三沢商・野田 “消火の恩”勝利ならず

 「全国高校野球・2回戦、花咲徳栄15-3三沢商」(11日、甲子園)

 29年ぶり出場の三沢商(青森)のエース・野田海晴(3年)は3回1/37失点でKOされた。師弟関係にとどまらないほどの恩人、浪岡健吾監督に悲願の夏1勝を届けられなかった。

 野田の将来の夢は「消防士」。実は小2の時、青森の実家が火事になった。幸い、家族は全員無事だったが、全焼で家を失った。

 目の前で消火活動をする消防士たちの勇姿を目に焼き付けた。そして「僕も人のためになる、やりがいのあることをしたい」と野田少年は心に誓った。

 のちに知ったことだが、何と三沢市消防本部に勤務する浪岡監督が、その消火活動に参加していた、という。三沢商で師弟の絆で結ばれるのは運命だった。

 1年の夏に監督の教えで右横手に転向。そこから、スライダー、シンカーを習得し、エースへと成長した。監督とともに、聖地にたどりついた。

 だが、花咲徳栄打線には通用しなかった。五回まで抑えて2番手の左腕・冨田尭につなぐ予定が大量失点。「本当にごめん」と言い残しマウンドを譲った。

 「監督に甲子園で1勝を届けたかった。申し訳ない」。後輩らに夢を託し、未来の消防士は涙をこらえた。

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