勘三郎さん死去、復帰熱望もかなわず…
歌舞伎俳優・十八代目中村勘三郎さん(本名、波野哲明=なみの・のりあき)が5日午前2時33分、急性呼吸窮迫症候群のため都内の病院で亡くなったことが明らかになった。57歳。勘三郎さんは、今年6月に初期の食道がんであることを公表し、摘出手術を受けていた。その後、肺にも疾患が見つかり治療に専念していた。
明るく元気なイメージのある勘三郎さんだが、近年は病魔との闘いの連続だった。2010年末には特発性両側性感音難聴を発症して休養を余儀なくされた。11年6月に復帰したものの、12年6月に受けた健康診断で、初期の食道がんであることが判明。同月18日に治療に専念することを発表した。7月27日にがん切除の手術を受け、治療を続けていたが、今度はARDS(急性呼吸促迫症候群)を発症。9月に転院して、ICUで治療していた。
勘三郎さんは1955年に十七代目中村勘三郎の長男として生まれ、3歳のときに「昔噺桃太郎」の桃太郎で五代目中村勘九郎を襲名して初舞台を踏んだ。05年に十八代目の勘三郎を襲名するまで46年間勘九郎を名乗っていた。
古典の歌舞伎から新作まであらゆるジャンルをこなし、積極的にファン層拡大にも務めた。94年から始めた東京・渋谷区のシアターコクーンで開催する「コクーン歌舞伎」は若者にも人気となった。00年には東京・浅草の隅田公園内に「平成中村座」として江戸時代の芝居小屋を復活させた。また、海外での公演にも挑戦し、04年、07年にはニューヨークで歌舞伎を上演し話題となった。
歌舞伎以外の舞台にも出演。映画「やじきた道中 てれすこ」(07年)やNHK大河ドラマ「元禄繚乱」(99年)では主演も務めた。歌舞伎界以外でも交友は広く、ドラマにも出演。ファン層を広げた。