高橋純平が備えるプロのセンス

 ドラフト1位で3球団が競合し、ソフトバンクが交渉権を獲得した県岐阜商・高橋純平投手(18)。MAX152キロのストレートに注目が集まるが、今年、高校生を見た中で最も優れていたのが変化球の精度。今年8月に行われた高校日本代表対大学日本代表の壮行試合(甲子園)で、彼が投じたスライダーに驚きを隠せなかった。

 場面は2死一塁で打席に迎えたのは日本ハムからドラフト6位指名を受けた慶大・横尾。初球、135キロの高速スライダーをファウルされた。タイミングがしっかり合ったバックネットに突き刺さったファウルを見て、高橋は「このまま、このスライダーを投げ続けたら打たれる」と感じたという。配球の中では球種を変える選択肢もあった。だが高橋は「だんだん曲がり幅を大きくしていく方がいいかなと思った」と冷静にそのシーンを振り返る。

 2球目、131キロのスライダーは1球目よりもやや大きく曲がって外角ギリギリを突いた。結果はボールとなったが、続く3球目はさらにスピードを殺して曲がり幅を大きくした126キロのスライダーで外角低めを突き、ストライクを奪った。最後は高めを狙った148キロの直球で空振り三振。投げた球種は2種類でも、1球、1球にアクセントをつけていた。

 試合後、理想的な攻め方だったのではと聞いたが、本人は「いや、いっぱいいっぱいです。打たれる気しかしなかったので。何とかという感じです」と苦笑いで答えていた。初対戦の大学生を相手にたった1球で危険を察知。その上でスライダーを丁寧に投げ分けて見せた技術は高校生のレベルを超えている。

 “投げるセンス”-。今年、アマチュア野球担当になってよくプロのスカウトからこの言葉を聞いた。コントロールであったり、イメージ通りに変化球を操れる指先の感覚。そして危険を察知する能力。ただ単に速いボールを投げるだけでなく、そういった側面をプロのスカウトはしっかりと評価していた。

 これまで10年間、プロ野球担当としてルーキーを見てきたが、MAX○○キロと表記されるように球の速い選手は数多くいた。ただボールが速いだけの選手は少なからず壁にぶち当たってきた。そこから1軍の壁を突破していった選手は、変化球の精度、コントロール、そして投げるセンスを持っていたように思う。

 以前、巨人時代の上原がラジオ番組でこんな話をしていたのを覚えている。「ボールをリリースする前に“打たれる、やばい”と感じる時がある。その時はワンバンになっていいから、たたきつけるように投げる」。それができるからこそ巨人で先発、抑えとフル回転し、メジャーでも屈指のリリーフ投手として成功している要因ではないだろうか。

 今年1年、高橋純平をアマ野球の現場で見てきた。あの1試合に限らず、右腕は“投げるセンス”を所々で見せてきた。データ的にも彼が奪った三振数は投球回数をはるかに上回っている。1年間、しっかり戦える体力さえ整えれば-。入団会見で語った「日本のエース」になれる日は必ず、やってくる。(デイリースポーツ・重松健三)

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