世界的ドラマーが語る、オスカー監督

 今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞など4部門を獲得した映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(公開中)の音楽を担当した世界的なジャズドラマー、アントニオ・サンチェス(43)が13日、東京・丸の内のコットンクラブで会見した。

 サンチェスはパット・メセニー・ユニティ・グループに15年間在籍し、グラミー賞を4度受賞。同じメキシコシティー出身のアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督とは10年来の友人で、映画では全編サンチェスのドラムが鳴っている。サンチェスはメキシコ時代、監督がDJをしていたラジオでメセニーを知った。約10年前、メセニー・グループのロサンゼルス公演に監督が訪ねてきて、友情が芽生えたという。

 「監督はコンプリート・クレージーだけど、グッド・クレージー。本当にクリエーティブなスピリットそのもの。すごいエネルギーが伝染していく。常に即興で作っていて他の人にも求め、最高のパフォーマンスを引き出す。とても要求度が高く厳しい。(主演の)マイケル・キートンに聞いたら『ホントに大変だった』って言ってました。200%の力でやってるのがわかるので、自分たちも最高の力を出さなきゃならないって思わせる」

 サンチェスはまず、映画から抜粋された映像に合わせてドラムを演奏。「セッションは2回行いました。1回目は素材がなかったので、監督がドラムキットの前に立って口頭でシーンを説明し、全てのシーンについて50~60テイクとりました。そのデモを監督が現場でかけながら、実際のシーンを撮影しました。2回目は完成に近い作品を見ながら、今やったようにとり直しました。完パケの映画を見て、あまりにも音量が高かったのでびっくりしました」と、音楽の制作方法について説明した。

 イニャリトゥ監督の指示は「きっちりオーガナイズされたものではなく、ジャジーなもの」というもの。「ジャズミュージシャンというのはとにかく周りに反応する職業。バンドメンバーの演奏に反応するのと、映画のストーリーや映像に反応するのは全く同じでした」と言う。

 「主人公の内なる葛藤や苦悩、痛みを表現するのがまさにドラム。彼のエモーショナルな側面を表現するのが大切でした。アカデミー賞を取る作品の音楽を、自分が作ってきた音楽をそのまま全く変えることなく担えた。1回しかない機会を得られてたいへん光栄です」と、大きな成果に喜んだ。

 会見では日本を代表するジャズミュージシャンの菊地成孔(51)が質問を担当。「マッシュ(混合)の斬新さにおいて比類なきものがある」「在米移民カルチャーの最上質のもの」「ジャズに対するリテラシーが全くなくても、多くの人が画面と演奏との融合に心を奪われることでしょう」と映画を絶賛した。

 サンチェスは14日にブルーノート東京、15~17日にコットンクラブで「アントニオ・サンチェス&マイグレーション」の来日公演を行う。自身のユニットでの来日公演は初。

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