「オタクアイドル」が増加中
「オタク」という言葉が市民権を得て、すでに長い年月がたつ。そんな中、オタクに支えられてきたアイドル業界で顕著なのが、「アイドルオタク」ではなく「オタクアイドル」が増加していることだ。
アイドル戦国時代で“1人勝ち”を収めた感のあるAKB48にも、多くのオタクアイドルが名を連ねる。2014年、第6回選抜総選挙で1位となった渡辺麻友(21)はかつて、現在は声優に転向した仲谷明香(24)らと、アニメオタクの会「オタ4」を結成していた。
姉妹グループにも強烈なオタクは多い。メンバー間の投票で順位をつけるフジテレビ系バラエティー番組「※AKB調べ」の「ガチオタランキング」では、姉妹グループのNMB48から1位に三田麻央(20)が、7位に井尻晏菜(20)がランクイン。三田はアニメからBL(ボーイズラブ)、日本刀、文房具と圧倒的な守備範囲を誇り、井尻は自宅にマンガが4000冊あるという。また井尻は、父親がSKE48・高柳明音(24)のガチオタであることでも話題となった。太田夢莉(16)もアニメオタク&声優志望を明言している。
過去に日本のトップに立ったアイドルで、オタクキャラを全面に押し出した例は、ほとんどないだろう。ではなぜ今、「オタクアイドル」が増加しているのか。その理由として考えられるのが、インターネットの存在だ。
とりわけAKBグループは「ネットの寵児」という表現ができるかもしれない。ネットによって人気が広がり、メンバーや運営もSNSを巧みに利用して情報を拡散している。すでに“絶対女王”の座に上り詰めた感のあるHKT48・指原莉乃(23)は、デビュー前に巨大掲示板「2ちゃんねる」に書き込みをする「2ちゃんねらー」であったことを公言しており、NMB48の岸野里香(21)も「ネットでどう書かれるかは気になってチェックしてます」と話していた。
また、アイドルのスタイルとして「接触型」が主流となったことで、ファンと話題を共有することの必要性も高まった。孫子の言葉に「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」という言葉があるが、ファンの心をつかむには、自らが同じ立場になることは有効だ。
もっとも、その“品定め”をするのは、本物のオタクたち。見せかけだけでは、逆にすぐ見放されてしまう。その中で、すでに認められた存在になった三田は「ファンの方は『三田は仲間だ』って思ってくれてますし、同じオタクとして気質が通じ合うところは多いですね。私にとって『オタク』は、褒め言葉なんです」と話していた。
もちろん48グループだけではなく、群雄割拠が続くアイドル業界には、さまざまなキャラクターが林立している。その中で少しでも抜きんでた存在になるためには、個人個人の工夫は欠かせない。その結果として「オタクアイドル」が増加している一面も、あるのではないだろうか。(デイリースポーツ・福島大輔)