ＮＨＫは９日、都内で昨年５月１４日に放送された情報番組「クローズアップ現代　追跡“出家詐欺”～狙われる宗教法人～」でやらせ報道があったと一部で報じられたことに対し、局内に設置した調査委員会による中間報告を発表した。

　やらせに関しては、告発した「出家を斡旋するブローカー」と番組で紹介した男性（以下＝Ａ氏）と取材した記者らとの間で、証言の食い違いがみられた一方で、取材上の裏付けが不十分で誤りがあった点や、不適切な構成、過剰な演出などが浮き彫りとなった。

　裏付け不十分などの問題が指摘されたのは、多重債務者の男性（以下Ｂ氏）が、ブローカーのＡ氏に出家を相談するシーン。撮影場所で「ブローカーの活動拠点」と紹介した大阪市内のビルの１室について、記者はこの相談場所の設定に関与しておらず、十分な裏付けがないまま番組内で「活動拠点」としており、同委員会は「誤り」と指摘した。

　またこのシーンは、本来の撮影した流れとは異なった形で放送されていることも発覚。Ｂ氏にＡ氏との交渉を依頼し相談する場面を撮影したものが、番組では記者がブローカーの存在を突き止めてインタビューを行った形などになっており、適切さを欠いた構成で過剰演出の恐れを指摘した。

　Ａ氏が「やらせ」と告発した「記者からブローカー役を演じるように依頼された」ことや「自分はブローカーでない」点における記者らとの証言の食い違いなど、ＮＨＫは「さらに事実関係を明らかにするため、調査を進める」とし、今月中に最終的な調査結果を発表する。

　同番組は、多重債務者を出家させて名前を変えさせ、金融機関から多額の住宅ローンをだまし取る「出家詐欺」の実態と背景にせまり、その対策を探ったもの。その中でＡ氏が「記者の指示による『やらせ』があり、自分がブローカーとして放送された」と、今月１日に放送での訂正を求めていた。

　調査委員会は今回、取材・制作を担当した職員ら１４人と、番組で「出家を斡旋するブローカー」と紹介した男性と「多重債務者」と紹介した男性ら外部の３人から聞き取り調査を行った。