武田鉄矢 健さんの「孤独」を語る
俳優の高倉健さんが都内の病院で10日に83歳で死去していたことを受け、映画「幸福の黄色いハンカチ」で高倉さんと共演した俳優の武田鉄矢(65)が都内で会見し、涙ぐみながら孤高の俳優であるがゆえの「孤独」を思いやった。
武田が撮影の合間に「健さんは富士山だから。立っているだけで絵になる」と話しかけると、高倉さんは「富士山は寂しいぞ」と苦笑いした。武田が脚本・主演などを務めた映画「刑事物語」に高倉さんが特別出演した際には「お前は駆逐艦みたいでいいな。空母はつらいぞ。ジッと待っていなくちゃならない」とこぼしたという。
私生活でも、1971年に故江利チエミさんと離婚した後は独身を貫き、家族に囲まれた温かい家庭を築くことはなかった健さん。「幸福の-」の作品テーマを武田に指導した際にもその孤独をかいま見せた。
「テーマは“お帰りなさい”だ。人間にとって、家に帰ったときに奥から『お帰りなさい』という一言が返ってくることが、どれだけ幸せなことか。それを山田洋次は描きたいんだ。少年のように語る健さんが実は“お帰り”がない家に住んでいたから、強く反応したんだなと印象に残っている」。
武田はさらに、山田洋次監督が、健さんが宮本武蔵役、武田が偽者役で再タッグを組む夢企画を持っていたことも吐露。「でも共演は1本で十分。健さんにとっては200本の内の1本だけど、僕にはすべて。200本分の価値があった」と声を詰まらせた。