亜大・花城 難病乗り越え胴上げ投手に

 「第46回明治神宮野球大会・大学の部決勝、 亜大2-1早大」(18日、神宮)

 亜大が延長十四回に相手のミスに乗じて勝ち越し点を奪い、2年ぶり5度目の優勝を果たした。その原動力となったのが延長十三回1死満塁のピンチをしのいだ花城直投手(4年・八重山)。昨年5月に診断された「黄色じん帯骨化症」を乗り越え、鬼気迫る投球で日本一を引き寄せた。

 「ピンチで行くのは分かっていたので準備していました」と花城。同点の延長十三回、1死一、三塁とサヨナラのピンチにクリーンアップを迎えたところでマウンドに上がった。絶体絶命の状況でも「何としても日本一になりたかった」と茂木を四球で歩かせ、満塁となったが、続く丸子を低めに鋭く落ちるスプリットで一ゴロ併殺打に仕留め、鮮やかにピンチを脱した。

 「ゴロを打たせたかったんで、とにかく低めを意識しました」と振り返った右腕。味方が勝ち越した直後の延長十四回はきっちりと3人で仕留め、マウンドで両腕を突き上げた。その花城を囲むようにできた歓喜の輪。だがほんの1年半前までは選手生命の岐路に立たされていた。

 突然、両足に力が入らなくなった。何も無い場所でいきなり転倒することもあった。診断は国が難病指定している「黄色じん帯骨化症」-。脊椎の後ろにある黄色じん帯が骨と化し、神経を圧迫して足にマヒを引き起こす。近年では楽天・星野仙一元監督や、ソフトバンク・大隣らが発症した難病だ。

 昨年5月には「大丈夫だからと先生に言われ、野球を続けるために」と手術を決断した。1カ月の入院後、リハビリは「本当に歩くこと、走ることから始まった」と明かす。その時は野球を続けられるかどうかも分からなかった。「胴上げ投手になるとか想像もできなかった」と言う。

 それでも苦しいリハビリに立ち向かえたのは「本当に周囲のささいな一言があったから」と花城は明かす。「『頑張れよ』とか『大丈夫か』とか。本当にささいな一言が、受け取る側にとっては何よりも励みになるんです」。そして病気を乗り越えたことで「1球、1球を大事にできるようになった」と力を込める。

 丸子を併殺に打ち取ったスプリットは完ぺきなコースに制球されていた。絶体絶命のピンチであの1球を投げられた精神力、そしてチームへの思い-。「本当にこの仲間と日本一になりたかった。今は支えてくれたいろんな人に感謝したい」と花城は笑った。野球生命の危機をプラスに変えて見せた右腕。大学生活最後の大会で胴上げ投手になるストーリーは、神様が用意してくれた最高のプレゼントだった。

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