号泣県議 800万「出張」なぜ通った?
釈明会見での壮絶なる号泣ぶりが、逆に世間の耳目を集める結果となった、兵庫県議・野々村竜太郎氏(47)の政務活動費問題。結局、何を説明・主張したかったのかは全くもって意味不明だが、そもそも3年間で345回もの日帰り出張費(計約800万円)の申請が、なぜ領収書なしで通ってしまうのか。1500件超の苦情処理に追われ、電話がつながりにくい兵庫県議会事務局に聞いた。
‐‐政務活動費の取り扱いは、各議会ごとに運用規定が個別にあるようだが、どのように決められたものか。
「規定の手引き書は事務局で作りますが、内容は全て議長が承認したものです」
‐‐議長1人で決定?
「実情は、各会派の『代表者会議』で決められてます」
‐‐改正、見直しを含め知事も関与できないと聞くが。
「議長承認です。見直しは定期的に行われ、最新版は今年2月です」
‐‐新しい規定のわりに、領収書なしで新幹線運賃まで申請できるのは民間企業ではあり得ない。兵庫県議会の規定は?
「除外規定として『自動券売機で領収書が発行されない場合』『緊急で領収書を取得できない場合』とあり、その場合『支払い証明』という形の自己申告になります」
‐‐野々村議員の場合、全てに領収書添付がなかったようですが。
「この除外規定にあたる(との主張)ということです」
‐‐地下鉄やバスならともかく、新幹線や特急列車の切符は、券売機で領収書が出るのは常識ではないかと。
「それに関しては、ご本人が会見で『知らなかった』と説明している、としか…」
‐‐規定上では問題がないと?
「そうなります」
‐‐民間企業だと伝票に疑問符がつけば、経理からの突き返しは常識。ですが議員が出してきた申請を、事務方の皆さんでは突き返しにくいのが実情では?
「別の例えになりますが、交通費が当日に支給された会合の交通費を、勘違いして二重で申請してしまう議員も少なくなく、こうしたものまで細かくチェックして、書き直しをお願いしてます」
‐‐野々村議員の場合、回数、金額とも突出していたのでは?
「回数は、日々の交通費を請求される議員も多いですから。ですが県内近郊の電車賃1000円程度が多く、(野々村氏の)金額は1回あたりもかなり高額です」
‐‐加えて、訪問目的・相手も具体的な記載がなく、明かせないとの主張。
「視察費など『調査研究費』なら必ず目的や訪問先の明示が必要ですが、今回の『要請陳情等活動費』は陳情を受けた相手への配慮なども必要で、日付、訪問地域、費用だけを記入すれば申請できる規定なんです」
‐‐野々村議員の申請内容はあまりに不自然だった。
「規定上は問題なかったのですが、あまりに遠方出張が多く、金額も高額なので、確認できているだけで一昨年、昨年度に関しては、活動内容を詳しく書いてほしいとお願いしました」
‐‐結果は?
「書面をお返ししましたが、最終的には再度、同じ内容で申請がありまして」
‐‐それ以上は、事務局では要求できなかった?
「規定上は問題がないですからね」
同県議会は7日に各会派幹事長らによる「代表者会議」を開き、今回の問題に関して対応を協議する。事実上“抜け穴”が見つかった格好となり、民間の反発を買っている政務活動費の運用規定の見直しも迫られそうだ。