不遇時代が築いたPerfumeの今

 女性3人組テクノポップユニット・Perfumeが2006年に発売した1作目のアルバム「Perfume~Complete Best~」がプラチナディスクに認定された。07年に「ポリリズム」でブレークする前のリリース作品で、初回の出荷枚数はわずか3000枚だった。9年をかけて25万枚を出荷した息の長い売り上げは、そのまま彼女たちの衰えぬ人気ぶりの象徴だろう。05年にメジャーデビューし、今年9月21日で10周年を迎える。特設サイトでは謎のカウントダウンも始まった。レコード会社や所属事務所スタッフの証言を基に、改めて3人の魅力を分析する。

 スタッフの誰もが口をそろえるのは、“自己プロデュース能力”の高さだ。色を染めないなど「髪」にこだわり、衣装も「あ~ちゃんとかしゆかがスカートで、のっちがパンツ」が基本形。3人は「暗黙のルール」と呼んでいるという。

 一方で、スタッフの1人は「衣装ひとつとっても『パリコレでレース(のブーム)が来てる』など世界各国のファッショントレンドを取り入れ、トータルでビジュアルを考えている」と明かす。

 細部にこだわりながら、大きく見た目は変えない。いわば「変わり続けながら、変わらぬイメージを保つ努力」を続けている理由は、売れない時代を長く経験しているからだろう。もともとはアクターズスクール広島で結成されたユニット。03年に上京し、05年にメジャーデビューしたが、不遇時代が続いた。

 当時を知るスタッフは「東京・亀戸のショッピングセンターでライブをしていたけど、誰も立ち止まってくれず、配ったチラシが地面に踏みつけられているのを帰りに目撃したり…」「秋葉原の歩行者天国ではライブができなかったので、歩道の内側のお店に小さなステージを作り、ガードレールを隔てた歩行者天国の方に披露していた」などと苦労話は枚挙にいとまがない。

 05年は、ちょうどAKB48が劇場をオープンした年。当時の状況を事務所関係者は「今は“地下アイドル”という言葉があるけれど、あの時はみんなが地下の状態。アイドルのイベントそのものが今ほど多くなかった」と説明する。

 数少ないイベントでは、モーニング娘。の元メンバーとPerfumeとEXILEの妹分・Dreamが一緒に出演するなど、アイドルグループもガールズユニットも一緒くたで、未分化の時代だった。

 ジャンルレスなイベントで懸命に差別化を図り、誰も立ち止まらないような場所での下積みを積んだからこそ、Perfumeの3人は「売れない人が(スタイルをコロコロ)変えていたら、毎日が『はじめまして』ですよね」と自己プロデュースでイメージの定着を狙っていったという。

 「最大の魅力は」と、レコード会社関係者は言う。「いろんな部分のギャップだと思うんです。楽曲や衣装、パフォーマンスはカッコいいけれど、不遇時代を知っているからこその謙虚さや愛嬌(あいきょう)がある。仲のよい3人が、変わらずに次なる目標に向かっていく。そこを応援していただけてるのでは、と思っています」

 最近、楽曲の魅力を象徴する出来事があった。今月4日に日本テレビ系で生放送された「THE MUSIC DAY」に出演した時のこと。08年に発売したアルバムの表題曲「GAME」をテレビで初披露したところ、ツイッターのトレンドランキング上位を独占。7年前の楽曲にもかかわらず、初めて聞いた視聴者が新曲だと勘違いする書き込みもあった。過去の楽曲を聴いても古びていないことの証だろう。

 メジャーデビュー記念日の9月21日からは、アニバーサリーの10日間企画も待機。現在、特設サイト(www.anniversary-project.com)では謎のカウントダウンが始まっている。次はどんな仕掛けが待っているのか、楽しみに待ちたい。

(デイリースポーツ 古宮正崇)

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