国生さゆり、影のある女優ナンバー1

 会員番号8番が、影のある女優となって目の前に現れた。

 26日に都内で行われたデビュー30周年記念イベントに登場した国生さゆり(48)を撮影した。写真の表情は、ファンの前であいさつした時のもので、スポットライトに照らされた瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。

 司会者の徳光和夫アナが「今や影のある女優と言えば、国生さゆりを思い浮かべる映画監督もいるようです」と話していたが、写真を見ると、確かにうなずける。

 1985年、おニャン子クラブの会員番号8番としてデビューし、翌年にはシングル曲「バレンタイン・キッス」でソロデビュー。オリコン初登場2位に輝きブレークしたが、「あの頃、爆発的な忙しさの中で、自分がやっていることの意味を知ろうと、一生懸命でした」と、あいさつの中でアイドル時代の知られざる苦悩を明かした。

 同世代の私は、リアルタイムでアイドル時代の彼女をテレビで見ていたが、健康的で明るく、楽しそうに歌って踊っているイメージしかなかった。アイドルとは、自己犠牲の上に成り立つものだということを、改めて教えられた気がした。

 人知れず苦悩を抱えていた彼女は当時、バイクの免許を取得して北アメリカ大陸を横断するというアイドルらしからぬ番組企画を自ら立案し、実行した。自分自身と向き合う時間が必要だったのだろう。

 おニャン子クラブを卒業後は、女優として多数のドラマにレギュラー出演し、エランドール賞新人賞を受賞したが、どこへ行っても、アイドル時代のことばかり聞かれ、“脱アイドル”の難しさに戸惑い、時には取材に応じず、事務所に怒られたこともあったという。

 「私生活はほんの一瞬、F1並みでした」と、笑顔で振り返ったが、実際のプライベートは、大物ミュージシャンとのスキャンダル、2度の離婚と波瀾万丈だった。現在、メッセンジャー・黒田有(45)と交際中だが、結婚には後ろ向きだとか。恋愛に不器用で、破局を繰り返す生きざまが、結果としてアイドルの殻を破り、「影のある女優」のイメージを定着させたのかもしれない。

 「私はこれ(女優)しかないので、頑張ります」と、イベントの最後に女優としての活躍をファンに誓った。芸能生活30年、我が青春のアイドルは、人生の荒波を乗り越えて魅力的な女優に成長した。シャッターを切る度に、感慨がこみ上げた。今後の活躍が、楽しみだ。(写真と文=デイリースポーツ・開出牧)

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