水木さん 家族が「父ちゃん、父ちゃん」
11月30日に多臓器不全で亡くなった漫画家・水木しげるさん(享年93)の死去から一夜明けた12月1日、東京都調布市の水木さんの自宅には妖怪評論家で作家の荒俣宏氏(68)が恩師との別れに駆けつけた。午後3時過ぎには遺体が自宅から運び出され、「父ちゃん、父ちゃん」の声が響いた。
長女・原口尚子さん(52)ら見守られ、午後3時すぎに白いシーツに包まれた遺体が運び出されると、家族らは合掌。妻・武良布枝さん(83)の姿はなかったが、家族らが「父ちゃん、父ちゃん」と呼び掛ける声が通りに響いていた。
布枝さんら家族は1日、尚子さんが社長を務める水木プロダクションの公式サイトでコメント「水木しげるの家族から皆様へ」と題するコメントを発表。
布枝さんは「『お父ちゃんが亡くなる』信じられないことでした。『100歳まではいくようだネ、いや120歳かな』と水木はいつも話していました」と記し、自ら「これからも淡々と歳を重ねていつの間にか100歳を迎える、今後もずっと同じような日々が続いていく、と思っていました」などと思っていたことをつづった。
水木さんは昨年暮れに心筋梗塞で倒れ、2カ月入院。今年2月には車椅子に乗って退院した。しかし「すっかり体力が落ちたのですが、その後持ち前の強さを発揮して少しずつ歩けるようになりました」と、それまでの人生同様、水木さんは不屈の姿勢で再起を目指していた。
「最期は神様が決めることに従ったらええ」という水木さんの口癖を思い出しつつ、布枝さんは「苦しまず自然に最期を迎えられたことは良かったと思います」とつづった。
布枝さんは、30日午後に帰宅した際、水木さんの最期について尋ねられ、「何もありませんでした。アイコンタクトだけ」とだけ答えている。
1日、弔問に訪れた荒俣氏は「いろいろお世話になった。お礼を返す間もなかった。水木さんとはあの世で会えるから、お別れの言葉は言わないままにしました。太陽(のような存在)ですね」と恩師を偲んだ。荒俣氏は妖怪研究において水木さんに師事。95年に故人が設立した「世界妖怪協会」に入会するなど大きな影響を受けたという。