ベイビーレイズJAPAN 改名の苦悩

 歌い出しを聞くと、2013年に大ヒットした朝ドラ「あまちゃん」の挿入曲「暦の上ではディセンバー」がすぐに思い浮かぶが、あれ?なんだか曲調が激しい。生バンドを従えているし…。でも、歌っているのは、2年前と同じ5人組アイドルグループ・ベイビーレイズJAPAN。名前に「JAPAN」をつけて改名してから、新たに「EMOTIONAL IDOROCK」を掲げて“脱あまちゃん”とも言えるロックアイドルに変貌している。「一発屋とは言わせない!!」とばかりに音楽性を変えた、その背景とは-。

 改名を発表したのは、昨年12月の日本武道館公演。決断は当然ながらファンの間で賛否両論を呼び、今年2月に新ビジュアルと新たな方向性を示すまでの期間は暗中模索の日々だったという。

 リーダーの伝谷英里香(19)は「改名する意味があったのか、と言う方もいました。名前以外は何も変わっていないのに、新しい部分を何も出せない状態で、私たち自身、道筋が見えなかった」と明かす。大矢梨華子(18)も「(2月までは)衣装も曲も一緒。迷路の中にいるみたいでした」と続けた。

 名前は変わったものの、新名称でのアイデンティティーが不在のジレンマ。導き出した答えが「アイドル」と「ロック」の融合だった。その象徴として、劇団四季のミュージカル「ライオンキング」出身のセンター・林愛夏(19)は髪を金色に染め、林のアイドル界随一と言われる歌唱力をグループ全体でプッシュすると決めた。

 もともと日本武道館公演でも生バンドの演奏をバックにしており、ロックテイストのライブパフォーマンスには定評があった。“口パク”のアイドルもいる中で、バンドに負けぬ歌声とダンスの熱量は最大の武器。改名後の全国ツアーではロックに特化すると腹をくくったことで、さらに魅力が鮮明になった。「アイドル」と「メタル」を融合させたのがBABYMETALなら、こちらは「ロック版」とでもいった趣。グループの個性や輪郭はぐっとシャープになった。

 ロック色を強めたことで、アイドル曲「暦の上では-」のパフォーマンスも色彩が変わった。関係者は「『ディセンバー』を超えるために改名した部分もある。『ディセンバー』を上回る国民的な曲を作りたい」と、ドラマに付随した同曲の人気が先行したため付いて回る“「あまちゃん」のグループ”のイメージからの脱皮を目指した。

 「2年以内に日本武道館で単独公演できなければ、即解散」の崖っぷちアイドルとして12年に誕生。AKB48が公演する会場の近くでティッシュ配りをしたり、武道館ライブのために署名活動をするなど、泥臭く前に進んできた。伝谷は「今までは壁を与えられて壊していく感じだった。これからは私たちが引っ張るよ、って気持ちです」と、バンドのライブやフェスに足を運び、モッシュに巻き込まれるなど体当たりでロックを勉強中。ロックバンドとの2マンイベントも積極的に行うなど新たな可能性を模索している。

 19日に発売するシングルのCDジャケットは、メンバーの顔を隠したアイドルとしては異色のビジュアルになっている。「歌唱力やライブを売りにするという決意表明」(同関係者)という。

 グループの“看板”を変えるという大きな賭けを経ての前進。「日本一のアイドル」を目指しJAPANの冠を背負ったベビレが、目標の「日本一の歌番組」ことNHK紅白歌合戦にたどり着けるか、見守りたい。

 (デイリースポーツ 古宮正崇)

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