【競輪】珍しい名前を眺めて楽しむ
「競輪記者コラム 仕事・賭け事・独り言」
プロ野球選手には珍しい名前の選手が、不思議と多い印象がある。現在活躍している選手でも広島の梵、DeNAの筒香など。かつてトルネード投法で海を渡った野茂も、かなり珍しい名字だろう。実は全国で活躍している競輪選手も、珍しい名前は少なくない。
まずは一般的に見てもインパクトが強い名前を紹介しよう。最初は興呂木雄治(25)=熊本・96期・A1=(こおろぎ・ゆうじ)。熊本県、宮崎県には多い名字だが、日本神話に由来すると言われており、決して昆虫とは関係ない。
魚屋周成(24)=大分・99期・A1=(うおや・ちかよし)も、かなり印象的な名字だ。先祖が魚屋(さかなや)に関係していたかどうかは魚屋(うおや)自身も「本当のところは分かりません」ということだった。競輪選手の魚屋。文字にすると、かなりややこしい。
窓場加乃敏(47)=京都・59期・A1=(まどば・かのとし)と窓場千加頼(23)=京都・100期・S2=(まどば・ちかより)は親子で活躍している。姓だけでなく名も特徴的だから、出走表を見るとかなり目立つ。同様に姓と名が特徴的なのは元砂勇雪(23)=奈良・103期・S2=(もとすな・ゆう)と元砂七夕美(19)=奈良・108期=(もとすな・なゆみ)の兄妹。妹の七夕美はガールズケイリン4期生として7月にデビュー予定だ。
一般的には珍しくない名前でも、競輪選手であるため中野浩一(53)=福岡・47期・A3=(なかの・こういち)は目を引く。世界選手権V10の中野浩一(35期・引退)と同姓同名。名前だけで注目を浴びてしまうことは宿命だろう。
競輪のレースでは敵と並走して自分の欲しい位置を奪いにいくことを“競り”と呼ぶ。そこで登場するのが善利裕生(38)=滋賀・82期・A2=(せり・ひろき)。この選手の面白いところは名字こそ“せり”だが、自力で仕掛けられる選手だけに“競り”で争う場面はほとんどない。
一方、宗崎世連(23)=高知・100期・A2=(そうざき・せれん)は“競れん(競ることができない)”を連想させる。ただし、宗崎は先頭で風を切る自力型。ほかの選手の後ろで競ることはまずない。「“競れん”から先行します」と宗崎もネタにするほど。
いかにも勝ちそうな名前は押切勇二(27)=東京・100期・A3=(おしきり・ゆうじ)。押切の戦法はとにかく逃げる徹底先行型。文字通り先頭に立って、ゴールまで押し切る走りが持ち味だ。
日当泰之(27)=青森・92期・A1=(ひなた・やすゆき)も面白い。競輪はほかの選手と連係して走るライン戦が基本。日当をマークする選手がいた場合には“日当次第で○○選手が差し切る”などと書かれることになる。まるで○○選手は、その日にもらえる金額次第で差したり差さなかったりするように思えるが、そういう意味ではない。“日当の走り方次第で”という意味だ。
ほかにも有名人と同姓同名の選手や、珍しい名字の選手は競輪界には少なくない。最初はレースや車券購入が難しく感じるかも知れないが、選手の名前を眺めてみるだけでも面白い発見があるかもしれない。そんなちょっとしたことからでも競輪に興味を持ってもらえれば幸いと思う。(関西競輪担当・岡 浩司)