての連ドラが一緒だったし(2010年『ハンマーセッション!』)、17歳のときに会ってたりするんですよ。だから、僕はなんか違った感動が最初あって。中身は全然変わってなくてあのときのままなのに、出会うステージがすごく大きくなってるというのがなんかうれしいなぁって」

──みなさん役者的な運動神経の良さがあって、観てて心地いいんですよね。特に関西人はそう感じるかも知れない(笑)。仲の良さは透けてみえるんだけど、がっつり闘っているというか。

菅田「それはうれしいです。やっぱりお芝居してみるとすごく安心感があって。みんな普段会うとお芝居の話なんて1ミリもしないんです(笑)。でも、いざ現場に入ってカメラの前に立つと、なんか信頼して背中を預けられる感じがありましたね。変な照れももちろん無いし。みんなプロやなぁって。あと、地味に僕がすごいなと思ったのが、みんな風邪ひかないんですよ。ちょうどインフルエンザが流行った時期で、エキストラさんとかにも罹った人がいるなか、結構過酷な撮影のなかにいたのにメインの6人は少しも体調崩さずに。みんなプロになってきたんかなぁ、って感じましたね」

──そもそもこのキャスティングって、漫画の再現率が異様に高いですよね。しかもモノマネってわけでなく。

永井「そうですねぇ。だけど、キャスティングしたときに似てるかどうかはあまり考えなかったんです。芝居優先で選んでいるんですよ。ヘアメイクさんもすごく優秀だったけど、本当は似てないんだけど似てるように見せられるというのが、ポーズを含めて、それが菅田くんをはじめとする6人のすごいところだなと、改めて思いましたね」

(Lmaga.jp)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

関西最新ニュース

もっとみる

主要ニュース

ランキング(芸能)

  1. まるで俳優?!金メダリストのイケメン父をさんま絶賛!「出て1回でホームラン」目元そっくり、ワイルドな口ひげ SNSも反応

  2. 「さんま御殿」39歳女子アナの変わらぬ美貌にネット騒然!「若すぎる」「老けないなー」静岡県移住の2児ママ

  3. 辻希美 次男が卒業式、三男卒園式と同じ服&鞄で着回し 次男は長男おさがりスーツ「子供の成長は早すぎる」

  4. 「見とれちゃうな♥」めるる 上品「ぽわぽわ」私服姿が別格の可愛さ「最高似合う」「ブーツ可愛いんだけどー♥」

  5. 藤田紀子 白鵬と同じ病気になり「私はもう死ぬ」…花田虎上が明かす

話題の写真ランキング

写真

リアルタイムランキング

  1. 「ギャップが凄い」引退の美人アスリート 雰囲気激変の私服姿に衝撃 女優級オーラに「特級の美人」「言葉が見つかりません」

  2. 「ギャップが凄い」引退の美人アスリート 雰囲気激変の私服姿に衝撃 女優級オーラに「特級の美人」「言葉が見つかりません」

  3. まるで俳優?!金メダリストのイケメン父をさんま絶賛!「出て1回でホームラン」目元そっくり、ワイルドな口ひげ SNSも反応

  4. 東尾理子 大谷翔平と「ばったり目の前で」遭遇 VIP感満載開幕戦舞台裏 カーショーの後ろで練習も見学

  5. 朝阪神が初白星 タイガースにも反攻期待 快投続きの青柳に「すごいですね」

注目トピックス